第141話「迷宮ガイド」
サンドラさんの広げた地図はというと……お世辞にも精密な地図とは言えない。
はっきり言って
俺は「さっ」と地図を一瞥する。
それによると『
「じゃあ、最初から説明するね」
そう言うとサンドラさんは片目を瞑った。
「この迷宮はかつて
「へぇ、そうなんですか?」
「うん! 残念ながら最後に魔法帝国は負けたわ。そして敗北した時に当時の魔法工学師達が逃げ込んだという言い伝えが残っているの」
初っ端の説明は
ソフィアも「その通り」だと、言うように頷いた。
サンドラさんの視線は、地図の中の迷宮の入り口にある。
「迷宮は全10層。まず地下1階と地下2階は大した敵は出て来ない。せいぜいゴブリンくらいさ。寧ろ迷宮探索者を狙う人間に注意した方が良い。
俺達はヴォラクを除いて納得したように頷く。
それなら、経験済み。
コーンウォールの遺跡と同じだからだ。
「ふうん……どうやら迷宮探索をした事はあるようだね。じゃあ話を続けよう」
俺達の様子を見て、納得したらしいサンドラさん。
改めて地図を指差した。
「地下1階から地下4階までは階段を降りるが、地下4階からは転移門を使って階下へ降りて行くんだ」
それは階段で地下5階まで降りたコーンウォールの遺跡とは違うようだ。
まあ、良い……それで?
「地下3階から敵が段違いに強くなる。ゴブリンはもとより、オーク、
おお!
魔物はコーンウォールの遺跡とほぼ一緒か。
油断は禁物だが、俺達が既に戦った相手なので手の内は読めている。
先程からずっと頷いている俺達の様子を見て、サンドラさんは何か感じたようだ。
「どうやら迷宮の魔物の事も知っているようだね。それ、違う迷宮だろう? 良かったらその迷宮の事を教えてくれないか? 逆に対価を支払うよ」
成る程……
こうやって情報の『仕入れ』もしているのか。
そして必要な人に対して自分の利益を乗せて売る、サンドラさんはこうして商売をするのだ。
「とりあえず『
逆取材をしようとしたサンドラさんを、俺は手を挙げて抑える。
「ふふふ、悪いね。確かにそうだ」
苦笑したサンドラさんは鼻を鳴らすと話を再開した。
「地下4階までは同じような構造さ。壁面が石造りのいかにも迷宮って雰囲気でね」
となると、地下5階からは雰囲気が変わるという事か……
「地下5階からは信じられない事に……このベルカナの街のような光景が広がっている。巨大な地下都市がね」
やっぱり……
で、あればコーンウォールの遺跡の構造と殆ど一緒だ。
だが、ここからが俺達の欲しい情報である。
「街に人の気配は無い……警護していたのは異形の巨人達、その先は同じ様な地下都市が地下9階まであるという。……以上だ」
へ!?
これで終わり!?
そりゃ、無いぜ!
サンドラさんが言う異形の巨人とは、多分、旧ガルドルド魔法帝国自慢の
それに魔法工学師達が居るとすれば、最終兵器の試作品であるゴットハルトの機体、
そうであれば一筋縄ではいかない。
コーンウォール迷宮と状況がのを知る事が出来たのは確かに大きい。
しかし……これだけで350万アウルムは高い。
「サンドラさん……」
「何?」
「もう少し説明が欲しいですね」
俺が追加説明を求めると、サンドラさんは残念そうに首を横に振る。
「残念ながら大まかには以上なんだ。提供者が地下6階から先には進んでいないからね。だけど質問は受け付けるよ」
むう……何か変だな。
サンドラさんは何か隠している気がする。
だけど質問か……
ここはとりあえず全員で確認してみよう。
まずは俺が質問する事にした。
「地下5階までにしか進んでいないのにどうして地下10階まであると分かったのですか?」
俺の質問にサンドラさんは「にやり」と笑う。
「もっともな質問だ。地下5階で倒した相手や途中であった冒険者達に聞いたそうだよ」
成る程……
情報提供者は実際に探索をしていないって事だ。
「罠とか、特に注意する事はないのですか?」
「ああ、地下4階までに罠は多数存在する。具体的に言えば、落とし穴、仕掛け矢に加えてダメージを受ける床もある。結構えぐい罠が一杯あるよ」
罠か……
地図に
「罠は、この地図には反映していないのですね」
「ああ、残念ながらそこまではね。……だけど階下へ降りる転移門の位置は記してある。位置を動かされていなければ、そのままの筈だ」
それはラッキー!
まあ大金を払うからそれくらいの情報は欲しい。
次に質問する内容は異形の巨人達に関してだ。
サンドラさんが話す『巨人』の特長を聞くと間違い無い。
俺達が既に戦った
俺達はその後もサンドラさんに質問を続けた。
彼女の話す迷宮の様子はやけにリアルである。
何故……だろう?
情報提供者から聞き取りをした話なのに……
結構な大金を払った俺達ではあったが、それなりの情報を得る事が出来たのであった。
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