窓を這う

 長雨が続いている。洗濯物も布団も、日に当てられずに湿気ている。

 梅雨は本当に嫌な季節だ。

 読んでいた本から目を上げ、窓の外を見る。途切れ目のない雨が、細い糸のように空と地とを繋いでいる。

 と、その窓に異物が張り付いているのに気づいた。

 ナメクジだ。数匹が、粘性の痕を引いてうごめいている。


 気持ち悪いな、と思った。晴れたら窓を拭こう。

 腹足を見続けるのは嫌だったので、当座の対処でカーテンを引こうと窓に寄る。

 そして、ぎょっと足が止まった。


 窓をうのはナメクジではなかった。

 根元から切り落とされた人の指が、どうしてか窓に張り付き、蠕動ぜんどうしているのだった。

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