閉じ込める

 姉さんが死んだ。僕は姉さんが大好きだった。

 その上皆は、死んでまで美しい姉さんを焼いてしまうつもりだった。僕は当時まだ子供だったから、悲しく思いながらもどうする事もできなかった。


 荼毘だびに付された後、姉さんは墓に収まってしまう。

 僕は布団の中で考えに考え、そして斎場に小瓶を持ち込んだ。

 泣いている大人たちの目を盗んで、骨上げ台の上の遺骨からかすかに立ち昇る上がる温度を、姉さんの煙をそれに封じた。

 きつくきつく栓をして、二度とどこへも行ってしまわないようにした。


 今でも、小瓶は僕の傍らにある。

 中の細くて薄い煙は、時折美しく姉さんの顔をして、悲しげにこちらを見る事がある。

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