38.
「たーだいまーっと」
帰りにスーパーに寄って夕飯の食材を買いこんだあと、そのまま上履きを探していたら家に帰り着く頃には日が暮れていた
お父さんとは私が生まれて間もない頃に離婚してしまったらしい
あまりにも小さいときだったのでお父さんについての記憶はほとんどない
その分お母さんにはものすごく感謝している
女手一つでここまで育ててくれて今まで不満を感じたことは一切なかった
もちろん寂しく思うことは何度もあったけどそれは私が我慢しないといけないところである
だってお母さんは私を養ってくれるために一生懸命に働いているんだから
そんなお母さんには私のことで心配をかけさせたくない
それは中学生の私でもできる唯一の親孝行だから
「っにしても、この文字なかなか取れてくれないなぁ」
『痴漢女』と書かれたこの上履きはもう使うことはないだろう
そのために新しい上履きを買ってきたんだし元から捨てる気でいる
だけど捨てる時にこの文字がお母さんに知られては困るのだ
完全に消すことはできなくても少しぐらい文字を薄くできないものかと洗剤で洗ってみたが全く効果はなかった
結局その上履きを捨てることは後にして、とりあえず部屋に隠しておくことにした
上履きを洗い始めてだいぶ時間も経ってしまったしそろそろ夕飯の準備をしなくてはお母さんの帰宅に間に合わない
心の中にあるモヤモヤを一度振り払って料理へと集中する
料理は愛情を入れることによって美味しくなる
あまり信じずに噂程度にしか広まっていないが私はそれは当たっていると思う
相手のことを想いながら作る料理
美味しいって言って欲しい、また食べたいと言って欲しい
そう思いながら丁寧に作るからこそ料理はおいしくなる
料理はお腹だけでなく心までも満たしてくれる最強のものだと私の中では思っている
だから私は中途半端な心で料理をしたくないのだ
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