第四十四話『カブト博士』

カブトムシと言ったら、手のひらに乗る程度のものだからだ普通は。


そう、このカブトムシは人間よりはるかに大きいのだった。


「世界最大どころじゃないね」

と、へびくんが笑った。


「もはや恐竜だわ・・・」

と私は言った。


「かっこいいな・・・」

そんなことを言っているのはライオンだ。

何をのんきなことを言っているのだ。


「『かっこいい・・・』じやないわよ!!やらないとやられるわよ!!実際もう少しで私達、黒焦げだったんですけど・・・」

と私は言った。


そう、このライオンがかっこいいとおっしゃる、ヘラクレスオオカブトさんは、いきなり炎お見舞いしてくるお方なのだ!


なんて礼儀正しいの!!

挨拶代わりに炎を吹きましょうって習うもんね!

道徳の時間に!!


と私が心のなかで皮肉を言っていると。


「いや、でもかっこいいだろ」

と、まだそんなことを言っているライオン。

彼を魅了してやまないフォルムをしているらしい、ヘラクレスオオカブトは。

女子の私にはさっぱりわからないわ!


「え?ライオンっち、カブトムシ好きなの?」

「もちろんだろう。いろんなところに取りに行って飼育した」

とライオンが言った。


「あ・・・、オタクだわ・・・」

そう、今までは、私達がオタク扱いされてきたのだけど、それはサブカルチャーに限っての話で、ライオンもしっかりとした、カブトムシマニアだったのだ。


「王子っぽくない!!」

と私は言う。


いや、まって。

よく考えると、お金持ちの趣味というような気がしてきた。

世界は広いし、カブトムシが好きな王子ということでここはひとつ。


「そんな無駄話してる場合じゃなさそうだよ、ヤギっち!」

「そうだぞ、ヤギ!」

と、へびくんとライオンに言われた。


「わたしだけかい!!」

と突っ込んだ。


「ヤギっち悪いんだけど、ヘラクレスオオカブト調べてもらっていい?相手の強さ知りたいんだけど」

というへびくんのリクエストに答えて


「天秤 - ライブラ」を発動させた。


<ヘラクレスオオカブト Lv20 属性:炎>


「あ、やっぱり『ヘラクレスオオカブト』だって!さすがカブト博士!」

と私はライオンに言う。


「いや、だれでもわかるだろう」

という、ライオン、言葉とは裏腹に満更ではなさそうだった。

なかなか可愛いライオンの一面が見れた。

そして、誰にでもわかるわけはないことは心のなかで突っ込んでおこう。


「あと、炎属性だって!」

「うん、炎使ってきたもんね」

とへびくんが笑う。


「そして、レベル20だって!」

「えぇ??レベル20??僕らがレベル11なのに??これはヤバイんじゃ・・・」

そうだった。


私たちはキマイラ補正で(キマイラ補正という単語があるかは知らないけれど)レベル15とかの敵をやっつけてきていたけど、さすがにレベル20は初めてだった。

私達の倍近くある。と思っていると。


「ヤギ!くるぞ!!」

ライオンが言った。


そう、ヘラクレスオオカブト。

ツノが鋭利なことでお馴染みの世界一巨大なカブトムシ(人間大)が突進してきたのだった。

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