僕らの夏はまだ終わらない

夜咲 蓮

プロローグ 出会いの日

季節は夏、ジメジメとした暑さと絶え間なく降り注ぐ雨が少年の緊張と不安を煽る。

傘なんて持っていない。

「天気予報では、晴れだったのにな……」

少年は1人携帯を握りしめ、ドアの前に立ち尽くしていた。液晶には父親からの短いメールが映し出されている。

すまない、先に行っててくれ。

それだけだった。

いつもそうだ。仕事が忙しくて大事な時は、いてくれない。

でも、今回ばかりは事の大きさが違った。

なにしろ、これから家族になる人達に初めて会うのだ。子供一人に任せるには荷が重すぎる。

「はぁ……」

あまりの身勝手さにため息がもれる。

もう慣れてしまったはずなのに。

「仕方ない。1人で行くか……」

少年は、重い重い一歩を踏み出した。

そしてまた、一歩、一歩と歩み出す。


こうして、少年−–−長谷川優の新しい生活が始まった。





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