雨の色

 じっとりと蒸し暑い、夏の午後の事だった。

 部屋でごろごろと漫画を読んでいると、唐突に低く、遠雷が響いた。

 開け放しの窓の外を見やれば、一点の濁りもなかった晴天がにわかにかき曇り、黒く分厚い雨雲が出ている。

 と、思うまもなく、しのを突くような激しい雨が降り出した。

 網戸から遠慮会釈なく吹き込む雨足で、俺は慌てて窓を閉める。それでも強く雨音だけが、耳を圧して部屋を包んだ。


 激しさに反比例して、驟雨しゅううは短い間で止んだ。

 ひどい降りだったなと再び窓を開ける。すると外は真っ赤だった。

 家も道路も自動車も、辺り一面何もかも。

 全てがペンキをひっくり返したように、赤く雨の色に濡れ染められてるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る