第十話『妖精』

「じゃあ、フェアリーを探しにいこっか!」

とへびくんは微笑んだ。


私たちキマイラは魔王になるために、フェアリーを探すことにした。


「フェアリーってどこにいるんだ?」

ライオンが皆に質問した。

彼はサブカルチャーに詳しくないので、質問が単刀直入でとても話が進みやすい。


「うーん、湖?」

と私が、その質問から考える。

妖精が一杯いる場所?


私達が知っている、映画とかの妖精のイメージは、冒険者の横について、いろいろアドバイスしてくれる感じだから、たくさんいる村みたいなのは、あまり出てこない気はする。


その中で、妖精の村みたいなものがないか思い出してみた。


「綺麗な湖、でキャッキャウフフと飛び回っているイメージがあるわね」

と私は思い出す。


「そうだね、水の綺麗なところにいるイメージはあるよね」

とヘビくんも同意した。


「ホタルみたいなもんか」

とライオンが言う。


「ああ、なるほど、同じ感じかも!」

ざっくりした理解だけど、全然外してないと思う。

多分似た理由で湖に集まっているんじゃないかしら。


「じゃあ、湖畔を探しに行ってみようか!」

とへびくんが提案して、私たちは、湖に向かった。

私たちはすでに、森のような場所にいた。

湖はそこに隣接しているのではないかと探しまわった。


しばらく歩き回っていると湖をみつけた。

二人は、歩行機能はないので、すっかり私にまかせて

ずっとおしゃべりしていた、右だ右、とか、あ、左かも、とか・・・


女子高生が完全にタクシーのドライバーとして扱われていた。


だけど、その労働はちゃんと報われたの!


そう!

湖にはちゃんと妖精さんたちがいたからだ。

おおおお!ほんとにキャッキャウフフしている。


「いたいた!かわいい〜!私もあそこに加わりたい!!飛び回りた〜い!!」

と私は目をハートにしていた。


「ねえねえ、私もいれて〜」

と私は、心より先に体が動き出していた。



「あ、馬鹿。いまのお前は妖精じゃねえぞ」

とライオンが言う。


そう。

今の私は、妖精でもないし。

誰もが気を使ってくれる花の女子高生でもない。


ヤギだ。


しかもわりとリアル方面の。

アルプスのアニメにいる感じでもない。

ヘビーメタルの儀式に使われがちな方のヤギだ。


「魔物が出たぞ〜!!」

私をみつけた、とても可愛らしい、妖精さんがそう言った。


「のおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

私は叫ぶ。


「そうなっちゃうよねぇ」

「そうなるな」

男子たちが深く頷いた。


そう、私たちは『キマイラ』。

上級モンスター。


「なんてこったい!!一網打尽にすると思われた!!」

と私は叫ぶ。


「思われたよね」とへびくんが笑う。

「思われたな」とライオンが気だるげに言う。


「がーん!どうしてこうなった!!」

と私は叫ぶ。


一通りいつものやりとりをしていると、光が目に入る。

ふわふわ浮いている。

そして、その光は喋り出した。


「君たち、ちょっと変わってるね?」

そう、一人の妖精さんが話しかけてきた。

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