第75話 三章 ラファエルの思い

「あれ!? 火っ!!」


クララはちょっとバツが悪いような顔で言った。


「大丈夫だよ。

 私が自分で点けた」


「えええええ。

 っいたたた」


驚いた拍子に肩の痛みが走ってかがみ込む。


そのときはじめて自分が丸裸であることに気がついた。


「あばばばばば」


慌てて毛布をたぐり寄せる。


「……見えた、よね?」


「もう看病してるときに散々見たが何か?」


「ひゃお」


ラファエルは恥ずかしくてに目線をあげられなくなった。


それでも気になっていることを懸命に尋ねる。


「……火、怖くなかった?」


「必死になれば、なんとかなった」


よく見るとクララは火から一番遠い場所に陣取っている。


「心配いらない」


「……でも」


「いまなら乗り越えられそうなんだ。

 任せて欲しい。寝てな」


「うん」


ラファエルはもぞもぞと布団の中に潜り込んだ。


無意識に寝台の下に手を伸ばして、ここがいつもの寝床でないことを思いだした。


「……これからどうするの?」


「さあな。

 お前はどうしたい?」


「倉庫に、戻ってもいいかな?」


クララは怪訝に眉をひそめた。


「戻ってどうする?」


「お母さんの手紙を……

 もう焼けて残ってないかもしれないけど……」


「ああ、そうか。

 しかし危険だぞ、

 私と一緒にいるところをハンターに見られてるんだ。

 見つかれば何をされるか……」


「うん。わかってる。

 でも探さないと気が済まない」


「好きにしろ」


「……クララさんはどうするの?」


「言ったろ。

 わかんないって。

 ただ私はあそこに戻って捕まるのは御免だ」


「そうだよね。

 でも僕も手紙を探しに戻るだけだから。

 戻ってきたらまた逢えるよね?」


「会ってどうする?

 別に一緒に行動する必要は無いんだぞ?

 私と一緒にいれば、またハンターに追われる羽目になる。

 ろくなことがない」


「そんなことないよ。

 それにみんなも探さないと」


「みんな?」


「マノンさんや、エレーナ、マリアンヌさんにエマだって」


クララは目を丸くした。

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