リーダーは誰だ!?
屋上で月夜をみんなに紹介した桜花。
「つー訳で、こいつがラフレシアン フルムーンナイトだ」
「よろしくなぁ~」
胸を張って威張ったような月夜。
「…ブツブツ…黒い女の子か…ブツブツ…」
「まぁしっかりやるのら」
「よろしくですの」
「せいぜい頑張りなさい。オーッホッホ!!」
自分もかなりアクが強いが、桜花と同じように一癖も二癖もありそうなラフレシアン達。自分と同じ匂いについついにやけてしまう。
「つーかお前、ラフレシアンになった理由はなんだ?」
桜花に訊ねられて、にやけていた顔を戻す月夜。少し考えて、今度は更に嫌らしい笑顔になった。
「ストレス発散だよ。優等生でいるの疲れんだよ。自慢じゃねぇけど、前の学校じゃ成績トップだぜ」
親指で自分を差し、胸を張る。従者の棒忍愚が補足とばかりにしゃしゃり出た。
「成績トップって言っても、自分より学力のある奴の靴に画鋲仕込んだり、不幸の手紙送ってノイローゼにしたりぐはっ!!」
月夜は棒忍愚を思い切りぶっ叩いた。
「そのような努力も惜しまないと言えよぅボケェ~」
成る程、陰湿な手口だと桜花は頷いた。
「傑作だったのがよぅ、英語だけは勝てなかったメガネに毎夜毎夜藁人形に五寸釘ぶち込んでたらよぅ…そいつ、入院しやがってよぅ…ギャハハハ!!ざまぁ見ろってんだボケェ!!」
本当に愉快そうに笑う月夜にかなりドン引く桜花達。
「お前呪いまでやんのかよ!?」
「あ~?シャレだよシャレ!!」
「…ブツブツ…シャレと言っても実際入院したんでしょ…ブツブツ…」
「あ~?偶然だろ偶然!!」
「そんなに成績トップが欲しかったのら?」
「あ~?頭取らなきゃくたばってんのと同じだろうが?」
「し、信じられないですの!!」
「あ~?事実から目を背けんなよ?」
「悪党でしたのね……」
「あ~?私は勝ったからむしろ正義だろうよ?」
凄まじくヤバいラフレシアンの出現に、桜花達の背中に冷たい汗が流れた。
「ところでよぉ、お前等のリーダーは誰だよ?」
ギラリと桜花達を見渡す月夜。
面倒な質問だ。自分がリーダーだとは思っていないが、もしリーダーだと月夜に思われたら、靴に画鋲仕込まれたり、階段から突き落とされたり、もしくは最悪呪い殺されたりするかもしれないのだ。
「桜花ですわ」
梅雨は自己防衛本能を働かせ、桜花を指差した。
「あ?私?」
キョトンとする桜花。
「…ブツブツ…桜花が適任ね…ブツブツ…」
「桜花しかいないのら!」
「桜花以外有り得ないですの!」
皆は桜花に面倒事を押し付けた。言い出しっぺの梅雨にこれ程感謝した事は無い。
卑怯な節操無しの梅雨がこれほど役に立つとは、これほど頼りになるとは、と。
「私かぁ…手当てとか出るならやるけどよ…」
桜花は頭を掻きながら、面倒臭そうにしている。お金が絡めば話は別だが、なるべくただ働きはしたくはない。
「やっぱり桜花かぁ~。思った通りだぜぇ!ゲラゲラゲラ!!」
怪しく高笑いする月夜。そして眼鏡の奥から敵意剥き出しで桜花を見た。
「私もリーダーを狙ってんだよ桜花ぁ!!」
ああやっぱりな、と、皆は思って頷いた。
「じゃ、お前や…ムグッ!!」
月夜にリーダーをやらせようとした桜花の口を珊瑚達が塞ぐ。
「…ブツブツ…桜花…さすがにあんな子はリーダーはダメ…ブツブツ…」
「ここは桜花が犠牲になるのら!」
「桜花なら嫌がらせや呪いなんかに負けないですの」
「桜花なら私の上に立つに相応しい人材でしてよ!!」
どうしても月夜にリーダーをさせたくない珊瑚達は桜花をゴリ押しする。
「桜花は人望あるなぁ~ケッケッケェ~…」
月夜はユラリと立ち上がり、桜花に指を差す。
「リーダーはなぁ桜花ぁ~…群れの仲間を安全に確実に守れるかだぜぇ~?ちょっと勝負しようやぁ~…次にカンキョハカーイが来た時、機害獣と幹部それぞれ三人一組で撃破すんだよ。素早く仲間を怪我させないよう倒した方がリーダー…どうだぁ?」
「面倒臭せぇなあ…別にいいけどよ。組み合わせはどうすんだよ?」
月夜は珊瑚達をぐるっと見回した。
(青は根暗だし赤はチビだし…白は確か支部長と戦ってきたんだよな?緑は元支部長だから情報持ってる筈だ…)
月夜はパンと手を叩き、よし!と小さく呟く。
「私は白雪と梅雨を貰うぜ桜花ぁ…問題あるか?」
「無いけど…お前それでマジでいいのか?」
「構わねぇなら決まりだなぁ…ケッケッケェ~…よし、白雪、梅雨、来いよ~?作戦会議と洒落込むぜ」
月夜は白雪と梅雨を引っ張って屋上から出て行った。
「…ブツブツ…あの子自滅したわ…ブツブツ…」
「で、でも私達が月夜に引っ張られたらどうするつもりだったのら?」
「別に?一人でぶっ倒しゃいいだけだろ?」
つまり、白雪を梅雨に羽交い締めにして貰い、桜花一人で倒す。と。
「それが一番安全確実なのら」
「…ブツブツ…あの子はどうするつもりかしら…ブツブツ…」
「どーでもいいけど、リーダー手当てって出ねぇのかなぁ~……」
コロンと寝ころび、面倒そうに呟く。桜花は既にリーダーになった気でいた。
と、言うか、リーダーに推されたのも、実は満更でもなかった。
「まぁ入れよぉ~。ここは静かでいい所だぜぇ~ケッケッケェ~」
月夜に通された場所は、図書館の資料室。古い本を保管している場所だ。
「ど、どうしたんですのココ?」
「なんで資料室の鍵を持っているのでしょう?」
「真面目に過ごしてれば馬鹿なセンコーは直ぐに鍵貸してくれんぜぇ…ケッケッケェ~」
どうやら調べ物の為とか何とか言って鍵を借りた後に合い鍵を作った様子だ。
「誰も使ってねえから埃が溜まってて掃除大変だったぜぇ~」
どこからか持って来たソファーに座り、冷蔵庫からお茶を出して配る月夜。
「冷蔵庫まで…!」
「と、言うか冷蔵庫が無いのは桜花の屋上と珊瑚のシャワー室だけでしょう?」
保健室にも冷蔵庫はあるだろ、と白雪を見る梅雨。
「ま、そんな訳で作戦だがよ、私の武器は鎖鎌なんだよ~。お前等は私を援護をしてくれりゃいいだけだよ。楽な仕事さぁ。気楽にやんなよ~ケッケッケェ~!!」
鎖鎌で戦ってきた月夜は援護が欲しいと思っていた。今回、それが叶うのだ。
そもそも一人でも負けた事は無かったのだ。それに援護があれば楽勝だ。負ける要素が見当たらない。
ズカガアン!!
カンキョハカーイ幹部、シーオーツーが機害獣ヤマカジの頭部に乗って現れた!!相変わらず校舎を破壊して。
「フハハ!ラフレシアン!!今日で貴様等は終わりだ!焼き殺してくれるわ!!」
ヤマカジは岩山の形をして炎を纏っている。さながら巨大なマグマのようだ。
「来たかよ、いくぜ!」
桜花の号令でラフレシアンに変身し、校庭に出る桜花達。
月夜達も変身して校庭に出る。
「クズ、性懲りもなくよく現れたなぁ!!」
シーオーツーに指差す桜花。
「やかましい!他人に向かって指を差すなと躾けされなかったのか!!」
いきり立つシーオーツー。それを余所に月夜は桜花に耳打ちをした。
「私達は幹部なぁ。お前等は機害獣だ。いくぜチェリーブロッサム!リーダー決定戦だぁ!ケッケッケェ~!!」
「クズでもザコでもどっちでも構わねーけど…」
「よく言ったチェリーブロッサムぅ!!」
月夜はシーオーツーに投石し、ヤマカジから降ろす。石が当たってバランスを崩したのだ!!
「く!投石とは原始的な!!」
「来いよボケェ……テメェは私達が面倒みてやるぜぇ…ケッケッケェ~」
シーオーツーはヤマカジをチラッと見た。
ヤマカジにはチェリーブロッサムとグレートバリアリーフとレッドリーブスが張り付いている。最早立ち入る隙は無い。
「よかろう。ついてこい!!」
シーオーツーは笑いながら、学校の裏山に掛け出した。
「待ちやがれボケェ!!」
シーオーツーを行き止まりまで追い詰めた月夜。しかしシーオーツーは高らかに笑った。
「クックック…アーッハッハ!!」
「何がおかしいんだボケェ」
「フッフ…このシーオーツーをたった一人で相手にするつもりとは…」
一人だと?慌てて振り返る月夜!
「レイニーシーズンがいないですの」
「いねぇ?追い付けなかったか?」
しかし白雪はそれを首を横に振って否定する。
「きっと逃げたんですの」
月夜は耳を疑った。仮にもヒロインのラフレシアンが敵を目の前にして逃亡したとは!
「それにしてもおバカな人ですの。たった一人?このホワイトスノーブリザードが見えてないんですの?」
白雪は不動王をビームキャノンにトランスフォームさせて凄む。
「報告は受けているぞホワイトスノーブリザード」
シーオーツーは腕を組み、不動の構え。
「後悔するなですの!!」
白雪はビームキャノンを発射した。
月夜目掛けて!!
「うわああああああああああああああああああああああああああ!!」
ズカァァアン!!
ビームが月夜に直撃した!!流石のラフレシアンもビーム直撃には耐えられない。月夜は黒こげになり、ピクピクと痙攣する。
持ち前の正義感に火が点く白雪。キッ!とシーオーツーを睨み付ける。
「よくもフルムーンナイトを!私が仇を取るんですの!きゃん!!」
白雪はすっ転んだ。その弾みでトリガーを弾いてしまう。
「て、てめぇホワイトスノーブリザード……何するんだボケェ!!」
フラフラになりながらも立ち上がる月夜の顔面スレスレをビームが掠めていく。
月夜は汗を大量に流し、白雪の方を見る。と、大量のビームが自分に目掛けてやって来るのが見えた。
「どわあああああああああああああ!!マジかあああああああああああ!?」
辛うじて全弾躱す月夜。体力がすっからかんになってしまった。勿論気力もだ。
「フハハ!!たった一人じゃなく二対一だったようだなフルムーンナイト!!」
マジか…緑は逃亡し、白は故意じゃないにしても自分を襲う…ああ、私はここで死ぬんだなぁ…
月夜が覚悟を決めたその時だった。
「うらあ!!」
桜花が白雪の頭を小突いた!!
「チェリーブロッサム?」
いきなり現れて自分を小突いた味方に驚く。知らず知らずにトリガーに掛かっていた指に力が入るが、それを見逃がす桜花ではない。
「トリガーから指を離せ!危ねえだろうが!」
「え?あ、は、ハイですの!!」
慌てて白雪はトリガーから指を離した。これで一安心だ。
「ち、チェリーブロッサム…機害獣は?」
ヨロヨロのボロボロになりながらも疑問を口にする月夜。そんな余裕は無い筈だが、流石ラフレシアンと言った所か。
「倒したぜあの程度のザコ。ほらよ」
桜花は月夜の前に梅雨を簀巻きにし放り投げた。
「倒した?あんな短時間で…ってレイニーシーズン!?」
「オッホッホ…木の影に隠れてたのをチェリーブロッサム達に見つかりまして…」
桜花達は機害獣を瞬殺し、恐らくとんでもない目に遭っているであろう月夜の元に駆け付けたのだ!!
「これから先の戦いは戦力はいるだけいた方がいいからな」
そしてシーオーツーを睨み付けて凄む。
「ここからは私が相手してやるよクズ!!」
「チェリーブロッサム…!!いつぞやの屈辱は忘れてないぞ…だが、今日はここまでだ!!」
シーオーツーはテレポートして逃げた。桜花にマジビビっているのだ。トラウマがあるのだろう。
「機害獣を瞬殺されてビビったのかヒョロ男ぉ!勝負しろやクズ!!」
既に撤退したシーオーツーがいた空間に向かって憤る桜花。
月夜は呆けながら、その様子を見ていた。
梅雨のほっぺたをギッチリ握りながら。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!許して!!放して!!」
放す訳が無いし、許す筈も無かった。
月夜は、跪いて泣いている、ほっぺたを握られて逃げられない梅雨を見下ろし、低く呟いた。
「ボケェ~…オメェは生きたまま埋める…顔だけ出して埋める…毎日暇つぶしに出ている顔を蹴っ飛ばしに来てやるぜぇぇぇぇぇ……」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
脅える梅雨を誰も庇わない。自業自得だ。だが流石に生き埋めの儘では可哀想だ。
「フルムーンナイト、飯くらい食わせてやれよな。飯食わないと死んじまう」
「それより止めてくださいな!!この方は本当にやりますわっ!!」
止めたくはないが洒落にならない事になりそうなのは確か。なので全員が月夜を宥めた。
おかげでどうにか命を繋いだ梅雨だが、解放される時に腹パンを三発喰らっていた。
変身を解いた桜花達は、そのまま裏山で休憩していた。
休憩のジュースは梅雨のおごりである。
「わ、私がみんなの分を出して差し上げますわ」
とか言って買ってきたのだ。
「桜花ぁ…負けたよぉ…素直にお前の下に付くよ」
機害獣を瞬殺して、白雪のドジを封じ、梅雨の逃亡を発見、そして幹部がビビって逃走した事を踏まえて、月夜は桜花をリーダーと認めた。認めざるを得なかった。
「まぁ、リーダーになっても得がねぇが、しゃあねぇか…」
面倒そうに呟いてから桜花はジュースを一口飲む。
「!!バドワイザーじゃねえか!!でかしたぜ梅雨!!」
「オッホッホ…リーダーならこれ位はねぇ」
「さっそく取り入ってるのら」
「ですの」
「…ブツブツ…良かった桜花で…月夜だったらヘマしたら呪い殺しそうだし…ブツブツ…」
「何だよそれよぅ?私をどんだけ危険視してんだよぉ?」
ともあれ5人は桜花をリーダーとし、一つに纏った。
みんなの笑い声に包まれながら、自分も笑いながら桜花は全く別の事を考えていた。
リーダー手当てってツチノコに請求すれば貰えるんじゃねえ?と!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます