第2話 黄色い太陽

「お~い!大丈夫かぁ?」

 どこか遠くで声が聞こえる。

「お~い!」

 遠くじゃない。すごく近くで声がする。まだ、寝ていたかったが、俺はゆっくりと目を開いた。

 俺の目の前にはハゲたおっさんの顔があった。正確にはバーコードのように往生際の悪い髪が、いくらかは残っている。

 起き抜けからいやなもん見ちまった。……ここはどこだ?起き上がると、そこはごみ置き場だった。

 立ち上がろうとすると体中が痛んだ。頭痛も激しい。最悪の朝だ。俺は体中に鞭を入れてゆっくりと立ち上がった。

「いや~、死んでたらどうしようと思ったよ。おじさんがごみを捨てにきたら……」

 俺に向かって一人でしゃべっているおっさんに

「うるせぇ!」

 と一喝し、辺りを見渡す。

 どこにでもある住宅街のごみ置き場だ。何で俺はこんな所に寝ているんだ?夏じゃなかったら死んでるな。

 昨日のことを思い出そうとしている俺の側には、まださっきのおっさんが立っている。

 驚いた顔をしたまま固まっていた。親切心で声を掛けたのに、怒鳴られたから当然かもしれない。しかし、そんなこと俺には関係ない。とりあえず邪魔だから消えてもらおう。

 俺がおっさんを睨みつけると、おっさんはブツブツと文句を言いながら去っていった。

 俺はそのまま、たっぷり五分は昨日の出来事を思い出していた。女とホテルへ行き、部屋を入った時点で新作のドラッグが効いてきて……。その後は頭の中にもやがかかったように思い出すことができなかった。あの女はどうしたんだろう?

 とりあえず俺はホテルを出てここで力尽きたんだろうと結論を出した。頭痛が激しいのであまり考え込みたくない。

 最悪の気分だが、空は晴れ渡っていた。太陽が真っ黄色だ。財布を確認すると金は減っていない。あの女やハゲたおっさんには金を抜かれたりはしていないらしい。ここがどこだかも分からないが、タクシーに乗れればなんとかなるだろう。

 俺は鉛のように重い体を引きずり、やっとの思いで大通りに出た。そして、タクシーを捕まえると、家まで泥のように寝入ってしまった。

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