EPISODE.V-II 魂魄の境界
パチパチ、パチパチと耳元で何かが勢いよく燃えている音がする。
いっつー……何だ、一体何が起きやがった……?
鈍い痛が走る頭を何とか上げて俺は周囲を見渡す。目の前にはバイクの残骸が転がり、そこから漏れて出たガソリンに火がつき周囲は火の海となっていた。
あっつー……まじか……やべーな、ちくしょー。
燃え盛る炎から逃れようと何とか体を動かそうとするがうまく動かすことができない。
一体何が起きた? 体が鉛のように重い。
ぐぅっ、まじで、何がどーなっていやがる……。
うつ伏せで倒れたまま、何とか地面を這って移動しようと試みる。
右腕を上げて……前方の地面をつかんで……??
――えっ……!?
なんだよ……なんだよ、これは!
瞳に映る己の右腕。
その肘から先が……――――無い。
うがあああああぁぁぁ!
突然の激痛が右腕に走り、肘の先から鮮血がだくだくと流れ出す。
ちくしょー、俺の、俺の右腕が……っ!
他の四肢を動かそうとするが感覚が全くない。
恐る恐る視線を落として左腕を確認するが肘部から白骨が飛び出しているのが見えた。
ははは、ははははは……
なんだよ、これ……
下半身は確認することができないがおそらく見るも無残な状態となっているのだろう。
あー、こりゃーなんだー、悪い夢か……?
目を逸らしたくなるような信じられない地獄。しかし、この身を焼く炎の熱さと血を流し続ける右腕の鋭い痛みが、これが紛れもない現実であることを俺に訴え続けていた。
くそ……とりあえず……このままじゃ、まじで、やべー……ぞー……
油断すると直ぐに意識がブラックアウトしそうになりやがる。皮膚を焼く炎はすげー熱いのに……体の芯はぶるっちまうほど糞寒い……今まで感じたことのねー不思議な感覚だ……ああ、なるほどねー、これが『死』ってやつかい?
ははは、ははははは……おい、おい、ふっざけんな!
俺はグッと歯を食いしばる……もうそれくらいのことしかできねーから、これでもかと全力を込めて。
そう、今できることをする……
グッと歯を食いしばり続ける……
自分が焼け焦げていく臭いが鼻につく……
あー、糞気持ち悪りー、まじで最悪だ。
それでも、俺はな……
生きることを、絶対に諦めたり……
しねーんだ、よ……
――そうして俺はそのまま深い眠りへと堕ちていった。
―― EPISODE.V-II END ――
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