割って入る

 翌日のテストに備えて、試験勉強をしていた。

 ある程度まで進めたところで集中が切れた。首を回して伸びをして、そしてふと、何か視線のようなものを感じた。

 振り返るといつの間に入り込んだものか、蛇が部屋の床にとぐろを巻いている。


「貴殿には意趣がある」


 蛇はちろちろと舌を出し入れしながら、確かに人の言葉でそう言った。


「我は予てよりこの邸宅に」


 だが、続けられたのはそこまでだった。

 その背後に音もなく忍び寄っていたうちの猫が、ぱしりと鎌首を前肢で打ち据えたのだ。怯んだ蛇に噛み付くや、そのまま咥えて外に駆けていってしまった。



 ちなみに猫は、程なくして無事帰ってきた。

「あれはどうしたんだ?」と訊ねたところ、素知らぬ顔でミャオウと鳴いた。

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