第9話

 くそっ! と毒づいて丘野の腹を蹴ったその刹那に、図書館に風紀委員が流れ込んできた。


 図書館での騒ぎを聞きつけての結果だ。


 面倒だ。至極、面倒だ。


 この場を脱するにはこいつ全員を倒さないといけないのか。


 どうしてこの場を脱しなければならないのか? いや、まあいい。考えるのは面倒だ。とにかく、ここを脱して次のターゲットを潰しに行こう。


「どうしてこちらに刃を向けているのかな、戌井君」


 風紀委員の群れの中から一人の少女が出てくる。……九条先輩だ。


「敵と味方の区別もつかないくらいおかしくなったの? まったく薬物というのは恐ろしいね」


「みかた?」


「そうだよ。いくら苦しいから、辛いからって、考えることを放棄してはいけない。よく考えなさい。それとも思考する能力すらも欠落してしまったか。思考は人間が人間であることの証明となる能力だ。考えられなくなったら、その瞬間、君は人間ではなくなる」


 言われて、俺は構えを崩す。


「それでいい。君も獣にはなりたくないだろ」


「俺をどうするつもりだ?」


「とりあえず、一緒に来て。形式的にだけど事情聴取するから。話もあるし」


 そんなわけで、俺と天之原、そして倒れている丘野と船沢は図書室を出る。

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