吸血姫の従者、激しい痛みに耐えて珍冒険中!

三叉霧流

1痛目 散々な人生を晴らす話だな!

ああ、もう散々だ。

俺こと(名字はさる大企業家の名字なので割合)雄夜の二十九年間とは一体何だったんだろう?

十歳年下の可愛い彼女にボロぞうきんのように捨てられ、仕事はボロぞうきんのように働く営業をコツコツとしてきたのに会社は倒産し無職。人生のどん底にあって死でもいいとさえ思った。友達もほとんどおらず、一人で死ぬまで酒を飲んで泥酔して死んだように眠った。

二日酔いで死ぬような頭痛が俺を苛み、ずっと部屋で息苦しくテレビを見ていたら、無性に腹が立ってきて俺は車に乗り込んだ。

どこか車をかっ飛ばして、憂さ晴らししようと夜の高速を法定速度超過で走る。


ま、そんな気分だ。

注意力も途端になくなるって訳だ。

暗い高速のライトが睡魔を誘ってくるのも仕方がない。


意識が途切れ途切れになって、走っていると見るわけ。

衝突寸前のガードレールが。

俺は慌ててブレーキを掛けようと足を突き出した。


うん。行ったわけ。

加速してガードレールに。

加速しすぎてガードレールを突き破って、お空へのダイブとなった。


こういう話だ。本当に車をかっ飛ばしたっていう男の話。

憂さを晴らしすぎて、人生までも晴らす話。

笑えるだろう?いや笑って貰えないと困るんだよ。

なんたってそうして貰わないと俺が笑えないじゃないかよ。笑うことしかないってもんだよ。俺の人生。

早い話がこんな人生なんて散々だってことだ。


崖下の地面に真っ逆さま。

シートベルトを付けて安全ってのは嘘だなありゃ。

せめて最後の瞬間ぐらいは自由なポーズで死にたかった。

傑作で散々な俺の人生。最後のポーズは正座しながら念仏でも自分で唱えてないと俺が浮かばれないってもんだ。


散々な人生の幕切れって奴だ。

ん?悔いはないかって?

馬鹿野郎。んなもんあるに決まってるじゃねぇか。

アプリゲームのイベントでガチャ回し放題と期待していた劇場アニメの公開。

ってこれだけかよ。俺の人生の悔いって。そりゃないぜ。

そう嘆いた瞬間にもの凄い衝撃と俺の顔面が陥没する音、頸椎が折れる音、全身が気持ち悪い音を出して潰れるのを聞いて、俺の意識がなくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る