第1話


「この洞窟で私は今から朝から晩まで慰み者にされるのだな……貴様ら人の言葉を喋れるようだが慈悲という物は無いのか!」


 ヨッシーが見事生け捕った女騎士を3人の拠点である洞窟まで連れてきた。女騎士がさっきからテンプレ通りの言葉を吐いている中、3人のゴブリンたちは悩んでいた。


 ミツヒロがクニヒロとヨッシーに投げかける


「で、どうするよ?」


「どうするっていうかここまで連れてきて良かったのか? しかも、他のみんなに黙って」


「さっきは逃がせって言ったのに何で?」


「ヨッシーがルール破ってあの女騎士の前で喋ったからだろうが! あのまま返したら今度は大勢でやって来るぞ!」


「ルールってそんなのあったっけ?」


「ミツヒロ諦めろ、ヨッシーが第一発見者だったのが運の尽きだ。こいつの頭は2ビットくらいしか容量が無いから」


「はぁ……まぁそうか。で、さっきの話だけどこの女騎士どうするよ? 他の奴に黙ってんのは……その……先着者の特権ってあるじゃん?」


「ああ、さっき話してたやつか」


「なに? 話って?」


「ちょうどミツヒロと女騎士のくっころの対応について熱い議論を交わしていた所だったんだよ」


「へ~すごいね。なら俺が女騎士捕まえて来てちょうど良かったじゃん」


「ちょうど良すぎだろ。神龍シェンロンかお前は。こっちは心の準備が全く整ってないんだよ」


「まぁさっきは紳士的に対応しようって話に落ち着いたんだけどさ、実際見たらその……やばいじゃん?」


 三人が女騎士に目を向ける。女騎士は変わらずこっちを睨んでいるがその顔は日本ではまずみられない程美しく整っていて、少し乱れた金色の髪が絶妙な色気を醸し出していた。


「取り敢えず鎧脱がしてみる?」


「そうだな持ち物検査とか必要だし」


「そうだな他に武器持ってたら危ないし」



「……で誰が行く?」


「ここはやっぱ捕まえて来たヨッシーだろ」


「え? 俺? 俺はいいよ」


「なんでだよ遠慮すんなよ。さっきまで普通に縛ったり担いだりしていただろ」


「でも俺、鎧の脱がし方とか知らないし……」


「俺だって知らねーよ。なんかベルトっぽいの解いていきゃいいんじゃねーの?」


「そう言うならくにひろミツヒロがやればいいじゃん」


「俺も……いいよ、暴れられたら怖いし……」


「お前この間ブラッドタイガーひとりで倒していたじゃねーか!! 女一人暴れようが平気だろ」


「ならクニヒロがやれよ」


「俺も……いいよ。俺今日女の子の日だし」


「わけわかんねーボケすんじゃねーよ。例え女の子の日でも鎧脱がすくらいできるだろーが!!」


「ばっ!お前女の子の日舐めんなよ! 女の子の日はなー……あれだ大変なんだよ!!」


「うるせーよ! じゃあ詳しく聞くけど女の子の日ってなんだよ!!」


「うん、女の子の日って何? 知りたい」


「ほら、ピュアボーイヨッシーもこう言っている」


「えーっと……女の子の日はな……女の子の日はえーっと……すいません」


「謝るんなら最初から変な事言うなよー」


「え? 何? 女の子の日って何?」          「おい」


「もうヨッシーもいいよ深く掘り下げなくて」           「おい」


「いやもうマジ勘弁してつかーさい」


「えーっとで俺ら何話してたんだっけ?」


 そこで俺達は気付くべきだったのだ。俺達が連れて来たのが一体どういう存在だったのかという事を。


「おい」


「へ? 何」


 呼ぶ声がして振り返ってみると女騎士が先程とは打って変わって超不機嫌そうに眉間に皺を寄せてこっちを睨んでいる。さっきまでのキリッとした表情が何処かに消え失せていた。


「さっきからおいって呼んでるだろすぐ返事しろよ」


「え? あ、はい」


「お前らさっきから何やってんの?」


「えーっと相談というか……」


「あー相談してたよな! 聞こえてたよ! こんだけ近くで話し合ってんだからな! ……でお前らさっきからなんなん? あそこついてんの? こっちはゴブリンに捕まって相当覚悟してたのに……いつまでたってもウダウダウダウダとマジでなんなん?!」


「はい……さーせん」


「え? 何マジで、お前ら私の鎧脱がすのも恥ずかしいわけ? ゴブリンでしょ? あんたら?」


「えーっとゴブリンと言っても俺ら特別というか……」


「知ってんだよそんなことは!! 特別だってことくらいは!! さっきからずっと喋ってんだもん!しかも女の子の日について語るくらい頭もいいもんなー!! 顔赤くしてんじゃねーよ!! 聞こえてたに決まってんだろが!!」


聞いてらっしゃったんですか、恥ずかしくて死にそうです。クニヒロは恥ずかしさのあまり悶絶しそうになった。


「……ほどけよ」


「はい?」


「縄もうほどけよ。私を襲わないんだったらいいだろうがよ」


「いやーでも困るっていうか……暴れたり逃げたりされるとこっちも都合が……」


「はやく!!」


「はい!!」


「ちょっ!クニヒロ何ほどいてんだよ!!」


「もういいよ。これ以上俺の心がえぐられる前に帰ってもらおうぜ」


「うわー不機嫌な時の俺の姉ちゃんみたい。偶にあんな感じなんだよね」


ヨッシーよそれが多分女の子の日だ。



「お前ら取り敢えず座れ」


「え? なんで?」


「座れ!!」


「サーセン」


クニヒロはさっきから段々とシェパード並みに女騎士に従順になってきている。


「食べ物ある? あと水と出来れば水浴びる場所」


「はい、あります、はい」


「じゃあ私しばらくここにいるから」


「「「は?」」」


「は? じゃねーよ取り敢えずなにか食べ物持って来なさいよ」


「え? まじ? 決定?」


「はやく!!」


「さっせん」


ああ麗しき女騎士。こうしてゴブリンたちは女性というモンスターの恐ろしさを身をもって学んでいくことになるのだった。

 

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