桜花復活!!

「あ~っ!やぁっと臭せぇ匂いが取れたぜ!!」

 不快指数MAXにより、人害的な悪臭を身に纏っていた桜花だが、その身体に染み付いた臭いが漸く取れた。

 意気揚々と学校に向かう桜花に、男子生徒が群がり、休校中のノートを差し出したり、心配していた素振りをしたり、復帰祝いだとか言ってプレゼントを渡したりしている。

「ありがとう。もう大丈夫だから」

 ニコッと微笑む桜花。その天使の如くの微笑みに男子生徒が次々とられ、バタバタと倒れていく。

「桜花!治ったの!?べ、別に心配していなかったんだけどっ!!」

 紅葉が桜花を発見して駆け寄って来た。

「紅葉、久しぶり」

 桜花は紅葉の手をそっと握り、そのまま手を繋いで校内に入った。

 桜花と紅葉の仲良さげな光景を見て、やはり男子生徒は屍の如くバタバタと倒れて行ったのであった。


 そのまま屋上までやって来た桜花と紅葉。桜花の復帰を温かく迎える仲間達。

「おかえりなさい…ブツブツ…休めて良かったね…ブツブツ…私達は頑張っていたけど…ブツブツ…」

「何か責められてる気がするなぁ…」

 頭を掻く桜花。

「とは言っても敵は来なかったのら」

「じゃ、お前等も休んだだろうが!!」

 思わず突っ込む桜花。

「しかし私も脚の生傷が耐えないですの」

「お前はいっつもすっ転んでるからだろうがよっ!!」

 そう言って脚を見せる白雪にハードに突っ込む桜花。

「桜花が居なくても平和でしたわ。オーッホッホッ」

「お前の八方美人を咎めるする奴が居ねーからお前が平和だったんだろうが!!」

 益々声を荒げる桜花。

「まぁ、実際は何も無かったから安心しろよ?」

「知ってるっつーの!!ツチノコ経由で把握してるっつーのっ!!」

 最早叫び過ぎで喉が乾いた桜花は、紅葉が持っていたお茶のペットボトルを奪い、それを飲んだ。


 ズガガガガガン!!

 そんな時、校庭から爆発音が聞こえた。校庭を見る桜花達。

「あれは…坊主か?」

「スイギンですの!!行くですのみんな!!きゃん!!」

 駆け出した白雪はやはりすっ転ぶ。

「お前は転ぶから走るなっつーの!!」

 桜花は梅雨に白雪に肩を貸すよう指示をした。

「やっぱリーダーだぜ桜花!!ゲラゲラゲラゲラゲラ!!」

「白雪に肩を貸す役目が誰か解っているのら~」

「…ブツブツ…桜花じゃないと纏まらないから…ブツブツ…私じゃ無理…ブツブツ…どうせ私なんか死ねばいいんだし…ブツブツ…」

「ゴチャゴチャうるせーぞお前等!!行くぜ、変身だあ!!」

 桜花の号令で仲間達はラフレシアンに変身した!!


「ラフレシアン達はまだかのう。某は暇で暇で」

 暇に任せて機害獣オゾンに破壊酸素を撒き散らせるスイギン。たちまち校庭の桜並木が枯れ果てる。

「待てや坊主コラァ!!」

 桜花の声を聞き、スイギンはニヤリと笑った。

「現れよったなラフレシアン」

「坊主コラ!!そういやテメェとはあんまやり合ってねーなクズ!!」

 雷太夫をトランスフォームさせてガン!!と睨み付ける桜花 

 やる気満々だ。一週間も自宅警備員をやっていたのだ。体もなまる。いいリハビリになりそうだった。

「そちらの白いラフレシアンとは、かなり戦っておるかな。シーペスト様を退けたピンクのお主が一番気に掛かる!!」

 スイギンは機害獣オゾンのノズルアームを振り回し、ラフレシアン達を分散させた。

「チェリーブロッサムとホワイトスノーブリザードと分散させられたのら!!」

「機害獣に私とグレートバリアリーフとレッドリーブス、フルムーンナイトですか…」

「コッチの方が人数多いとか思ってニタニタすんじゃねーよ…」

「…ブツブツ…チェリーブロッサム達が死んじゃう前に合流しなきゃ…ブツブツ…夢見が悪くなっちゃうわ…ブツブツ…」

 分散されたラフレシアン達は、各々目の前の敵と対峙する。

「ピンクのラフレシアン…爆弾を抱えたまま、某と戦うのは辛かろうて!!」

 早くも勝利を確信したスイギンは怪しく笑う。

「なめんなよハゲ!!」

 桜花は硬鞭を構える。そして微かに白雪の方にも意識を張り巡らせていた。危ないからだ。

「爆弾?何を訳の解らない事をほざいているですの?」

 白雪は変身携帯をスイギンの前に掲げた。

(こいつ…自覚ねーのが一番キツいんだよなー…)

 桜花は激しくそう思いながらも、口に出す事はしなかった。桜花は意外と仲間に気を遣うのだ。

「フハハハハ…自覚が無いのがお主の良い所でもあるがな」

 スイギンの言葉に激しく同調し、ウンウン頷く桜花。自分が言えなかった事を言ってくれるとは有り難い。

「訳の解らないのはもう結構ですの!!喰らいなさい!!私達の新しい力を!!」

 白雪は変身携帯のボタンを01Ver2と押した!!

「それ、ツチノコが言ってた新しい力か?」

 テンションが上がる桜花。新しい力に興味津々だ。

 あのシーペストを退けた、不快指数MAXに匹敵する力だとか何とか…期待しない方が無理だった。

 その力をこんな間近で見れるとは、なかなかラッキーじゃんとか思っていた。

「新しく授かったとか言う技か!!」

 スイギンは少し下がり、身構える。

「アモルフォファラス ティタムう!!」

 キラキラと眩い光が天から白雪に降り注ぐ!

 そして白雪の背中から全長三メートル位の、雌しべが凄い長い、スイセンみたいな花が咲いた。スイセンとは違い、花びらの色がオレンジで黒い斑点がある。

「な、何何何!?何事!?」

 自分で発動した技にビビる白雪。

「な、何だこの花……?うげえ!!クセェ!!超クセェ!!」

「こ、これが新しい力!?ぐえええ!!は、吐きそうな臭いではないか!!」

 桜花とスイギンは悶絶し、地面に転げ回った!!

 トランスフォームを解き、雷太夫がゼェゼェ言いながら説明をした。

「あ、あれはスマトラオオコンニャク…成長すると3mの高さになる食虫植物だ…3、4年に一度しか咲かない花で、死臭に似ている、別名が『死体花』…臭さのピークは開花8時間後だぁ!!その後も生卵や肉が腐った臭いがすると言う、凄まじい臭いの花だ!!」

 死体…学術名はラテン語で『アモルフォファラス ティタム』。咲いている期間は僅か三日間だ。

 つまりは…

「三日間は匂いが取れないって事かよ!?」

 青ざめる桜花。どうしてそう言う結論になったのかは解らない。本能で知ったのだろう。

「不快指数MAXは一週間だから、新しい力は、まだマシと言える…クタッ」

 雷太夫はあまりの臭さに気絶した!!

「三日間!?イヤアアアアアアアアアアアアアア!!」

 白雪は絶望したように首を振る。その動作で当然匂いが撒き散らされる。

「くわあああ!!た、たまらん!!一時撤退じゃ!!!」

 スイギンはあまりの臭さにテレポートで逃げ出した。

――オゾンソウハカイィィィ~……

 新しい力『アモルフォファラス ティタム』の悪臭によって、機害獣オゾンはぶっ壊れた。

「な、何この臭い…ブツブツ…死ねと言うのね…ブツブツ…」

「ほ、ホワイトスノーブリザードの背中から、自分の背丈より大きな花が咲いているのら!!」

 紅葉が指を差し、それに釣られてみんな白雪を見る。

「あ、あの花から、この匂いが出ているようですわ!!」

「もしかして、あれが新しい力かよ!?」

 一斉にビビるラフレシアン達!!

 遠くで桜花が早く引っ込めろ!!とか、匂いが移るうぅぅ!!とか喚いているのが聞こえてくる。

「私…あちら側に分けられなくて、本当によかったですわ…」

 自分が一番可愛いと豪語し、直ぐに裏切る梅雨だが、その言葉には、みんな同意し頷いた。

 

 その日、桜花と白雪は学校を早退した。

 アモルフォファラス ティタムの匂いが身体に移ったのだ。そのままで授業を受けられる筈が無い。自分達はいい匂いしかしない美少女なのだ。悪臭を纏って授業に出ることなどあり得ない。

「桜花と白雪は三日は学校に来れないらしいのら」

「不快指数MAXの時よりはダメージが少ないですけど…」

 溜め息が出る。

 ラフレシア女王は、あれを自分達にもやれと言うのだ。

「まぁ、今までの敵なら、アモルフォファラス ティタムを使わなくても何とかなるけどな…」

「…ブツブツ…シーペストクラスの敵なら…ブツブツ…使わないと死んじゃうわ…ブツブツ…そうか、死ねばいいのね…ブツブツ…」

 パワーアップの代償が、あの悪臭とは…ラフレシアンを辞めたくなってきた。

 しかしラフレシアンを辞める訳にはいかない。

 死に場所を求める珊瑚、壊したい紅葉、何か便利そうだから、なんとなくの梅雨、憂さ晴らしの月夜。

 ラフレシアンを辞めると言う事は、これらのお楽しみ(?)を失う事になるからだ。


 一方、城に逃げ帰ったスイギンは、ヘドロ達から厳重に別室へ隔離されていた。

「すまんが…石鹸を取ってくれぬか…」

 別室のシャワー室を別荘と化しているスイギン。

 扉向こうで仲間達が喚いている。

「出てくるなよ!!匂いが漏れる!!」

「石鹸は置いて置くから、我々が部屋から離れてから取るようにしろよなっ!!」

「消臭剤も置いておくからねぇん」

 誰も心配などしていない。

 スイギンは仲間としての扱いは受けていない。悪臭を撒き散らす、迷惑な存在になっていたのだ。

 半泣きしながら扉を叩き、ヘドロ達が居ないのを確認してから扉を開けて石鹸と消臭剤を素早く取り、これまた素早く扉を閉じるスイギン。

「やってくれたなラフレシアン ホワイトスノーブリザード…!!周りに迷惑かける存在でありながら、某にも迷惑をかけるとは…次は殺してやるわ!!」

 スイギンは半泣きから本泣きになりながら、シャワーを死ぬ程浴びた。


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