第62話「3人は夫婦」
各自の役割分担が決まった。
能力の自己申請を基にして、俺が最終的に決めた結果である。
まあ役割だけ決めても、机上の空論。
実戦は別だ。
俺達が組むのは初めてだし、どうなるかは実際にやってみないと分からない。
本来は比較的安全な環境で訓練が必要だが、今回はイザベラの事情で時間が無い。
迷宮で実戦を重ねながら連携に慣れ、徐々に強くなって行くしかないのだ。
シーフ兼
お互いにどのような魔法が使えるかも、一応オープンにする。
ある程度具体的に。
魔法に関して、俺はしょぼい生活魔法しか使えないとか。
アモンがあからさまにがっかりしていたが、華麗にスルー。
でも自己嫌悪……ああ、残念。
そのアモンは魔法も使え、灼熱の炎も吐く万能タイプだが、基本は戦士で盾役。
前線で頑張って貰う。
なので、このクランでのメインな魔法使い役は基本的にイザベラ。
俺を伴侶と認めたイザベラは隠す事もなく、自分の行使出来る魔法を明らかにした。
唯一の難点は回復魔法が一切使えない事だけれど、攻撃魔法と支援魔法の使用可能なものは半端ない。
そしてジュリア。
戦闘よりは『裏方』でクランを支えて貰う。
アモンの見立てでは、訓練を積めば将来強くなる要素はあるという。
だが現状では戦闘向きでなく、魔法も使えないジュリアに受け持って貰いたいのは危機回避能力を生かした索敵担当。
そして回復も含めた後方支援役だ。
ちなみに回復の手段は、治癒魔法の代わりとも言える種々の薬草である。
「回復とか毒消しの薬草とか、明日いろいろ買いに行こうな」
「うん! トール、あたし頑張るよ」
昼間の事もあって、俺から絶対に離れないという事を強くアピールするジュリア。
こうして……
明日の相談が終わり、夜も更けて来た。
3人とひとりは、それぞれ部屋に別れたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その夜……
当然の事ながら、ジュリアは狂ったように俺を求めた。
動物のように何度も、何度も……
やはり昼間のトラウマがあったに違いない。
泣きながら「離さないで」と叫び、俺の名を呼び続け、愛の行為が終わった後には満足して深い眠りについたのだ。
悪い事をしたと後悔した。
俺の胸の中で眠るジュリアを守らないといけないと思った。
「トール、来て……」
小さく呼ぶ声がした。
隣のベッドから……イザベラだった。
ジュリアを見て、イザベラも平気なわけがなかった。
彼女の『女』に火が付いたのだ。
ジュリアが完全に寝入ったのを確かめてから……
俺はイザベラのベッドへ潜り込む。
イザベラは俺にきゅっと抱きついて来る。
熱いキスしたのが行為の開始合図だった。
当然俺は、イザベラも抱いた。
優しく愛を込めて……
そして俺とイザベラも遂に……結ばれた。
ジュリアとは、また違った感動があった。
ちなみに肉体的に愛し合う事は、全然問題無かったのも付け加えておく。
『事』が終わった後、いろいろと話した。
話せない事は多々あったが、差し支えない事は全て話した。
裸で抱き合って静かに話していると、不思議だと感じる。
この世の中で、自分達だけが生きている気がする。
見た目が派手なイザベラも、究極の深窓令嬢の代名詞の王女様。
その為か今迄男性体験が無く、俺が初めての男だと言う。
イザベラも俺が初めての男……
嬉しい!
確かにそう思った。
俺が抱いている時、イザベラは凄く緊張していた。
華奢な身体が堅かった。
やがて……ひとつになった時……
とっても痛がっていた。
そして……行為が終わって……
俺達はしっかり抱き合う。
イザベラは生まれて初めて「自分の全てをさらけ出した」と甘えて来る。
俺の胸に鼻をすりつけて来る。
こいつ、悪魔なのに……本当に可愛い。
ツンとデレの落差が堪らない。
ジュリアにもイザベラにも言えないけど……
抱いてみて分かったのは女の子って皆、雰囲気が違うんだなって事。
俺はちょっと思いついた。
3つのベッドを、ぴったりくっつけたのだ。
眠っているジュリアを起こさないように、俺とイザベラのベッドを動かした。
それから……夫婦3人一緒に寝た。
記念すべき夜を経て俺達3人は形式だけでは無く、色々な意味で本当の夫婦となったのであった。
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