第7話 学校へいこう
元気になってから3週間、ルシィも学校に行くことになった。
年越しウィークも終わって学校は始まったんだけど、冬の寒い日が続いたから、お母さんは
「もう少し様子を見たいわ」
と言っていた。
でも毎日外に遊びにいけるくらい元気になったから、まっいいか、という感じ。
ついでに言うと、今日、金曜日に学校の編入手続きが終わったんだって。
「ルシィ、この前から言ってた学校なんだけど、来週の月曜から行けることになったわ」
「ホント!?」
「ほんとうよ、よかったわね」
「うん! やったあ!」
夕食の支度をしている所に、お母さんが笑顔で教えてくれた。
テーブルに手をついて、ぴょんぴょんって跳ねるルシィ。
ガタガタと音を立てたから、テーブルに置いていた調味料の瓶が倒れちゃった。
「ルシィ、お行儀悪いわよ」
「はあい、ごめんなさい」
怒られて、首をすくめているんだけど、なんか嬉しそうだ。
「明日は学校に行くための服を買いに行きましょう」
「うん!」
「明後日はお弁当箱と筆箱とか文房具を買いにいくわ」
「学校のお昼はお弁当なの?」
「そうよ」
「じゃああたしも作るの手伝う!」
「あら、ルシィは本当にいい子ね」
「えへへ……」
お母さんに頬を撫でられて、くすぐったそうに喜ぶ。
最近の様子を見ていると、それまで体が弱くてふさぎがちだったから、あまり自分を出せなかったんだな、って思う。
元気になった途端に、8才の女の子らしい明るい表情が見えるようになってきた。
その日の夕方、学校から帰ってきたお兄ちゃんも喜んだ。
「じゃあ月曜日からいっしょに学校だ」
「目を離さないようにね。この子、元気になった途端になんだか危なっかしいから」
「うん!」
「えー。そんなことないよう!」
演技っぽく頬を膨らませるルシィと笑顔が弾ける母子。
なんかいいなあ。こういうの。
その日の夜も、毛布をかぶってこしょこしょとナイショ話。
お兄ちゃんは上のベッドで早くも寝息を立てている。
「ねえ、あたしはどんな服が似合うかな?」
『ルシィはなんでも似合いそうだけど』
「えへへ」
『友だち、いっぱいできるといいね』
「うん……!」
小さな手に、包まれる鉛筆な俺。
夜のナイショ話はルシィが元気になっても変わらない、いつものこと。
「あ、でもでも」
『ん?』
「あたしの最初で一番のお友達はえんぴつさんだよ」
『あ、それ嬉しいなあ』
「えへへ。えんぴつさんが来てから、あたしすっごく楽しいの。すっごく幸せ」
『そりゃあ良かったよ。でも、友だちの前で俺と話すわけには、いかないね』
「そうなんだよねえ。えんぴつさんはひとりぼっちで可哀想」
『そんなことないさ。俺はルシィのそばにいるだけで幸せだよ』
「ほんと? よかったあ」
『友だちの前では俺のことは気にしなくていいからね』
「……うん」
ルシィの願い事を叶えられる能力を持っている俺なんだけど、ルシィにとってはいつでも話し相手になってくれる俺、という存在の方が大事みたい。
まあ、俺にとってもこの世界で唯一話し相手になってくれるルシィの存在はとてもありがたい。
「すぅすぅ……」
いつの間にか眠りについた天使のような寝顔に、俺の心もなんだか安らぐ。
おやすみ、ルシィ。
学校はきっと楽しいところだよ。
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