ごっつええハルヒ

@parkour

第1話

 これは短い期間だがものすごーく内容の濃かった夏休みの合宿が終わってSOS団の活動がないとある日のことだ。俺は久々の休日なのに早く目が覚めた…こんなに早く目が覚めるのは久しぶりだ…何かの前触れかもれんな…

そしてこういう時こそ宿題をやればいいんじゃないのか、などと頭の片隅でささやきかけてくる俺の良心がいる。全くその通りだ…だが、実際行動に移すことが出来る人間ならば宿題に苦労などしない…

しかも夏休みと言うのはどうせ暇なんだから長く寝ていたいとつくづく思うのだが太陽が昇ってくると部屋の気温が上がり全く寝れないってのが現実だ。

クーラー?一日中使えるやつが羨ましいぜ…まったくなんで自然界はこんな風に出来上がってしまったんだ?朝くらいもう少し涼しくなってくれてもいいじゃねぇか…俺は朝から大自然に文句を言いつつ布団の中から身を起こした。



「あぁ…暇だなぁ」

俺はさっきまで頭の中で思っていたことを口に出してため息をついていた…

でもやっぱ夏休みはいいよな…時間が有り余っている…

だが、あいつと知り合ってからはいつの間にか夏休みも終わりってことになってるよな…それだけ充実しているってことなんだろうが。



ピリリリリリ

みろ、言わんこっちゃない…やれやれ、せっかく普通の夏休みを心行くまで満喫できると思ったのに…さっそくハルヒ団長様からの集合のお電話だ。

「ちょっとキョン暇だから駅前の喫茶店に集合ねっ」

ガチャっとハルヒは自分の名前すら名乗らずに電話を切りやがった…電話の仕方を一から覚え直したほうがいいんじゃないか?

…やれやれ、なんて野郎だ。


まぁ俺はどのみち暇だしSOS団のメンバーとつるんでいるのも悪くないから行くとするか…ハルヒ達といたほうが夏休みが充実することは間違いないんだからな。

それからすぐに準備をして今までの最高記録を塗り替えるほどのスピードで駅前に向かったはずなんだが…何故かすでに全員集合していた。何故だ…なんでみんなそんなに集合が早い…みんなそんなに暇だったのか?それか事前に集合するってことを知ってたのか?



「遅刻!罰金!」



「全くキョンは団員としての心意気がたりんねん!!呼ばれたら即来ないとあかんじゃないの!!」

これでもすぐに家を出て急いで来たほうなんだがな…それでハルヒ?なんでそんな妙なしゃべり方してるんだ?関西弁と標準語が混ざったみたいな感じは…

「さっきここに来る途中にものすごく関西弁でなまってる人がいたのよ。それで思ったの!!あたし達も関西弁を使ってみたら面白いんじゃないかって。」

だからそんな喋り方になってたのか…

でもまたなんだか唐突な思い付きだな…いや、いつものことか?

しかしこいつらが関西弁か…面白そうだな。 

俺は少なからずわくわくしていた。いったいSOS団がどんな感じになるかをな。




その喫茶店をいつも通り俺のおごりで出た後から実際に関西弁を使ってみることになった。


「お…おいハルヒ、こんな感じでいいんか?」

「まぁいいんじゃないの?なかなか様になってるわよ?」

古泉が少し苦笑いしながら

「これはまた……いやさすがは涼宮さんなかなかおもろいことを思いつきましたね。」

おい、古泉お前はなにか違和感がある。

「ふぇ~、どうすればいいのか分からないですよぉ」

朝比奈さんは関西弁のことを全く分かっていないご様子。

「…ユニーク」

…長門、まったく変わってないんじゃないのか…




「…発音が変わってん…」

長門がこちらをじっと見つめながら言った。

…長門、正直面白すぎるぞ。

まぁ、色々な意味で雰囲気が変わった気がする。

「さぁ今から市内探索やんで~」

ハルヒが言った。なんかお前は違和感がないな。もとから使ってたって感じがするぞ?

「でしょ?なんか自然と口から出てくんねん」

やはり全く違和感がないな…

そして俺たちはそのまま市内探索に出た。

「あ、あの~今日のメンバー分けとかは…?」

朝比奈さんが遠慮しがちに聞いた。

「今日はそのまんま5人で行くわよ!!っていうかみくるちゃんしっかり関西弁使いなさいよ。」

ハルヒは半分関西弁の口調で答えた。

あのハルヒも時折変な訛りになるようだな。

「無理ですよぉ~。」

朝比奈さんがオロオロしている。

「ま、まぁいいやんか。」

俺もぎこちなく答えた。






「よぉ、キョンこんなとこで何やってんだ?」

探索って言うより散歩をしているとよりにもよって谷口と国木田に出くわした。

俺が何か言い訳じみたことを言おうとした時

「そうだ!!谷口、国木田あんた達も関西弁使いなさいっ!!」

ハルヒがいきなり言った。

「おいちょっと待てよ。なんで関西弁なんか使わなきゃいけねぇんだ?」

「えぇやん!!やるやんな?」

ハルヒが関西弁で無理やり返事を求める…

「ま、まぁいいけどよぉ…」

谷口は関西弁ハルヒの勢いに押されたのかしぶしぶ了承した。国木田はもとからやる気だったみたいだ。

「で?どうしたらいいんだよ?」

「関西弁を使えばいいのよ。簡単でしょ?」

そういうお前も出来てないぞ?




そんなこんなで探索が終わった。

いつものことだが特に新しい発見とかっていうのはなかった。

いや、新しい発見はたくさんあったか…?

「明日からも関西弁使うわよっ!!とりあえず明日はまた喫茶店の前に10時に集合。分かったわね?」

ハルヒはさも当然かのように言った。

「それって俺たちも行かないといけないのか?」

谷口が聞いた。

「当たり前じゃない。あんたそれでも一応SOS団団員なんだからっ!」




俺は家に帰ってからも関西弁で少し喋ってみることにした。

「ただいま~」

「あ、キョンくんおかえり~」

はぁ、妹よいつになったら俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれるんだ…“キョンくん”って言うのはいい加減やめてほしい……おっとそれは決して俺がシスコンって意味じゃないぞ?

「ご飯まだなん?」

俺はごくに自然に…本当に自然に言ったつもりだった…でも妹が

「うわっ。キョンくんが関西弁使ってる。」

妹は笑いながら言った。それにしても“うわっ”はないだろう…

俺は少し落ち込んだ…




そして風呂に入って寝る準備をした後に少し関西弁について調べたりしようとしたが、シャミが膝の上にのっそりとやって来たので少しだけ戯れてから布団に入った。

俺はそれからすぐに眠りに落ちた。







「キョンくん起きて~」

妹がいつもの殺人ダイブを決めてきた。朝一からこの攻撃はやばい…俺は朝っぱらから腰をさすりながら起きた。

「もうちょいマシな起こし方はないんかい………ん!?」

俺は重大なことに気づいた。俺が関西弁をしゃべっている?

「…これはどういうことや…」

1人で少しの間苦悩していると電話が鳴った。その電話は古泉からだった。こいつから電話ということは何かあったんだな…

「もしもし…」

「もしもし…そっちはどないなんですか?」

「ちょ…古泉お前も関西弁になってんじゃねぇか!!」

「そうねん…朝起きたらこうなっとってまして…」

なんだこれは?大変というかただのお笑いと言うか…まぁ古泉はダメだ…似合ってない。

やっぱりこれはハルヒが望んだことなのか? 俺達がちゃんと関西弁を使ってしゃべらなかったからか?

「涼宮さんは昨日、関西弁を使ったのがおもろくてこうなればいいと願ったんですよ。」

関西の古泉(命名俺)が言った。

「やっぱそうなんか…ったくハルヒは迷惑やな。」





それから俺は朝ごはんを食べながら考えていた…どうしたら元の世界に戻れるのか。





部屋にもどったころに長門から電話があった。

「なんや、長門?」

「…………」

長門は無言のままだ…

「どうしたんや?」

そしてようやく長門が口を開いた。

「これは、そこまで危険なことやない。でも元に戻せるんはあなたしかおらん。」

俺はつい笑ってしまった。

「スマン、長門。お前の関西弁が面白くてな……それで?解決法はあるんやんな?」

「それはあなた自身が分かっとるはず…」

とそれだけ言って電話が切れた。


…もしかして長門は自分が関西弁でしゃべってるところを聞かれたくなかったのだろうか?

そして俺はとりあえずハルヒからの電話を待っていた。どうせあいつのことだから集合って電話がかかってくるだろうからな…





案の定それから10分もしないうちにハルヒから電話があった。

「ねぇキョン、分かっとるやんな?10時に集合よ。間に合うように来ないと死刑やからな!!」

そんなことは言われなくても分かってるよ…一番身をもって感じているんだからな。

というか…やっぱりハルヒも関西弁になっていた。俺はそれからすぐに家をでて駅前に向かった。まぁまだ集合時間の30分前なんだがな…


俺はチャリを止めていつもの喫茶店に向かった。 その時にはすでに朝比奈さんと長門とハルヒが来ていた…一体何時に来てんだ?

そういや古泉がまだだな…あいつが俺より遅いとは珍しい。

みんなで適当に雑談していると遠くのほうに古泉の憎らしい微笑が見えた。その横には何故か鶴屋さんがいるじゃないか!!

「やっほー。みんな早いなぁ。」

遠くから鶴屋さんが叫んだ。やっぱり元気なお方だ…だが何で関西弁なんだ?


「来る途中で出会ったんですよ。」

古泉は何故かこっちを直視しながら言った。

「なんで関西弁使ってるんですか?」

俺は聞いてみた。

「にゃははは。キョンくんの関西弁めがっさおもろいなぁ……朝起きたらなんでかこうなっていたんだよ~」

“めがっさ”は関西弁でも“めがっさ”なんですね。っていうかなんで鶴屋さんにまで影響が及んでいるんだ?

「これは涼宮さんがSOS団全員にと望んだか……」

このままだとやばいことになりそうなので…

「おい、古泉顔が近いぞ。息を吹きかけるな」

「おっと、すんません」

やはり古泉の関西弁はものすごい違和感がある。俺はみんなには聞こえないように古泉にささやきかけた。

「これはどうやったら元にもどるんや?」

「ふふっ…いいやないですか。僕はもう少しくらいならこのままでもえぇと思いますよ。」

古泉はちょっと微笑んだ後にそう言った。


別に世界の崩壊とかはなんだろ?ならいいじゃねぇか…ハルヒがそれで満足するなら俺はどこへでもついて行ってやるぜ。



そういや谷口と国木田がまだじゃねぇか…何やってんだ?遅刻したら死刑になっちまうぞ?

あいつらはハルヒの恐ろしさをわかっててやってるんだよな…財布がすっからかんになるぞ…

俺がそんなことを考えていると集合時間の3分前に谷口と国木田が来た。

「遅いねん、あんたたち!!ホンマやったら死刑よ?死刑!!」

ん?おいハルヒ、そいつらにおごらせるんじゃないのか?

「まぁおごりだけは勘弁したげるわ。財布がかわいそうやからな。」

おいおい、俺が遅れてきたときには財布のことなど考えもせずに食いまくるくせに…もうちょっと俺の財布も気遣ってやってほしいものだ。

「いいじゃねぇか。集合時間には間に合ってるんやし…」

谷口が言った。



結局今日のメンバーはと言うと…俺、ハルヒ、長門、古泉、朝比奈さん、鶴屋さん、谷口、国木田だ。それでハルヒは今日は3組に分かれて市内探索をすると言い出した。

はぁ…やはり市内探索はやるんだな。やれやれ…


まぁやるとしたらくじ引きは大事だ!!谷口と一緒になってはたまらんからな…

俺は少し祈ってからくじを引いた……



そしてメンバーはと言うと…俺、古泉、長門だ…古泉と一緒か…まぁいい。この三人だと色々と話しやすいしな。それに聞きたいこともあるからな。

谷口と国木田はと言うと男二人だ…それもそれで疲れると思うがな…

そしてもう一組のハルヒ、朝比奈さん、鶴屋さんはハルヒと鶴屋さんがものすごいハイテンションで朝比奈さんが付いていけないという状況だ。

「とりあえず探索するわよっ?何か見つけてこないと死刑やからな」

と言ってハルヒと鶴屋さんは元気よく駆けて行った。朝比奈さん大丈夫か?

谷口と国木田はもとから探索などする気はさらさらないらしい。早速どこ行くか話し合っている。

俺らも適当に町をぶらぶらすることにした。別に図書館でもよかったんだが…長門が行かなくてもいいと言ったからな。

「なぁ、長門?この状況は別に俺達が率先して直さないといけないって状況じゃないんか?」

「別にどないもない。このまま数日経てば自然に元に戻る。」

それならもう少しみんなの関西弁を使うところを見れるってわけか…と俺が1人考えていると

「………」

長門が無言のまま見てきた。若干怒っているような照れているような表情になっているのは気のせいか?

「ふふ…あなたもなかなか…」

なんだ古泉その意味のありげな微笑みは…

まぁそのまま長門と古泉としゃべりながら町をぶらぶらしているとハルヒから電話がかかってきた。

「ねぇ、あんたたち今何してるん?もしかして遊んでるんじゃないでしょうね?」

やはり勘の鋭いやつだな…さてなんて言って切り抜けよう…

「いや…ちゃんと探してるって。そっちこそどないなんよ?なんか見つかったんか?」

俺は聞き返してやった。ハルヒは少し悩んだような声をだしたあげく…

「何も見つかってへんわ……まぁえぇわ!!とりあえず喫茶店に集合っ」




ハルヒは喫茶店に集合したときに今日の探索の結果を聞いたがどの組も反応がなかった…まぁそんな簡単に不思議を見つけてきたら驚きを通り越して尊敬してしまうぜ。

谷口と国木田はまったく探す気がなかったのがハルヒにばれてたのでかなりヤバイ感じになっていた。まぁあいつら2人だから別にどうでもいいんだがな…

朝比奈さんはと言うともう疲れ果てて喫茶店の机に突っ伏してしまっている。大丈夫なのだろうか…まぁ俺も正直言ってへばっている…なんせ夏真っ盛りだしな。

鶴屋さんは元気そうにハルヒと話している。

…実は鶴屋さんも人間離れしてるんじゃないのか!?

などとボケッとしなが思いふけっていると、

「ちょっとキョン、話聞いてるん?」

おっとすまねぇ…全く聞いてなかった。

「ったくボケッとしてるんじゃないわよ。これは大事なことやねんで!!」

大事なこと?何するんだ?

「今日はこんなにたくさん集まってるんやしみんなで何かやりましょっ!!」

なんかハルヒが言う“何かやりましょっ”っていうのはものすごい恐ろしい感じがするのは俺だけか…だが谷口と国木田もいるし大丈夫だろう…



それからみんなで昼ごはんを食べいったん俺の家に集まった…なんで俺の家になんかに集まったんだよ?

「さて…カラオケ行きましょ!!」

な、何ぃ…カラオケだと!? カラオケを選んだのは俺をいじめるためか?だめだ…カラオケに友達と行っていい思い出が見当たらない。といってもここ最近行ってないからどうなってるか…だな。

だがしかし…ハルヒや鶴屋さんなどの歌声が聞けるってのも捨てがたい…ここはついて行くべきか…俺が1人で必死に葛藤していると谷口がささやきかけてきた。

「おい、これはチャンスやでキョン。朝比奈さんとお近づきになれるチャンスや!!」

「…おい谷口、重大なこと忘れてへんか?ハルヒがおるんやで?それでも朝比奈さんに手を出すって言うんか?」

「…忘れてたぜ…まぁいい。俺のカッコいいとこを見せるチャンスなことは間違いないんやからなっ!!」

ホントお前は凄いよ…なんでそこまでテンションあげれるんだ?俺はあまり行きたくないな…

…下手なことがばれたらハルヒになんて言われるか…考えるだけでも恐ろしい。ついて行って歌わなくていいように適当に話を流そう…よし、これならいける。




そしてカラオケBOXに到着した…ダメだ、なんで緊張なんかするんだ?

それに部屋割りはどうするんだ……このままいくのか!?



さて俺らはみんなで同じ部屋に入った。そして飲み物などを注文した後にハルヒが歌をうたう順番をくじ引きで決めるといいだした。

…ここでハルヒが望んだなら俺が一番先に歌う確率が高い…それだけは勘弁願いたいぜ。


俺は心のそこからハルヒが望まないことを願った。 そしてその願いは叶った、そして一番はハルヒが歌うことになった。よかった…一時はどうなることかと思ったぜ。

そしてハルヒは少しの間本をめくったりして曲を探していた。

「これにするわ!!」

といってハルヒがリモコンのボタンを押した。

少ししてから音楽が流れ始めた。ちょっとロックが効いたような曲だ…まぁハルヒには似合ってると思うがな。

やっぱりハルヒはなんでも出来るんだな。俺もそれくらい上手く歌いたいよ…それにしてもお前歌手目指してもいいんじゃねえか? 俺は本気でそう思うくらいハルヒの歌に聞き入っていた。周りのみんなも手拍子すらせずに真剣に聞き入っている。

そして5分ほどでその歌は終わった。俺はこの5分が結構長く感じられた…



「さぁ次は誰が歌うん!?今なら希望聞くわよっ!!」

今ならってなんなんだ?もしかして希望がなかったらまたくじ引きなのか?


「次はあたしが歌うにょろ~」

と鶴屋さんが元気よく立ち上がった。

よかった…これでまた俺は歌わなくてすむな…

「上手く歌えるか分からんけどいってみるよ~」

鶴屋さん曰くカラオケは初めてらしいが…鶴屋さんはスポーツでもなんでも出来るハルヒと同じ万能タイプだし、多分歌も上手いだろうな。

そして鶴屋さんは番号を入れて歌いだした……俺の予想は的中した、やはり上手い…声が透き通っているかのように耳の中、いや脳の中まで染み入ってくる…これはかなり凄い…って俺は何音楽評論家みたいなこと言ってんだ…俺は自分で言ったことに赤面した。

鶴屋さんは何かジャズ系の歌をうたっている。なんか聞いたことのある曲だな…なんだったかな?

俺がこの曲の曲名を思い出そうと悩んでいる間に鶴屋さんは歌い終わった。


さぁ次は誰が歌ってくれるんだ?

俺は2人の歌があまりにも上手かったので完全に聞くだけの姿勢に入っていた。

「ちょっとキョン、あんたもしかして歌わん気?そんなのは許さないわよ。」

やはりハルヒが気づきやがった。なんで気づいちまうんだ……みんなの視線が俺に集まる。おい谷口、そんなニヤニヤした顔でこっちを見るな!!古泉もだ。

俺1人で歌うと今まで流れていた空気が止まることは目に見えている…ここは誰かにデュエットを頼むしかないのか……もしそうするなら誰がいい…谷口か?いやダメだ、アイツの歌唱力は俺と変わらないはずだ。古泉はダメだな…どうせアイツはカラオケぐらいそつなくこなしやがるからな。

国木田あたりはどうだ……

「ったく速く歌いなさいよっ!!」

ハルヒが少し怒ってきた。くそっ、もう聞くしかないな…


「ん、あ~えっとだな…」

「なんよキョン?速よ言いなさいよ!!」

「今言おうとしただろ。まぁえぇ、俺は正直言うと歌がちょっとばかし下手や…だから誰かと一緒に歌えばマシやと思うんや…そこで誰か一緒に歌ってくれへんか?」

言った…言っちまった。さてこれはどうなることやら…っとさっそく谷口がきた。

「おいキョン、お前自分が下手やっていうことを逆手に朝比奈さんと一緒に歌おうってのか?」

「待て待て、別に俺は朝比奈さんを指名したわけやないやろ。俺は別に誰かと歌えればいいんや。少しでも俺の下手さが隠れるようにな。」

正直俺は谷口にそのことを言われたから気づいた。

だがその時にはすでに時遅し!! やはりというかなんというか…ハルヒが言ってきた。

「しょうがないわねぇ…あたしが一緒に歌ったげるわよ!!感謝しなさいっ!!」

「別に俺はお前に歌ってくれと頼んでへんけどなぁ…」

俺はハルヒに聞こえないように言った。

「んじゃ何を歌うんだよ?」

「そんなのあんたが決めなさいよ!あたしは一緒に歌うだけなんやから」

それもそうだ…だが何がいいかさっぱり分からん…俺は音楽とは程遠い生活をしてるからな。言っておくが貧乏ってわけじゃないぞ?俺がただ音楽を聞かないだけだ。

「ならこの辺でいいか…」

俺は番号を押し曲を決定した。

「なんかイマイチぱっとせん曲ね~」

ハルヒがボソッと言った……聞こえてるぞ。 俺が選んだのは今カラオケに来ているメンバーで知らないやつはいないだろうと言うくらいメジャーな曲を選んだ。

…ハルヒと歌ったのはちょっと失敗だったか……ハルヒが上手すぎて俺がさらに下手に聞こえる。でもなかなか歌っていると楽しい…カラオケってなかなかいいもんだな。谷口が爆笑してるのが気になるが…

そしてやっと歌い終わった。ふぅ…なかなか疲れるもんだな。

「キョンは勉強も出来ないけどカラオケも出来ないのね」

ハルヒが軽いため息をつきながら言った…俺はそこまで下手くそだったのか?

まぁいい、これで俺の番は終わった。

次は朝比奈さんが歌うらしい…この人の歌声はどうなんだ…


「ふぇ~、何を歌ったらえぇか分からないですよ~」

朝比奈さんが困った顔で言っていらっしゃる…朝比奈さん、なかなか関西弁は似合ってますよ。にしても何を歌うつもりなんだ?

未来人だから現代の曲とかは知っていないんじゃないのか。

「みくるちゃんはこれを歌いなさい。」

ハルヒが勝手に曲を選んだ…もう少しいい曲はなかったのか? ハルヒが選んだのはレゲエな感じの曲だ…こんなの歌えるわけないだろ。


朝比奈さんはオロオロしながらだったがとりあえず歌い終えた。

…というか歌詞を読み終えた、が正しいか。

「ものすごい疲れました~」

と言って椅子に沈み込んだ。




それからは谷口、古泉、国木田と言う順に歌っていった。

ついでに言っておくが、谷口ははっきり言って下手だった…あれじゃ俺と変わらないぞ。 古泉はそつなくこなしやがった…ったくいけ好かねぇやろうだ。 国木田はなんというか本当に普通だった…まぁそこは予想の範囲内だったがな。


そして最後に長門が歌うことになった。

長門が歌った曲はバラード…とても似合っているんだがな…音程は外れていないんだが感情がこもっていない気がする。

「有希、もう少しなんていうんかな…感情みたいなの表現してみなさいよ」

「……これでもやってるつもり」

長門が静かに答えた。


「ならしょうがないわ。」

ハルヒはちょっと落ち込んだようなそぶりを見せた。

これで全員歌ったんだな…俺はそう思いながら時計を見た…もう夕方じゃねぇか!!

「んじゃこれでお開きにするっさ!!」

鶴屋さんが言った。 ふぅ、これでこの長い長い一日ももう終わりだな…ホント充実した一日だったな。っていうかこの関西弁はどうなるんだ?

「これは涼宮さん次第やな。これで満足したのなら明日には戻っとるやろうと思います。」

古泉がささやきかけてきた。こいつ俺の心が読めるのか?





「今日はこれにて解散っ!!」

ハルヒが高らかに言った。

そして俺たちはそれぞれの帰路についた。

古泉は鶴屋さんと一緒に、谷口はやはり国木田と一緒に、朝比奈さんはビクビクしながらも長門について行った。俺はというとハルヒと二人で帰っている。

「ねぇキョン?なんか今日みんなやけに関西弁使ってたわねぇ」

ハルヒが不思議そうに尋ねてきた…お前がそう望んだのだろう。まぁ実際はそんなことも言えるはずはなく

「そうやな…」

とだけ答えた。するとハルヒはこっちを見て

「みんな実はあたしに見つからんようにこっそりと練習しとったんやな!! 感心、感心」

とハルヒは自己満足かのように微笑みながら言った。




そしてハルヒと色々しゃべっている間に家に着いた。

「ただいま~」

「あ、キョンくんおかえり~。ハルにゃん達は?」

こいつもSOS団と少なからず関わっているのに関西弁になってないな…と今頃気づいた。

「もう帰ったで。」

と俺は妹と軽い会話を交わしてから部屋に入った。

俺はすぐにベッドに倒れこんだ…今日はなんだか騒々しい一日だったからな。それからすぐに睡魔が襲ってきたので俺は晩飯も食わずに眠りに落ちた…




「キョンくん、起きて~」

すでに日常になっている妹の殺人ダイブが決まった。

「ふぅ…もう少しマシなおこしかたにしてくれよな……あ、関西弁が治ってる。よっしゃぁぁぁ!!!」

と俺が叫ぶと

「うわ~、お母さんキョンくんがおかしくなっちゃった~」

妹が部屋を飛び出し下に下りていった。

やはりハルヒはあれで満足だったんだな…やれやれ、本当に人騒がせなやつだぜ。


俺は軽く朝飯を食ってから家を出ていつもの集合場所に向かった。まだ集合時刻の1時間前だけどな…

そして行く途中で待ち伏せしていたと思われる古泉が現れた。

「おや、おはようございます。あなたがこんなに早いとは…」

なんだ?俺がいつも遅刻ばっかりしているような言い方だな…これでも一応集合時刻には遅れたことは一度もないんだぜ。

「俺にもこんな時ぐらいあるさ。これでもう関西弁は使わなくてもすむんだな?」

「はい。涼宮さんはあれで満足したのでしょう。多分ちょっと自分で使ってみたかったのですよ。」

古泉ももとのしゃべり方に戻っていた。やはりそっちのほうが似合ってるな。俺と古泉はしばらくそこでしゃべっていた…

そして俺が古泉と一緒に集合場所まで行くと、すでに3人とも来ていた。

「遅いっ!!罰金!!」

ハルヒが遠くからそう叫んだ。そんなに叫ばなくても聞こえてるぞ。罰金か、まぁいい今日は古泉もいることだしな。

「あ、古泉君は副団長だから罰金はないわよ。」

な!?そんなのありかよ…お前は俺の財布からどれだけ金を取れば気が済むんだ…


そしていつもの喫茶店で俺のおごりで…そこでハルヒが

「今日もカラオケ行くわよっ!!」

と宣言しやがった!!

「な、また行くのか?」

「そうよ、あんたがあまりにも下手だったからね。特訓してあげるわ!!」

なんだと…ハルヒにカラオケを練習させられるというのか?それだけは勘弁だぜ。

「これは団長命令よ!!絶対服従なんだからっ!!」

そして俺は強制的にハルヒのレッスンを受けることになった…







はぁ…やれやれ。

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