添い寝

 怖い夢を見ていた。

 もやのような煙のような、それでいて形を人型から崩さない。そんな黒いモノに延々と追われる夢だ。

 夢の中で、私はこれが夢だと判っている。

 なのにひどく怖かった。それに捉えられたらひどく恐ろしい事が起こるのだと、体のしんが知っていた。

 走っても走っても、それは一定の距離を保って追ってくる。否。じわじわとそれは詰められている。

 夢だというのに息が切れた。腕が重い。足が上がらない。

 とうとう私は動けなくなって路肩に倒れ込む。頭を巡らすとそれはもう目と鼻の先に迫ってきている。

 もう駄目だと思った時、どすんと胸に重い衝撃があった。



 はっと目を開けると、胸の上にうちの猫が居た。先の衝撃は、この三毛みけが私に飛び乗った時のものであったようだ。

 猫は私と顔が合うなり、盛大な欠伸をしてみせた。生意気な三色毛玉め。

 それにしてもこいつ、一体どうやって私の部屋に入り込んできたのだろう。締め忘れるはずもない部屋のドアは、猫の分だけの隙間で開いている。

 首を傾げる私を尻目に、猫はもぞもぞと布団に潜り込んできた。

 いつもはこんなくっついてなんてこないのに、今日は、一緒に寝てくれるらしい。

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