第164話「和解」
アマンダ母ミルヴァさんから買った迷宮の地図を頼りに、俺達クランバトルブローカーは地下5階への転移門を目指した。
敢えて言わなかったが、地下3階から多種多様な罠が格段に増えた。
ミルヴァさんの言う通り、落とし穴、仕掛け矢に加えてダメージを受ける床、見えない壁等色々だ。
宝箱も結構、見つかったが、当然の事ながら全てに罠が仕掛けられていた。
かんじんの中身といえばそんなに大したモノはなかったが、罠の方は結構、えぐい感じ。
毒針や毒風などの身体に直接害を及ぼす罠。
奇妙な音と呼ばれる集中力を乱す不快な罠、そして魔物を呼び寄せる独特の臭気が噴き出す罠など、とんでもないモノが多かったのだ。
幸いシーフとして、ヴォラクの能力は素晴らしかった。
怖ろしい大悪魔という肩書の割に、戦闘の方はからきしダメ。
普段はてんで役に立たないのだが、索敵は勿論、宝や罠を嗅ぎ当てる能力は卓越していた。
シーフと言うのはどんなゲームでもそうだが、『運』のパラメーターだけは突出しているもの。
多分、奴の場合は『悪運』が異常に強いのであろう。
だが、シーフとして優秀なのは何もヴォラクだけではない。
フレデリカの侍女であるアールヴのハンナも、優れたシーフなのである。
索敵能力ではヴォラクに一歩譲るものの、罠の解除では繊細なアールヴらしくほぼ100%の確率で解除してくれた。
ちなみにフレデリカにデコピンを食らって泣きべそをかいているハンナを、俺は手招きで呼んだ。
最初は首を振って嫌がったハンナ。
下等民族と思っている人間には近寄りたくなかったのだろう。
だがフレデリカのひとにらみで、仕方なくといった雰囲気で俺の下へやって来た。
俺はすかさずハンナを捕まえて、おでこに
すると!
俺の腕の中で暴れていたハンナが、すぐに大人しくなったどころか……
フレデリカ同様に「とろん」とした眼差しになって甘え始めたのだ。
恐るべし、
俺がもしも、アールヴ女を専門に騙すスケコマシであれば、鬼に金棒という事に違いない。
こうしてハンナも人種的な
フレデリカだけは凄い目で甘えるハンナを睨んでいたが……俺が仲良くするように言うと渋々と従ってくれた。
こうして凄腕のアールヴふたりが新たに加わった事で、クランバトルブローカーはより強力となった。
元々索敵に関しては神技ともいえる能力を持つ竜神族ジュリアを筆頭に、邪神様使徒の俺、悪魔ヴォラクの強力布陣で素晴らしい威力を誇っていたのに加えて、一流シーフであるアールヴ、ハンナの能力が加わり、奇襲攻撃を受ける可能性はほぼゼロとなっている。
勿論、戦闘能力も格段にアップ。
アマンダとフレデリカのアールヴ姉妹は共に優れた魔法剣士であった。
万能属性の魔法剣を駆使し、敵を屠って行くアマンダ。
風と水の最上級魔法を使いこなすフレデリカ。
ふたりは意外なほど戦い慣れており、
こうなると完全に
魔法の指輪でケルベロスを召喚しながら、剣技で敵を殲滅する戦法だ。
盾役としてはソフィアが魔力で動かす
オリハルコン製の頑丈な身体を持つこのガルドルド帝国のゴーレムは、あのゴッドハルトには及ばないものの……
地下4階までの敵の攻撃を殆ど受け付けず、逆に無類の強さで敵を倒したのである。
これに魔法攻撃組が加わる。
爆炎の魔法使いと言っても良いイザベラに、攻撃役兼務のフレデリカの上級魔法の組み合せは最強だ。
創世神の巫女である彼女は、様々な回復及び防御魔法に長けている。
異種魔法の同時発動でゴーレムを操ると共に、クランの回復役を務めたのだ。
アマンダも回復魔法を得意としているから、これで安心して進めるというもの。
こうしてクランバトルブローカーは、大悪魔アモンの穴など感じさせないくらいパワーアップしたのである。
ミルヴァさんによれば、並みの冒険者はこの地下4階に辿り着くまでに殆どが淘汰されてしまうという。
敵の数と凶悪さに、この罠の多さが加わればそれも納得だ。
しかし今の俺達に最早脅威とならなかった。
そして地図通りに進んだ俺達は、とうとう地下5階への転移門を見つけたのである。
珍しくジュリアが早く進もうと主張したが、俺が止めて一旦『キャンプ』を張る事にした。
つまり小休止してこの先の対策とその再確認を行うのだ。
ここでジュリアが、恥ずかしそうに謝罪を申し出た。
良い頃合だと思ったのであろう。
相手は当然フレデリカである。
「フレデリカ、今迄、御免! とてもきつい言い方をしてさ! 早くソフィアを何とかしたかったんだ! あたしったら……焦っていたよ。貴女だってお兄さんが心配だものね」
「う……ん。もう良いよ。私だって同じように貴女にきつく言っていたもの。これからお互いに協力していければ良いね」
ジュリアとフレデリカは改めて握手をした。
おお!
見つめ合う超美少女ふたり!
何だか、感動した。
ジュリアの言葉を聞いたソフィアは、彼女に近付くとそっと抱き締めた。
道すがら、ソフィアの素性と今回の旅の目的を伝えたアマンダも優しい眼差しでふたりを見守っていたのであった。
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