神様、拾いました

 初詣の帰り道、道端に変なものが倒れ伏していた。

 全身にもこもこと毛の生えた、それは猿のような人型の存在だった。

 大きさは2リットルのペットボトルくらい。ぴくぴくと痙攣じみた動きをしていなければ、捨てられたぬいぐるみだと思い込んだところだ。

 さてこれはどうしたものかと周囲を見回すが、最寄りの駅から既に十数分、年明けの喧騒から離れたこの夜道には俺以外の人影はない。


 煩悶した結果、ちょっぴり怖いので距離を確保してから声をかけた。


「おい。おい。お前大丈夫か。生きてるのか」


 すると猿めいたそれはぴくりと反応をし、こちらを見た。人間の赤ん坊のような、意外に愛らしい顔立ちをしていた。


「……」


 そうして何か呟いたようだが、どうにも聞き取れない。

 意を決して近づいて、もう一度「おい大丈夫か」と体を揺する。


「……し」

「し?」

「信仰が足りない……」



 以後の紆余曲折は省く。

 結局それは「今年一年だけ」という約束で、うちのダンボール製の即席床置き神棚に恵比寿顔で収まっている。

 一応神様の端くれらしいのに安上がりなものだが、まあご満悦の様子だから何も言わずにおこうと思う。

 ちなみに拾ってからもう半月になるのだけれど、今のところ、ご利益らしきものはない。

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