第二十八話『戦利品』

「師匠!僕の出番のようですね!」

と、妖精くんが笑った。

そう、人間の町に行っても討伐されないであろう、妖精君の出番だった。


私がマカロンを欲しがったので、妖精くんが動いてくれることになった。


「妖精っちに動いてもらうのはいいとして、実際どうする?勝手に拝借しちゃう感じ?」

とへびくんは言った。


つまり、それは、泥棒だ。

マカロンは食べたい。

しかし泥棒は・・・。


「それはやだなぁ」

と私は思った。

ちゃんと購入したい。

でも、そもそも、お金なんて持ってないんだった。


「魔族らしく、献上させるとかか?」

とライオンが魔族らしい提案をした。

砦まで、献上物を持ってこさせるイメージだろう。

人間とモンスターは仲良く暮らすことはできないのだろうか。


「ぬー。それもやだなぁ」

私が言う。


「私達は人間のみんなと仲良くしたいだけなのに、近づくと、いろいろひどい目にあってしまうのね。」

「まさに悲しきモンスター・・・」

と私が考えると、へびくんが頷いた。


「なんか、人に変身するオプションとかないのかなぁ」

「ああ、それいいね!そういうスキルを覚えればいいんだ。」

私たちはスキルに対する夢想を始めた。

そのスキルを覚えたら私達の旅はかなり楽になるんじゃないかと思う。


「それを覚えちまったら、もうモンスターには戻らない気がするけどな」

「そうだね。でも、こういう能力って時間制限があるものだから、その心配には及ばないかも。」

とへびくんは言った。

その心配がない安心設計だという想像をしていた。


「確かに、そういう映画は結構あるかもな」

サブカルチャーに詳しくないライオンもこの話は理解できたみたい。


「今回は妖精っちにお願いするとして、いずれそういうスキルを覚えることを祈ろう。」

「かわいい女の子に変身できるといいなぁ」

私達はあるかどうかもわからない、スキルについて思考を続けるのだった。


「なにか、お金の代わりになるものを置いていけるといいなぁ、流石に盗むのはいやよ!」

と私は言う。


「うーん、RPGみたいに倒したらお金もらえないのかしら」という私。


「アーマードゴリラの鎧とか・・・」

とライオンは言う。


「それが戦利品ということでもらっちゃおうか」

とへびくんが言う。


しかし、ゲーム画面で、ヤギは100G手に入れた!って出たら、なんの罪悪感もないけど、倒した、敵の持ち物を取るのは罪悪感しかない・・・


「ヤギは『アーマードゴリラ』の鎧を手に入れた!」

と私は言った。

言うことによって生々しさをごまかす作戦だった。

「パララパッパッパー」と言う効果音をへびくんが言った。


「よし、手にいれた!自然にね!自動にね!!」

とへびくんが言いながら、鎧を手に入れた。

明らかに手動で引き剥がしていたが・・・。


「よし、妖精っち!これと引き換えに、お菓子もらってきて!」

「わかりました師匠!行ってきます!!」

と妖精くんが元気よく飛び出した。

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