錆びる

 残業が続いたある日の事だった。

 家に帰ってふと気づくと、腕が赤く粉を吹いている。

 ぎょっとすると同時に愕然がくぜんとした。

 確かに最近忙しくしていたが、シャワーくらいは毎日浴びている。こんな奇妙な粉を吹くほど不潔にした覚えはない。


 恐る恐るで顔を近づけ、赤い粉を嗅ぐ。金物めいた匂い。どうも鉄錆のようだ。

 しかし金属類に、しかも体に付着するほどの錆びを生じたものになど近寄った記憶はまるでがない。一体どこでこれが腕についたのか。

 手をこまねいたその時、ぱきんと乾いた音がした。

 俺の腕に陶物すえもののようなヒビが入って、肘から先が落ちて転げた。

 割れた腕の切断面からざらざらと、赤い錆の粉が床にあふれた。

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