中身

 レインコートを羽織った子供が、鼻先をぱたぱたと駆け抜けた。

 こんなにいい天気なのにフードまですっぽりと被って、きっと買ってもらったばかりの品にはしゃいでいるのだろう。とても微笑ましい気持ちになった。

 と、不意にその子がつまずいて転んだ。


「大丈夫?」


 かけようとした声は、喉の途中で凝固した。

 弾みで外れたフードの下。そこには何もなかった。ただ首の断面だけが、色鮮やかな肉を露呈している。

 子供はむっくり立ち上がり、膝を払うとフードを被りなおした。

 そうしてまたぱたぱたと、向こうへ駆けて行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る