第三十九話『ゲシュタルト崩壊』

「なかなかやるな、ハシビロコウ!」

とライオンは笑った。


「戦闘開始だな」

とライオンがクールにそう言った。


「うがががががが」

と、私が唸り声を上げる。

言葉にならない声である。

この気持をどう表現していいか、わからなかったのだ。


「う、うまくあるけない・・・つらすぎる・・・」

と私が続けて言う。

今まで出来たことがいきなりできなくなるのかなりつらいわ。

自尊心が失われる・・・。


「大丈夫ヤギっち?」

とへびくんが心配そうに見ている。


「うまく・・・歩けない・・・。私、今までどうやって歩いていたのかしら・・・。」

そう、今までどうやって歩いていたのかもわからなくなった。

右足を前にだして、左足を前にだして・・・?

そんなので歩けるかしら?

とすべてが疑わしくなってきた。


「ヤバイ!ヤギっちがゲシュタルト崩壊を起こしている。」

そう、これはゲシュタルト崩壊。


「私は誰・・・?ここはどこ・・・?足とは・・・?」

と、全体として捉えることが出来なくなり始めていた。

これがゲシュタルト崩壊。

すべてがわからなくなってきた。


「おい、ヤギが良くわからないことを言い出してるぞ!」

とライオンくんが言う。


「ヤバイ!ヤギっちが壊れた!!」

とへびくんが言った。


「スキル「低速化 - スロウ」恐るべし・・・ヤギっちの頭までスロウにするとは・・・」

とへびくんが言った。

なんか上手いこと言った感もだしている・・・。

私が困っているのに!!

適当なこと言って!!

へびくんのバカ!!


「誰の頭がスロウですか!!」と私は言った。

「あ、正気を取り戻した。大丈夫かヤギ?」

とライオンが聞いてくれた。


「うん、なんとか!へびっち、女子に向かって頭がスロウってどういうこと!!」

と猛抗議する。


失礼しちやうわホント。

誰の頭がスロウなのよ!!

誰の頭が!!


「大丈夫か?」とライオンがさらに心配してくれる。

「うん、なんとか、でも、やっばりゆっくりしか動けない」

と足を動かすけど、いつもどおりには歩けない。


「でも、そういえば、こんな状況なのにハシビロコウ攻撃してこないね。実は弱いのかな?」とへびくんが言う。


その言葉に怒ったのか、はわからないが、ハシビロコウが大きく翼を広げた。

そこには黒く大きい竜のようなモンスターがいた。

そう、なかなか翼を広げた、ハシビロコウを見ることはできないが、その姿は、黒い悪魔といえるだろう。


「でか!!ハシビロコウでか!!」

そう、ハシビロコウは翼を広げるとめちゃくちゃ大きいのだった。そして、その姿はそのままドラゴンのモンスターに見えた。


「ああ、これが、あのあの狩猟ゲームのドラゴンのモデルなんだ!」

とへびくんが感心した。


でも、感心している場合ではなかった。

「ヤバイ、またスキルか!!」


そう、ハシビコロウが光に包まれ、スキルが発動した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る