汚れた子
とらもにか
第1話 魔女が消えた日
その昔、この世界には魔女と悪魔が存在した。
人間とは異なり両者とも強力な魔力を操ることができ、前者はその力を人間の為に扱い人間もまた魔女を慕っていた。
しかし、後者は強力な力を自らの欲望の為に費やし時に人間を襲うこともあった。もちろんそんな悪魔は人間たちから嫌われていた。
ひとつ、魔女と悪魔、そして人間の間に犯してはならない掟があった。
それは、魔女は人間と、悪魔は魔女と、そして人間は悪魔との間に決して子供を授かってはいけないということ。逆もしかり。
しかしこの掟に逆らう者は少なくなかった。
子を身ごもった女は身を潜め人目がない場所で子を産みそして育てようとした。
しかし世間の噂とは早いもので、情報を得た国の支配下にある看取り場の
看取り場とは別名「汚れ場」と呼ばれており、魔女と人間の間に生まれた子、悪魔と人間の間に生まれた子、そして魔女と悪魔の間に生まれた子供たちが収容され、ひっそりとその生涯を過ごす場所である。
そして汚れ場に引き取られた子供たちは世間から「汚れた子」と呼ばれた。
看取り場での生活は子供たちにとって決して良い暮らしではなかった。
学ぶ場も与えられず、奴隷のように、毎日こき使われ、寝床でさえも床に草敷を敷いただけのもので、食べ物は一日二回、朝と夜、豆の入ったスープだけだった。
そんな生活に耐えきれず、脱走を試みる者もいたが、外に出たが最後、生きて戻ってくる者はいなかった。
中には強い魔力を生まれ持った子供もいた。魔法で暴れて逃げようとするが、幼いうちに強力な魔力を使ってしまうと、コントロールできないまま力尽きてしまうのがほとんど。
ただ一人を除いては。
名をホーペという。母親が魔女で人間の父親の子供で、生まれたその日、両親と引き離され18歳になるまで看取り場で育った。
ホーペは優れた鋭い判断力と生まれ持った強力な魔力で18歳にして、生きたまま、看取り場から逃げ出すことに成功した。
ホーペの母親は実に才能にあふれた魔女で名をイヴという。
彼女を求める男は多かった。
その理由のもう一つは、美しさにあった。
金色の長い髪に、整った顔立ち。人間の女が嫉妬するほどの美貌だった。
そして、その美しい魔女が恋に落ちた相手は、アダムという。ホーペの父親になる男だ。
アダムもまた育ちのいい青年だった。
ただ、アダムには知られてはいけない秘密があった。
―それは、アダムもまた魔女の子供(汚れた子)だったという事。
魔女の子供が生きて大人になるなど、その当時は到底考えられないことだった。
なぜアダムが生き延び、イヴに出会い、そしてホーペが生まれたのか…
そこには、魔女と悪魔の間に根付く、強い絆と契約が導いたものだった。
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