冬に咲く花、春を待つ空

なつる

霧月

 四季折々の花が咲き乱れるこの美しい庭園が、時々監獄のように思える。

 高い塀、刺々しい鉄条網、ところどころに立つ銃装備の兵士──内部からの脱走を阻止するのか、外敵の侵入を防ぐのかの違いだけであって、実のところは監獄と何も変わらないのではないか──


 クリスは立ち上がり、膝についた土を払いながら思った。

 もちろんここは監獄ではなく、クリスは自ら望んでここに住んでいるのだが、常に誰かの視線を感じながら暮らすのは慣れているとはいえ息苦しさを覚えることもある。

 そんな時、クリスはいつもこの庭園に出て花を愛でていた。観賞するだけではなく、ワンピースの上からエプロンをかけて、自らスコップを持ち土を掘り返して泥まみれになって作業するのだ。

 艶めく長い黒髪が土埃で汚れるたびに、使用人から苦言を呈される。

『そんなことは庭師がいたしますから、どうかお止めになってください』

 だがガーデニングはクリスの数少ない趣味の一つで立派な息抜きなのだ。止めろと言われて止められるものでもない。

 隅から隅までじっくり見て歩けば一時間はかかるような大きな庭園だが、その小さな一角を自分専用の場所として確保してもらい、暇があればクリスはそこで土いじりをしている。


 今日もまたクリスは秋の花たちを可愛がるのに忙しい。

 コスモス、マリーゴールド、サルビア、ダリア。この辺はもう終わりに近い。これからの季節はシクラメンやプリムラ、水仙、椿などが咲き始める。

 雑草を抜き、枯れて終わった花殻を摘んでいく。若く瑞々しい手が土で汚れるのも厭わずに、黙々と手を動かす。時が経つのも忘れて、無心で花や土と戯れられるこの時間がクリスは大好きだ。

 遠くから空を飛ぶプロペラ機の音が聞こえる。空を見上げても機体は見えなかったが、晩秋の早い夕暮れがすぐそこに迫っていた。低い雲に覆われた夕陽が空を淡く染め、飛んでいく雁の群れを優しく包んでいるかのようだ。

 懐中時計を見ると時刻は四時過ぎ。そろそろ潮時だろう。


「クリス様! お茶の時間ですよ!」

 遠くから聞こえる高い声。侍女頭のエレナだ。

「わかったわ。今いきます」


 凛とした声で返事をすると、クリスは目の前の赤いダリアを一本切り取り、それから立ち上がった。

 切れ長の黒い瞳にすっと通った鼻筋。ダリアと同じ色の唇は彼女の芯の強さを感じさせる。その容貌は、かつてこのランバルド王国を作ったランド民族の在りし日の姿を髣髴させると評判だ。今はもう彼女のような純粋な黒目黒髪を持つランバルド人は数少ない。

 匂い立つような美しさの中に幼さをわずかに残す十八歳。

 白いエプロンを外すと、ベビーブルーのワンピースの裾が風に揺れた。近くの運河から流れてくる風は身を切るように冷たく、冬の訪れが近いことを知らしめる。小さく震えて、クリスは屋敷に向けて歩き出した。

 ふと背中が温かくなって振り返ると、雲の切れ間から陽が差し込んでいた。


「あ、天使の階段……」


 いくつもの光の筋が地上に向かって降り注いでいる。この美しい自然現象を天使が上り下りする階段に例えたという賢人には、本当に天使の姿が見えたのだろうか。

 まぶしい光に目を細めてみても、クリスにはその姿は見えない。

 少しでも期待した自分を自嘲気味に笑って、目を背けた──その時。

「えっ」

 光の中に黒い何かが見えた。

 鳥や飛行機の類ではない。あれは確かに人影……背中に何か背負っているようにも見える。

 まさか……天使?

 驚いたクリスが日の光を遮りながら凝視していると、その影は段々と大きくなってきた。こちらに降りてくるようだ。

 近づくにつれ、その姿がハッキリと見えてくる。


「……パラシュート?」


 大きなパラシュートにぶら下がった人間だ。ゆったりとした速度で時に旋回しながら、徐々にこちらへ向かってくる。

 白いパラシュートには大きなマークが書いてあった。内側から白と濃緑と藍色の同心円。雪と森と海を表したランバルド王国の国旗と同じ配色だ。それがランバルド軍の国籍マークであることはクリスも知っている。

 パラシュートが作り出す影が庭園を覆うほど近くなってようやく、衛兵たちが騒ぎ始めた。空からの闖入者に度肝を抜かれたのか、慌てた様子でバタバタと走り回っている。

 庭園の静寂を破るように、乾いた破裂音が響いた。誰かが銃の引き金を引いたのだ。

 呆然と眺めていたクリスはやっと我に返った。


「ダ、ダメ! 撃たないで!」


 クリスは監視塔の衛兵を振り返って叫んでいた。

 たとえ自分の命を狙う犯罪者だったとしても、目の前で人が傷つけられるところを見たくはない。それに自国のマークをつけ、天使の階段を下りてきたこの人物が悪人だとはどうしても思えなかったのだ。

 頭上の人物はどこか悠々として、空の散歩を楽しんでいるかのようでもある。先ほどの銃弾は当たらなかったようだが、自分が銃口を向けられていることを本当にわかっているのだろうか。

 カーキ色の飛行帽と襟にボアのついた革製フライトジャケットに身を包んだその人物は、どうやら男性のようである。ゴーグルで隠された目元はうかがい知ることはできない。

 あと数メートルで着地というところで風に流され、彼はクリスから離れた植え込みの中に着地した。いや、突っ込んだという方が正しいかもしれない。

 クリスが怖々近づくと、その男はしぼんだパラシュートを引きずったまま、躑躅つつじの枯れ枝の間に挟まっていた。枯葉にまみれ、天を仰いで微動だにしない。

 そんな彼を出迎えたのは、無数の銃口だった。幾重もの包囲網を形成した衛兵たちが、正体不明の侵入者を捕らえようと彼に銃を向けている。

 その中の一人──衛兵隊長のルストが、銃口を彼の目の前に突きつけた。


「貴様、何者だ。空軍の兵士か」


 枯れ枝の上に横たわる彼は、答える代わりに気だるそうに首を動かして辺りを見回した。まるで自分のベッドで寝ていたところを叩き起こされたかのような、そんな雰囲気だ。

 ようやく状況を把握したのか、彼はのそりと身体を起こした。枯れ枝をパキパキと折りながら、足を地につける。

 自らの足で立ち上がった男は馴れた手つきでパラシュートを外すと、身体についた枯葉を払い落とした。

 トリガーに指をかけた衛兵に取り囲まれていると言うのに、緊張感がまるで感じられない。ゴーグルを外して現れた藍色の凛々しい瞳には、穏やかな笑みさえ浮かんでいた。

 場違いともいえる悠然とした立ち居振る舞いに、ルストは苛立ちを隠さなかった。

「手を上げろ!」

 彼は逆らわず、それでもゆっくりと両手を顔の横に上げた。

「貴様、ここがどこかわかっているのか!」

 そう言われて初めて、彼は確かめるようにあたりを見回した。苦笑気味に目じりを下げたその顔は少年のようにも見えるが、多分クリスよりもずっと年上だろう。


「ここは……サヴォイア宮殿──冬宮殿でしょう?」


 柔らかく響くテノールの声。だが声に怯えた様子はない。彼は衛兵たちの間で呆然としていたクリスをまっすぐに見つめ、そして微笑みかけた。

 ドキリと高鳴る胸──彼の表情は、驚いて目を丸くするクリスを楽しんでいるようにも見える。大胆不敵──そんな言葉が似合う男だ。

「貴様……ここが離宮と知ってのこの所業か!」

 ルストは銃口を彼の胸に押し付け、小突いた。痛みが走ったのか、彼の端正な顔が微かに歪む。我に返ったクリスは思わず前に飛び出していた。


「乱暴なことしないで」

 ルストの前に手を差し出し、銃を下ろさせる。

「無抵抗の人間を傷つけるなど、私は許しませんよ」


 静かな口調の中に、有無を言わせない強さが滲み出る。だがルストはその役目上、簡単には納得してくれなかったようだ。


「し、しかし……この男は」

「彼を捕まえるのは、話を聞いてからでも遅くはないでしょう」


 クリスは彼を真正面から見据えた。決して背の低くないクリスでも見上げてしまうほど大柄な男ではあったが、細身のせいかそれほどの威圧感はない。

 諸手を掲げたまま固まっていた彼が、ゆっくりと手を下ろすのを待って、クリスは口を開いた。


「私はクリスティアーナ・ヘンリエッタ・ディ・フィオーレと申します」


 そう名乗ると、彼の顔にバツの悪そうな苦笑が広がった。まるでいたずらを咎められた子どもだ。おかしささえこみ上げてくる。

「あなたのお名前をうかがってもよろしいかしら」

 彼は──その顔から笑みを消し去った。背筋をピンと伸ばし踵を揃え、手袋をはめた右手で敬礼を捧げる。


「クリスティアーナ王女殿下──まずは非礼をお詫びいたします。私はランバルド空軍ヴェネト基地所属、ヴィート・エヴァンジェリスティと申します。階級は大尉。此度の不始末、いかような処分も重く受け止める所存にございます」


 彼の名を聞いた途端、周囲の衛兵たちがざわついたが、クリスにはさほど気に留めなかった。

「そんなにかしこまらなくても良いですよ。あなたが私の命を狙う不届き者でないのなら、何か理由があってのことでしょうから」

 そう言ってクリスが微笑むと、硬くなっていた彼の表情も少し和らいだ。

「殿下の温かいお心遣い、痛み入ります」

 彼は飛行帽を取り、セピア色の短い髪をかき上げた。軍人らしい精悍な顔つきだが、どこか華やかさがある。かしこまっていてもどこか飄々としていて、普通の軍人とは少し違う感じがした。


「で、エヴァンジェリスティ大尉。どうして空から降ってきたの?」

 素朴な問いに、エヴァンジェリスティは困ったように頬を掻いた。


「乗っていた飛行機が故障してしまいまして、飛行不能になりましてね。仕方なく飛び降りたんです」

「その壊れた飛行機は?」

「今頃向こうの湖に沈んでるでしょう。私は湖の上から風に流されて、ここに舞い降りてしまったというわけです」

「まあ」


 遥か上空を高速で飛んでいる飛行機からパラシュート一つで飛び降り、かつ空中で銃弾がそばをかすめていってもなお、平然と笑っていられるこの男はよほど度胸が据わっているらしい。

 今度はクリスが苦笑いを浮かべる番だった。


「次からは機体整備をしっかりなさってくださいね」

「申し訳ございません。大変なご迷惑をおかけしてしまいました」

「とにかく、ご無事で何よりです。本当にお身体大丈夫ですか?」

「丈夫だけが私のとりえでしてね。おかげさまでどこも痛くありませんよ」


 そう言うや否や、彼の大きな身体がぐらりとよろめいた。クリスは慌てて手を差し出し、彼の身体を支えた。


「やはりどこか打ったんじゃ……」

「いえ、単なる寝不足ですよ。昨日の夜なかなか寝付けなかったんです」


 弱々しく笑ったその顔が心なしか青ざめて見える。

 一瞬──瞳の藍色が、底の見えない闇のように見えた。その奥で微かに揺らめいて見える、深い深い絶望──


「殿下にこれ以上のご迷惑をおかけするわけにはいきません。どうかお構いなく。これにて失礼させていただきますよ」


 エヴァンジェリスティはもう一度敬礼を捧げ、クリスに背を向けた。自ら捕まろうというのか衛兵隊へと歩み寄るが、その足元はふらつきどうにもおぼつかない。

 衛兵が取るより先に、クリスが彼の二の腕を掴んだ。

「動いちゃダメです! せめて少し休んでお行きなさい」

 怒ったようなクリスと、目を見開いたエヴァンジェリスティの視線がぶつかった。

「殿下!」

 ルストが悲鳴に近い声を上げたが、クリスはあえて無視した。

「こっちに座って」

 エヴァンジェリスティを引っ張り、すぐ近くにあったガーデンテーブルとチェアのセットに強引に座らせる。一度言い出したら聞かない王女の性格を熟知しているのだろう。ルストは諦めたように首を振ると、衛兵隊を促して下がらせた。

 クリスは大声で叫んだ。

「エレナ! お茶を二つ、こっちに持ってきて! ブランデーも一緒にね!」

 優秀な侍女頭エレナはすぐにやってきた。紅茶のセットを銀のトレイに乗せて、後ろにもう一人、三段のケーキプレートを持った侍女を連れている。

 日暮れが迫り、東の空が徐々に濃紺のグラデーションに染められつつある。雲越しの柔らかい夕陽を浴びながら、アフタヌーンティーの用意は着々と進められた。

 クリスにはストレートティー、そしてエヴァンジェリスティにはブランデー入りの紅茶がふるまわれた。


「さあ、どうぞ召し上がって。気付け代わりですよ」


 終始あっけに取られていたエヴァンジェリスティは、クリスに勧められてようやく気づいたかのようにカップを手に取った。

 湯気と共に立ち上る紅茶とブランデーの芳醇な香りを胸いっぱいに嗅いだ後、彼はカップに口をつけた。


 黄昏時の奇妙なティータイム。二人は無言で紅茶をすする。

 言葉を交わさずとも、穏やかな時間がそこに流れていた。

 木々の葉が風にそよぐ音、テーブルに飾られた鮮やかなダリア、少し冷えた身体にじんわりと沁みこむ暖かさ──同じ場所で、同じ時間を共有したという、ただそれだけで何か通じるものがある──そんな錯覚すら覚える。

 青白かったエヴァンジェリスティの頬に赤みが差してきた。茜色の夕陽のせいだけではないだろう。

 彼は飲み干したカップをソーサーに置くと、一つ息をついた。


「宮殿に侵入して、殿下に助けていただいた上に紅茶までご馳走になってしまって……これはもう銃殺刑でしょうね」

「……そのわりにあなた、死ぬことは怖くないって顔してるわ」


 クリスはエヴァンジェリスティの瞳をまっすぐに見つめた。宵闇を映したかのような瞳の藍色は澄んで、先ほどのような深い絶望はもう見えない。代わりに見えた光は内に隠された強い意志のようで、どうにも捉えどころのない男である。

 彼は微笑を湛えて答えた。


「『ランバルドの宝石』と名高いクリスティアーナ殿下とご一緒にお茶を飲めたのですから、もうこの世に未練はありませんよ」

「まあお上手だこと」


 二人は声を上げて笑った。

 このエヴァンジェリスティという男、なかなかウィットに富んだ人物のようで好感が持てる。軍人といえば堅苦しいイメージしか持っていなかったが、こういう面白い人間も中にはいるらしい。

 庭園に灯りが点されたのを機に、エヴァンジェリスティが立ち上がった。


「殿下、ありがとうございます。これで心置きなく衛兵隊の尋問に付き合えます」

「大尉がここに降りてしまったのは、単なる事故でしょう? あなたに非はないわ」

「しかしそれでは彼らの面目が……」


 そう言って彼は、遠巻きにこちらを見つめている衛兵隊に視線をやった。この期に及んで衛兵隊の面目を心配するとは、優しいのか余裕があるのかよくわからない男だ。

 クリスは苦笑いを浮かべた。


「これ以上、事を荒立てるのは私の本意ではありません。この庭園で争いごとは起こしてほしくないの……ちょっと入口を間違ってしまったけど、あなたは私のお客様。そういうことにしましょう」


 またこの庭を剣呑な雰囲気にするくらいなら、多少のことには目を瞑って穏やかに済ませた方がいい。

「大事になる前に、ヴェネトの基地まで送って差し上げましょう」

 エヴァンジェリスティはそれ以上何も言わず、ただ黙って頭を下げた。


 クリスは車の手配を侍従に言いつけ、二人は連れ立って玄関に向かった。

「ここは本当に美しい庭園ですね」

 歩きながら、エヴァンジェリスティは目を細めた。


「冬宮殿のことは知っていましたが、中にこのような庭園があるとは知りませんでしたよ」

「今は私一人が住んでいるところだけど、かつては冬の王宮として、たくさんの人で随分と賑わっていたそうよ」

「この広い宮殿にお一人で? 国王陛下の住まう王宮もそう遠くはないのに……」

「お父様の周りは人が多くて。どうせ女王になったらあっちに住むことになるんだから、今のうちは住むところくらい好きにさせてもらいたいわ」


 そう言っていたずらっぽく笑うと、エヴァンジェリスティも意を得たりとうなずいた。


「一人といっても気心の知れた侍従や使用人がいるし、寂しくはないわ。それにね、私はこの庭が好きなの。ここは緑も綺麗だけど、雪が降るこれからの季節が一番美しいのよ」

「地上で見る庭園も綺麗ですが、空から見た花と緑と遊歩道のコントラストはまるで一枚の絵画のようで、なかなかにいい眺めでした。雪に染まった風景もぜひ見てみたいものですな」

「空から……」


 彼のように、大空高く舞い上がってこの庭園を見下ろしてみたい──クリスはそんな衝動に駆られた。彼が「一枚の絵画」と評した空からの眺めは、一体どんなものなのだろうか。

 この庭園を誰よりも愛していると自負するクリスですら見たことのない眺めを知るエヴァンジェリスティ。クリスは少しだけ彼に嫉妬した。

 玄関前のポーチにはすでに黒塗りの自動車が横付けされ、白手袋の運転手がドアの横で待っていた。見るからに威厳たっぷりな王室専用車を目にして、エヴァンジェリスティは一瞬たじろいだが、諦めたように後部座席の開けられたドアの前に立った。いつの間にかトランクにはパラシュートが押し込められている。


「殿下直々のお見送り、痛み入ります」

 エヴァンジェリスティはもう一度、敬礼を捧げた。

「私のような不埒者に対してのこのもてなし、殿下のお心の広さには感服いたしました」

「だって、天使様をぞんざいに扱うわけにはいきませんもの」

「天使?」

「いえ、こちらの話です。そうそう、今度いらっしゃる時は空からではなく門から入ってきてくださいね」

「ぜひそうさせていただきます」


 エヴァンジェリスティは車に乗り込むと、窓を開けて最後の挨拶をした。

「ありがとうございました。では失礼いたします」

「ごきげんよう。お身体に気をつけてね」


 頭を下げる彼を乗せた車は、黒煙を上げて走り去っていった。門を出るところまで見送って、クリスは息をつく。

 枯葉を巻いて吹くつむじ風のような男だった。静かな庭園を騒がしくかき乱していった彼だが、不思議と嫌な感じはしない。奇妙な来訪者との奇妙な出会いは、むしろ物憂いに沈んでいたクリスの好奇心を掻き立てるのに十分だったのだ。


 彼にまた会いたい──いや、またいつかどこかで会えるような気がする。

 いつの間にかすっかり日が暮れ、辺りは夜の帳に包まれている。夜空に輝く一番星を見つめて、クリスは微笑んだ。

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