探し歩く
友人の、肝の太い山男から聞いた話である。
独り山に入って夜、テントで眠りに就こうとすると、ひたひたと何者かが歩く音がする。
足音は、どう聞いても登山靴の立てる音ではない。裸足のそれだ。そしていつまでも、ひたひたひたひたとテントの周りを回っている。
──ああ、これは生きているものの足音ではない。
そう感じたが、別段テントに押し入ってくる様子はない。なら無視に限ると決め込んで、いつも通り首にナイフをかけてから、寝袋に潜り込んで眠った。
翌朝テントを畳んでいると、フライシートの下の隅から靴が一足出てきた。どうしてか設営の時は気づかなかったそれは、ボロボロに痛んだ登山靴であった。
すると昨夜の足音は、これを探しにきたものだったろうか。
少し悩んでから、そのままそこに捨て置く事にした。
持ち帰って供養を頼んでもよかったが、万一靴を探して下山してきたら面倒だと思ったのだそうだ。
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