ラフレシア女王現る!!
不快指数MAXにより、臭いが取れなく、一週間学校を休んでいる桜花。
雷太夫もその間常に桜花にくっ付いているのだが、今日は違った。
「桜花~。今日私は学校に行くからな。何か珊瑚達に伝言は無いか?」
「あ~…ヤンマガ差し入れしてくれって言っといて……って、何で学校に?」
単体で動く事など殆ど無い従者の雷太夫が、よりによって学校に行くと言うのだ。驚くなと言う方が無理だろう。
「屋上にラフレシア女王が来られるのだ。我々従者に何かお話があるらしい」
雷太夫はウキウキしながら桜花の部屋から出ていった。
桜花はソッコーで珊瑚にメールをする。
【何か今日屋上にラフレシア女王が来るみたいじゃねぇか?写メ撮っといてくれ】
暫くして珊瑚から返事が来た。
【了解】
メールくらい明るくしろよ…と、桜花は激しく思った。
屋上には、全ての従者と桜花を除くのラフレシアンが集まっていた。
「やれやれ…桜花が居ないから、階段を上るのも一苦労だなぁ…」
雷太夫がボヤいた。いつもは桜花のカバンの底に潜んでいるから移動が楽なのだ。窮屈で乱暴だけど。
そんな雷太夫に棘紅郎が尋ねる。
「桜花の臭いはどうなった?」
従者達は不快指数MAXの威力を垣間見たが、あの殺人臭は知らなかった。
不快指数MAXは従者達にすら予測外の出来事だったのだ。
「1日に15回もお風呂に入っているが…多少臭いが薄れた程度だな」
「あれ?一週間で取れると聞いているのら?」
紅葉の問いに応える雷太夫。
「ラフレシア女王がそのくらいの期間と仰ったのだ。おそらく、急に来られる事になったのも、不快指数MAXのお話だと思うが…」
「でも、ラフレシアン全てを召集したのは何故なのら?」
「日頃頑張っている私達に労いの言葉でも掛ける為ですの」
「もしそうなら面倒だから来なかったけどなぁ…」
月夜の言葉に同意するラフレシアン達。
従者達はともかく、月夜達は別にラフレシア女王などに興味が無い。
今日の召集も、できればスルーしたかったのだ!!
「ん?……なんか臭いのら…」
鼻をヒクヒクさせる紅葉だが、従者達は歓喜した。
「おお!!女王だ!!ラフレシア女王がおいでになられる!!」
棒忍愚が天を見つめて歓喜する。
「懐かしい…お顔を拝見できなくて久しいからぁ…」
棘紅郎が涙する。
「ああ!!もう少しでお姿が露わになるのだな!!」
縁是留は待ちきれなくて騒がしくなる。
そして…遂に従者達は臭いの発生元である屋上の隅に集まり、うやうやしく平伏した!!
「ツチノコとヒトデとカラスとカエルとカタツムリとタランチュラが平伏している姿は不気味ですの」
「…ブツブツ…女王様って私達より臭いのかな…ブツブツ…もし、そうなら私より生きてる価値がない人が増えるわ…ブツブツ…」
「ってか女王って人間なのか?蟲共が敬っている女王が?」
従者達とは対象的に、全く敬意の念が無い珊瑚達。
その時!従者達が平伏している先に眩い光が天から降り注いだ!
「おお……ラフレシア女王……お久しぶりでございます…」
従者達を代表して雷太夫が現れたラフレシア女王の前に出た。
その姿、紅白の小林○子の如く派手な花柄のドレス…衣装だけでも4tトラックはあろう大きさで虹色に輝いている。
顔は霞がかかっているようにぼやけているが、切れ長の睫の長い瞳が確認できた。
背中からは蔦が生えていて、ドレスの模様と間違いそうだ。
そして、やはり女王も頭部にバカデカい花を咲かせていた。
その大きさ、ラフレシアンの花のおよそ5倍!つまり!!
「…ブツブツ…臭い…ブツブツ…この匂いを嗅いで死ねと言う訳ね…ブツブツ…」
「ハンパなく酷い臭いなのら!!」
「私達の頭の花には子バエだけど、あのオバサンにはアブがたかってるですの!!」
「あの蔦…躓いてコケそうなくらい邪魔ですわ!!」
「女王と言うだけあって、全てラフレシアンを凌駕してるな。臭いは特に…ウェッ」
ラフレシア女王は、ラフレシアン達、と言うか人類には全くの不評の女王様だった!!なぜなら物凄い臭いのだから!!
借りにも女王にそんな無礼な事を思っているが、当の本人は従者に労いの言葉を掛ける。
【久しぶりですね雷太夫…棘紅郎も黒乃守も、縁是留、棒忍愚…ご苦労様です…】
柔らかい物腰で従者達に微笑むラフレシア女王は凄く優しそうだったが、ラフレシア女王が動く度に酷すぎる臭いが頭部から漏れ出る。
「動くななのら!!吐きそうになるのら!!」
ラフレシア女王を遠巻きにしながらも、漂ってくる臭いに当てられて気分が悪くなる紅葉達。
【…地球のラフレシアン達よ…私の願いを聞き入れてくれて、感謝の言葉もありません…】
ラフレシア女王は珊瑚達に向かってお辞儀をした。
「解ったから頭下げるな!!臭いがこっちまで来るじゃねぇかボケェ!!ゲェッ」
月夜達はラフレシア女王から更に5歩ほど下がった。
【そんなに敬わずとも…遠慮なく傍に来てくれても構いませんよ?】
ラフレシア女王は、遠巻きにしている瑚達は自分を敬い、恐れ多い存在だと勘違いしたと思い、フレンドリーさをアピールした。
「いやいやいやいやいやいや!!ここで結構ですわ!!」
梅雨は高速で両手を振り、これ以上近寄ってくる事を拒絶した。
「…ブツブツ…早く用件を…ブツブツ…そして早く帰って…ブツブツ…」
珊瑚はもう早く終わらせて帰りたかったので、先を急かした。このままでは命に係ると判断したからだ。自分が死にたがりなのを忘れる程に酷い匂いだったのだ。
【私がここに来たのは2つ…先ずはチェリーブロッサムが発したラフレシアンの奥義、不快指数MAXの事です】
いきなり真面目になって語ったラフレシア女王。
不快指数MAX……
それはラフレシアンが発する超強力な臭気で、外敵から身を守る技である。
ラフレシアンの不快感が最高潮に達した時、頭部に咲いているラフレシアに連動、凄まじい臭いを撒き散らし、敵を退ける。
目に入ったら失明する可能性もあり、最悪絶命までしてしまうという、正に究極奥義である。
そしてその奥義は両刃の剣……
奥義を発動させたラフレシアンの臭いは一週間は纏わりついて離れない。
一年間臭いに纏わり付かれた記録すらある。
【…それほど危険な奥義なのです…ですから使用は控えてください】
ラフレシア女王はラフレシアン達の身を案じての発言をしたのだが、誰もあんな 殺人臭を発したくないので、いらんお世話だと思っていた。
そもそも自分が発動できるとも思えない。
【しかしこれからの戦い…何らかのパワーアップを施さなければ、厳しい状況です】
カンキョハカーイナンバー2のシーペストの力は自分達がまとめて向かって行っても及ばなかった。
これから先の戦いに不安を感じる要素を生み出したのだ。
【地球のラフレシアン達よ…アナタ達に新たな力を授けましょう……】
ラフレシア女王の両手のひらが光り出す。
これは…パワーアップアイテムを貰えるフラグだ!!変身ヒロインもので中盤によく見るアレだ!!当然ながら紅葉達は興奮し、期待する。
「きっと美少女ヒロインマンガみたいに楽器をモチーフにした武器ですの!!」
「ブレスレットとかもありうるのら!!」
そして光が晴れる。
【終わりました】
「え?もう?…ブツブツ…いえ、私の目が節穴だから凄い事が起こった事に気が付かなかっただけよ…ブツブツ…こんな目はビー玉にも劣るしね…ブツブツ…」
「一応チェックしてみるのら。もしかしたら指輪とかイヤリングとか小さい物かもしれないのら」
紅葉達は身に付けている物をチェックした。しかし、それらしい物が見つからない。
「何も変わらないのら!!何もないのら!!とんだペテンにかけられたのら!!」
「ガッカリですね!!何がパワーアップですか!!」
期待を裏切られてプンスカ怒る紅葉達。だが、月夜だけは違った。チェックしていない物があったじゃないか、と。
「……ひょっとして変身携帯か?アプリが増えたみたいな?」
ラフレシア女王は優しく笑いながらゆっくりと頷いた。
【変身携帯のボタンを01ver2と押して『アモルフォファラス ティタム』と唱えれば、ラフレシアンの新しい装備が現れます】
瞳をキラッキラッされてかなりの期待感を露わにする紅葉達。
「試したいのら!」
【この次にカンキョハカーイが現れたら試してください】
まぁ、そりゃそうだ。敵に有効なのかが重要なのだから。
「…ブツブツ…桜花の変身携帯は…ブツブツ…パワーアップしているの?」
【もちろん、チェリーブロッサムの変身携帯にも新しい装備をダウンロードしていますよ】
つまり変身携帯に新しい装備をダウンロードすれば使用可能となるのだ。
だったらわざわざ来なくても勝手に新しい装備をダウンロードしてくれれば良かったのに…とか思いながらも口にはしない珊瑚。いちいち波風を立てる必要が無いのだ。
「じゃあもう用事は済んだか?」
【ええ。お手数をおかけしまし…】
最後の挨拶を最後まで聞く事もなく、月夜達は屋上から出て行った。
「あ!月夜!!全くあいつは…」
偉大なるラフレシア女王の話を途中で切り上げ、出て行くとは…
棒忍愚は落胆して肩を落とす。
【よい……ラフレシアン達は私の兵士ではなく、単なる労働力なのだからな】
みんなが出て行ったと同時にガラッと態度を変えたラフレシア女王。
「恐れながら…ラフレシア女王…あの者達が心配で駆け付けた訳ではないのですか?」
不動王が疑問をぶつける。態度が豹変しすぎたからだ。
【はぁ?なぜ私が地球人如きを心配しなければならぬ?私が心配なのは、あの者達がカンキョハカーイに敗れ、我が領土が奪われる事だけだ】
ラフレシア女王は屋上の床にベタッと尻を付けて座り、ミネラルウォーターをガプガプと飲んだ。
【ふあああ~!全く地球ってのは、水も買わねばならんとは】
不満を口に出すラフレシア女王。買う必要も特にないのだが。
「ふ、不快指数MAXの事は、桜花を心配して来られた訳では…」
恐る恐る尋ねた雷太夫に冷徹な眼差しを向けながら言う。
【不快指数MAX…あの技は私しか使えぬはずだったが、チェリーブロッサムが使えたとなると、他の連中も使える可能性が出てきた。だから代わりに他の技を授けようと来ただけだ】
ラフレシア女王は不快指数MAXを他のラフレシアンに使わせたくなかったのだ!!本人達は使いたい気は全く無いだが。そんな事は知った事じゃない。使われる前に手を打っただけなのだ。随分小っちゃい女王様である。
「で、でもわざわざ出向かずとも、我々にお伝え下されば…」
ラフレシア女王は発言した棘紅郎をギロッと睨み付け、
【お前達は連中にナメられているから、わざわざ私自ら出向いたのだろう!!全く使えない奴等よ!!】
と、棘紅郎に履いていたハイヒールを手に持ち、ヒール部分でがっつりと殴った。
「ぐわあっ!?」
ヒールがめり込み、血を噴き出す棘紅郎。従者達は心配して棘紅郎に集まる。
【ワラワラ集まるな虫けら共が!!貴様等もグダグダ言わないで、しっかりあの者達を監視せよ。全てが終わればあの者達は用済みになるのだからな!!】
冷たく言い放つラフレシア女王に、従者達は震え上がる。
ラフレシア女王は慈悲の心を表に見せ、実は冷酷だったのを改めて実感した!!
ラフレシアンの持つ二面性は、女王ですら例外じゃなかったのだ!!
雷太夫は桜花の家に重い足取りで戻った。
「お、帰ったか。珊瑚から電話で聞いたぜ。私達の新しい力の事をよ」
桜花はソファーに寝そべりながら、お煎餅をパリパリ食べていた。
雷太夫は桜花に問うてみる。
「桜花…もし、もしも、味方だと思っていた人物に裏切られたら、どうする?」
桜花はさして興味を示さず、テレビを見ながら言い切る。
「あん?そんなもん、問答無用でぶちのめすに決まってんだろクズ」
「それがあまりにも巨大な、太刀打ちできぬ程の力を持っている人物ならばどうする?」
桜花は雷太夫にお煎餅を一枚渡し、やるよと言うジェスチャーを取りながら続ける。
「私より強い奴はいねぇから大丈夫だ。なんだ?誰かそんな奴いんのかよ?今から代わりにぶちのめしに行こうか?」
どうやら雷太夫がそのような目に遭っていると勘違いしている桜花。
そして代わりにぶちのめしてやると言った桜花の優しさに少しホロッとした雷太夫。
「もしも、だ。もしもの事だよ。だから気にするな桜花…」
雷太夫は貰ったお煎餅をパリパリと食べた。
少ししょっぱかったのは、涙のせいだった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます