12話 祖国戦争  序戦 -8「遊牧民族さんは弓矢が好き」

陣形。複数の人間さん達の力を纏めて、一定の戦闘力を編み出すために作られたもの。

ピィザ軍の兵士の皆さんの場合は、前方に全ての力を叩きつける横陣が採用されている。

しかし、今回の戦場では陣形なんて無意味だ。

まず、跳ね橋は5人を並ばせる程度の幅しかない。

この時点で、陣形の持つエネルギーはほとんど殺される。

残り少ないエネルギーも有刺鉄線の存在で、完全に殺されてしまった。

有刺鉄線のせいで前に進めない。仮に進めても肌をトゲトゲに切り裂かれて大怪我。

そこにデュラハン達が持つ速射重視の弓矢が突き刺さる。

エネルギーが殺され尽くした集団なんて、ただの的だ。


「うらぁー!死ねぇー!歩兵どもぉー!」

「ウスノロのゴミは屠殺だぁー!」

「ワルキュラっ!ワルキュラっ!」


短い矢が人体に刺さる。人間は死ぬ。

前進できない以上、槍を所持した部隊なんて無価値でしかない。

人間達にできる事は、せいぜい投石程度。補給が便利で惑星中の何処にでも落ちている石。

しかし、石では、デュラハン達が憑依している全身鎧を壊すような威力はない。


「ひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「後続の奴らぁー!くるなぁー!来たら死ぬぞぉー!」


数千人の人間が狭い場所で蠢き、射的の的。

逃げ惑う人間は跳ね橋の上で、同士打ちを繰り広げ、水堀へと人間を突き落とす。

デュラハン達はすかさず、有刺鉄線の向こうから弓矢を連続して撃ちまくり、屍の山を築き上げた。


「ここは貴様らの死地だ!ワルキュラ様の敵は有象無象の土のように死ぬのだ!」


叫んで矢を放ち人間を殺すデュー。そんなに彼に向かって叫ぶ人間が居た。


「そこの男!一騎打ちを申し込む!」


声の主は、高そうな銀色の鎧を纏っていた。(錆びやすくて実用に問題がある欠陥鎧)

デューは弓の照準を、その人間にすぐ向ける。


「我はピィザ王国ヤスガルン男爵領の三男――」


「よしわかった!死ね!」


放たれた矢が、鎧を貫通して、男の胸元に突き刺さる。

有り得ない。そんな驚愕の感情が死にゆく男を支配する。

普通、『一騎打ちって近接武器でやるよね?』的な意味で。


「ば、馬鹿なっ……!一騎打ちで弓矢だとっ……!」


「そこの人間っ!一騎打ちをしたがる割には話にもならぬっ!

死んであの世で修行しろ!」


「ひ、卑怯者めっ……!」


男は仰向けに倒れて死んだ。

デューは男の発言の意図がわからなくて悩む。

矢を次々と発射しながら考え込む。


(卑怯だとっ……!?)


騎士として侮辱された気分になった。

全く、卑劣な行いをしてないにも関わらず、デューは『雑魚』に卑怯と言われた。

人間を次々と仕留めながら、彼なりに答えを導く。


(……そうか、確かに今のは俺が卑怯だった)


デューは手に持っている短弓を見た。ダークエルフ技術班が開発した特別製の弓チンギス・カーン。

暗黒魔法を駆使すれば、ミサイルみたいに遠い敵を狙い撃ちして、矢に爆弾機能もつけられる。

魔法を使わない場合でも、連続射撃できて役に立つ。

恐らく、先ほどの騎士はデューの持つ『弓』を見て嫉妬し、卑怯だと罵ったのだろう。

そう彼は結論づけた。


「一騎打ちを申し込む!我はダイナゴン子爵領の十一男トマト・ピッツァ――」


名乗りをあげた騎士に、デューは矢を善意でプレゼントした。

すぐにその男も『ゆ、弓とは卑怯なりっ……!』と叫んで死んでいく。

やっとデューは確信できた。


(やはり、俺の弓の性能を見て嫉妬していたのかっ……。

ふ、三流の騎士どもめ。キサマらにはこの弓を持つ資格はない)


ノーライフ・オンラインの頃、魔法・近接戦闘武器・爆弾なんでもあり状態で決闘でやっていたから、常識が違った。

「我は公爵の甥の甥のヤン」

……こうして城門と跳ね橋の周りに、死体の山が築かれる事になる。

有刺鉄線は『お、見るだけで痛そうな針金だな』と、認識させる威嚇効果があるから、世界中の戦場で活躍する悪夢の針金なのである。

農場に張れば、農家の皆さんを苦しめる野生動物の被害は激減。

水場に有刺鉄線を引けば、野生動物を絶滅へと追い込む事もできる。

強制収容所にもぴったり。



……結局、この戦いで、ピィザ軍は五千人の死者を出し、三万人の人間が負傷する大惨事。

ワルキュラ軍は圧倒的な惨敗を喫した。



今回の被害



ワルキュラ軍 29万人が(太陽光で)負傷  

兵力 30万→1万人


ピィザ王国カイロン包囲軍  五千人が怪我。3万人は回復魔法で戦場に復帰。  

兵力 4万→13万五千人  


数字だけを見ると、ワルキュラ軍は壊滅した事になる。

勝利への道のりが険しい。

人間さんは、見知らぬ敵より見知っている敵(ピィザ軍)と手を組む生き物。

外見が骸骨だらけのワルキュラ軍は、常に勝利し被害を最小限に抑える事が強いられている。



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この話のコメントまとめ



http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Fusiou/c14.html


【小説家になろう】オリ主「内政チートをすると誰かに恨まれて酷い目に会うだって!?」NHK連続テレビ小説「あさが来た」

http://suliruku.blogspot.jp/2016/02/nhk.html

【内政チート】「冷蔵庫で食料を保存してチート」 香辛料の大貿易時代終了

http://suliruku.blogspot.jp/2016/02/blog-post_29.html



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デスキング(´・ω・`)勝ちました(キリッ

アトリ殿のおかげです。




ワルキュラ(´・ω・`)どうしよう!俺なら大阪城を攻略した徳川家康みたいに水堀なんて埋めちゃうし!

このままじゃ死ぬ!

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