解答は『素晴らしい死』でした!
十目18
プロローグ『真実は誰も1つ』
「あはあ、良い天気になりましたね運転手さん。」
早朝の雨は何だったのでしょうか。開け放たれた車の天井からは満天の青空が、右を見れば緩やかにさざ波の立つ海が見えます。深く呼吸をするとそんな晴れやかな成分が心地良く全身に流れていくように感じられます。
西暦2068年。色んな技術は進歩しましたが、まだ人はこうして自然の恵みを感じられる生活をしています。子供の時にテレビや小説で見た機械で管理されたり、ロボットとお友達になったりする事にはまだ手が届いていないのです。
「まーた呑気な事言ってんなあ先生は!
そんなんだとまた折角の被験体とやらを見逃しちまうよ!」
改めて『自ら手を伸ばそうとしている事』について再確認しながら軽く背伸びでもしようとする私、とは対象的に慌しくガチャガチャと車のレバーを運転手さんは動かしていました。
運転手さんの言うように私達は観察中に『走り出していった』被験者さんを車で追いかけている訳なのですが…
「…このタイプは初めてかもしれませんねえ。」
「…まず本物の病人使ったのが今日初めてじゃなかったか先生?」
「うふふふ、そうですよ。
彼、どんな望みからこの道を走ってるのでしょう?」
今回の依頼人の彼は所謂不治の病を持っていて、一度も外に出た事がなかったそうです。そんな彼が残した『血の跡』を運転手さんが的確に辿って行く。
「あはは、遂にとても綺麗なビーチに着いてしまいましたねえ。」
目の前に眩しすぎるくらいの太陽に照らされた青くて深くて息をするのも忘れそうなほど広大な海が滑らかに地平線を引いています。
「あっはっはっはっはっはっはっは!
わああはっはっはっはっはっはっはっは!」
『私の発明を被った』被験者さんはそんな海の前で両手を広げて色々なところから鮮血を流して笑っていました。
そしてコロンと倒れました。
駆け寄って彼の顔をじっくり見ながら首筋を確認する。
「ふふふ、良い変身でしたね。きっと美しいサンプルになれましたよ。」
彼は死んでいましたが、私はいっぱい褒めました。
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