開けていたなら

 朝、目を覚ますと、かなりギリギリの時刻だった。

 大学近隣で一人暮らしをすると、宿命としてその部屋はたまり場になる。昨夜も友人どもが集って呑んでいった。いささかならず、酒が過ぎた感は否めない。

 朝食はコンビニで見繕う事にして、手早く身支度を整える。鞄を手にさて出ようとしたところで、玄関口に置かれている箱が目に留まった。

 無造作に置かれてはいたが、箱自体は無味乾燥なものではない。

 綺麗に、かつ丁寧にラッピングされリボンに包まれた、いわゆるプレゼントボックスだった。

 けれど俺にはこんなものを贈られる謂れも心当たりもない。

 すると昨日の連中の忘れ物だろうか。

 実は迷惑料代わりのレゼントかもと期待をしたいところだが、あいつらには絶対、そこまでの気遣いはない。奴らの仕業とするならばむしろ悪戯の線こそが濃厚だろう。

 だがいくら考えたって結論は出ないし、とにかく時間が押している。

 開封は帰ってからにしようと家を出た。



 授業を終えて家に戻ると、箱はなかった。

 いくらたまり場になっているとはいえ、鍵を持っているのは俺だけだ。今朝は急いでいたが、戸締りくらいは確認している。

 にも関わらず、箱はなかった。

 あれには一体何が入っていたのだろう。

 開けそびれたのがどうにも悔やまれた。

 けれど同時に、開けなくてよかったという気も、また強くするのだった。

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