不本意ながら
テレビにおかしなものが映るようになった。
普通に見てる時には映らない。
お父さんやお母さんと居る時も映らない。
でも僕がひとりでゲームをしていると、それはこれ見よがしに現れて、大きな口の両端を吊り上げて、にたりにたりと笑う。
ゲーム画面の暗転、ローディング中の暗闇。そこでテレビに写る僕の、その隣に現れて笑うのだ。
最初は鏡のように画面に写り込んでいるのだと、それが隣にいるのだと思って怯えたけれど、どうやら違うようだった。
そいつはテレビの中にしかいない。
大きさは僕の頭と同じくらい。出来損ないのてるてる坊主のような風体で、レインコートのようなものを羽織っている。
目深にしたフードで顔は見えないが、そのやけに大きくて赤い口は、いつも僕を嘲って笑っている。ニタニタと笑い続けている。
そしてそれ以上、何をしてくるわけでもない。
実害がないのが知れて当初の恐れが薄れてくると、後はもうたたただ腹立たしくいばかりだ。でもどうしようもない。どう対処したらいいのかも分からない。
だんだんと僕がゲームをする時間は減った。
非常に不本意ながら、成績は随分と上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます