第2話

 さて。


 俺はブタ箱行き免除と引き換えに、《デウス》の密売人の元締めである岩浦五十海と、そのほかの《デウス》の密売人を潰さないといけなくなった。風紀委員が心血を注いで作ったリストには密売人の名前があり、そのリストにある人たちを潰していけばよいらしい。


 とはいえ、このリストは結構厚く、ページにすれば百ページある。一ページに一人の密売人が載っているので、つまるところ俺は百人と戦って勝たないといけないわけだ。


 一つ、言っておくが、俺の体調は万全とは言えない。


 俺だって《デウス》の使用者だった。しかし、それがばれてこんな目に遭っている。そして、ばれた今、俺は《デウス》を吸えない。《デウス》の依存症が俺を苦しめ、常時、俺は身体が怠い。気味の悪い幻覚を見て、自分を他人を、物を傷つけ、やはり俺は苦しい。


 隙あらば《デウス》が吸いたかった。


 しかし、生徒会長はそんなことさせてくれなかった。


 俺の隣には天之原奈月がいる。別にカップルなわけでない。彼女は俺の監視役、お目付け役なのだ。彼女は生徒会長の眼。彼女の前では俺は《デウス》の一本も吸うことができない。


「これからどこへいくつもりなの、戌井くん?」と俺の隣を歩く天之原が言う。


「とりあえず、このリスト順に潰していく」


「一ページ目は岩浦五十海だけど? どうするの」


「二ページ目から始めるんだよ。普通に考えてわかるだろ」


 岩浦五十海は行方知らずだ。部屋にもいないし、電話にも出ない。だから、密売人を潰しながら五十海の情報を集めるしかない。


「二ページ目は誰?」


「これ」と俺はリストを天之原に渡す。


雀部ささべ安佐子あさこ……女の人だね」


「そうだな」


 だから、何なんだよ。


「で、どうやってこの人を見つけるの?」


「お前はバカなのか?」


「あなたは、どう思う?」


「バカだと思う」


「なにそれひどい」


 そう言って彼女は頬を膨らませるけど、


「いや、バカだろ」


 俺はお前がバカだと思う。


「簡単な話だろ。雀部に会いたければ、雀部の顧客を見張っていればいいだろ。顧客は《デウス》欲しさに必ず雀部と接触する」


「さすが経験者」


「うるさい」


 というわけで、雀部安佐子の顧客を見つけに行くことにする。


 にしたって、最弱の天之原がついてくるわけだけど……足手まといにならなければいいんだけどな。

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