ざざざざ

 通い慣れぬ夜道を歩いていると、竹林の前を通りかかった。

 ひとの肩ほどの高さの土手の上に鬱蒼うっそう繁茂はんもして、どうにも見下ろされているような、覗き込まれているような気分になる。


 ざ、ざざ、ざ。


 私の歩みに連れ、風もないのに笹が鳴る。

 ぞわりと怖気おぞけが走った。

 音に混じって某かの気配が、ぞわぞわとうごめく、無数の群れのいきづかいが感得できた。


 ざ、ざざざざ、ざざ。


 音はぴたりと私について移動する。しかし竹薮を過ぎるとぴたりと止んだ。

 恐る恐るで振り返れば、竹は小揺るぎもせず、素知らぬ顔で立ち尽くしている。しかしそこには拭い難く、得体のしれない空気あった。


 後日、その竹林が霊園を囲む目隠しであると知った。

 さればあの音と気配とは、そういうものであったのだろう。

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