第40話 二章 熊のあわれ
ハンターが訪れた日から、半獣人(デパエワール)たちに対する団員の眼差しはより厳しくなった。
もちろんすべての団員が彼女たちを厄介者扱いしているわけではなかったが、とりわけ演者たちは自分たちの芸に自信を持っていた。
彼女たちがいることでこの劇団が見世物小屋のように言われることに普段から快く思ってない者も多い。
もっと単純に、信仰上の理由から彼女たちを許せないとい言う者もいた。
ガーナムの円形劇場は、当たり前のように一枚岩ではない。
「うわ……もっと早く言ってくれればいいのに……」
ラファエルは詰まっていると苦情のあった手洗いを掃除していた。
「ん?
なんだこれ??」
便器の奥からサーカスの衣装が出てきた。
水で汚れを洗い流すとカンカンの衣装だということがわかった。
ラファエルは不安を感じてエレーナを探した。
お昼で誰もいない稽古場を覗くとエレーナが鎖に繋がれて物見櫓にぶら下げられていた。
三匹のマレー熊たちがその状況を心配げに見つめていたが、柱に首輪をくくられ近づけないようだった。
「エレーナッ!」
「あ、ラファエル……」
ラファエルは持ってきていたカンカン衣装を投げ捨てると物見櫓に全力でよじ登った。
櫓にぶら下がったエレーナを結んでいる鎖をほどいて地上に降ろそうとする。
「嫌にゃっ。やめてにゃっ」
結び目をほどこうとするラファエルを邪魔しようと、エレーナは身をよじって鎖をゆらす。
アン、ドゥ、トロワたちがキュウキュウと鳴いた。
「ちょっと、解けなくなるからっ」
ラファエルは苛立ちながら鎖に指を通そうとするが、うまくいかない。
「すぐに下ろしてあげるから待ってて!」
物見台を下りて人を集めてこようとするラファエルをエレーナが呼び止めた。
「お願いだからこのままにしといてにゃっ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます