神様、拾いました
初詣の帰り道、道端に変なものが倒れ伏していた。
全身にもこもこと毛の生えた、それは猿のような人型の存在だった。
大きさは2リットルのペットボトルくらい。ぴくぴくと痙攣じみた動きをしていなければ、捨てられたぬいぐるみだと思い込んだところだ。
さてこれはどうしたものかと周囲を見回すが、最寄りの駅から既に十数分、年明けの喧騒から離れたこの夜道には俺以外の人影はない。
煩悶した結果、ちょっぴり怖いので距離を確保してから声をかけた。
「おい。おい。お前大丈夫か。生きてるのか」
すると猿めいたそれはぴくりと反応をし、こちらを見た。人間の赤ん坊のような、意外に愛らしい顔立ちをしていた。
「……」
そうして何か呟いたようだが、どうにも聞き取れない。
意を決して近づいて、もう一度「おい大丈夫か」と体を揺する。
「……し」
「し?」
「信仰が足りない……」
以後の紆余曲折は省く。
結局それは「今年一年だけ」という約束で、うちのダンボール製の即席床置き神棚に恵比寿顔で収まっている。
一応神様の端くれらしいのに安上がりなものだが、まあご満悦の様子だから何も言わずにおこうと思う。
ちなみに拾ってからもう半月になるのだけれど、今のところ、ご利益らしきものはない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます