口を開けば芥ばかり。

吐いて捨てるほどのことばに何の意味があるのだろうか? きみとわたしが生成することばたちはもはや意味など持たない。ただそこに存在するアトモスフィアを維持するための何かとして、生み出されているのだろう。できるだけ一緒にいたいと言って、互いの持ち時間をただ殺しているようである。昨日の映画はつまらなかったとか、来週どこ行こうとか言って、今を消費しているのである。一方的に話すきみはなんだか楽しそうだけれど、わたしは。


窓の外の天気を気にしている。これが本当のうわのそらなのかもしれない。

「ねえ、聞いてる?」

そうこうしているうちに、手元の珈琲は冷めてしまった。時間は変化をもたらし続けるようだ。



口を開けば芥ばかり。

私は隣のテーブル席を見て、そう思った。

「マスター、またくるね。」


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