第53話「オークション白熱」
通常のオークションでは、出品目録というリストが入場者に配布される。
ジェトレ村オークションの出品目録を見ると、目指す本命のオリハルコンは1番最後……50番目の出品だ。
いわゆる大トリという奴。
爆乳の
「今日の出品番号1番、回復の指輪! 体力が少しずつ回復する優れもの、迷宮での探索では必須アイテムです。こちらの入札金額は80万アウルムからとさせていただきます。では入札開始!」
「90万!」「110万!」「115万!」
「125万!」「130万!」
満員の会場のあちらこちらから声が大きな声が掛かる。
勢いをつける為に、スタッフも入札者に対して
「回復の指輪」は冒険者を始めとして、相当な需要があるのだろう。
あっという間に入札価格が上がって行く。
結構な人気だなぁ……
俺達の出品する、指輪とアミュレットはどうだろう?
俺は少し心配になる。
結局「回復の指輪」は何と150万アウルムで落札された。
手数料が15%だから出品者の取り分は125万5千アウルムだ。
開始金額の80万アウルムが最低落札希望額だとしたら、手数料を差し引いても充分に利益が出ている計算だ。
出品者は商業ギルドの規則で他者には明かされない。
だから誰なのかは分らないが、このような結果が出るように俺達も見習わなくては。
それから……次々とオークションは進む。
ありとあらゆる商品が出品された。
え? 何故出すの?
と思うものも多々あった。
このような商品は開始金額から声は掛からず、落札金額も全く伸びない。
商業ギルド側も「よく受けたよなあ」って感じだ。
まあ盗品じゃなく、出品料の1万アウルムを支払えば基本的には受けるのであろう。
そして……
とうとう俺達が出品した指輪の順番が巡って来た。
「今日の出品番号35番、魔法王ルイ・ソロモン製悪魔召喚の指輪! 従えた怖ろしい悪魔をいつでも呼び出せる優れもの、
アメリアさんの凜とした声が一層大きく商品を紹介してくれたような……気がした。
果たして、人気の点ではどうだろうか?
この世界の人は悪魔を怖れているのと同時に悪魔を従えた魔法王に憧れを持っている……らしい。
名前も似ているし、俺の前世で言えば多くの悪魔達を従えた伝説のソロモン王って感じの人なのだろう。
しかし期待に反して、入札の声が上がらない。
このオークションのルールで最低落札希望額に達しない場合は『主取り』と言って出品者に戻されるオリジナルルールがある。
困ったなあ、これじゃあ『主取り』だよ……
このような時に、会場の人達を買う気にさせるのが会場のスタッフ達の役目だ。
「おいおい、もし
「そうそう! 機能は商業ギルドで確認済み。別に召喚する為だけじゃないぞ。怖ろしい悪魔を封じ込める時もバッチリだ!」
そんなスタッフのお陰であろう。
ぽつぽつと入札の声が上がって来たのだ。
「125万!」「130万!」
……しかし結局は金額が伸びず130万アウルムで止まってしまう。
元値の設定が高かった事もあるが、先程の『回復の指輪』とはやはり人気が違った。
利益がしっかりと出るように、最低落札希望額が上代より高い設定にしておいたから売り上げとしては充分である。
このように最初の出足が悪かったので俺は心配していた。
だが、次の魔力強化の指輪と魔力吸収のアミュレットには良い意味で期待を裏切られたのだ。
「今日の出品番号39番、魔力回復の指輪! 装着して時間が経つ度に魔力が少しずつ回復する優れもの、迷宮での探索では魔法を使う方の必須アイテムです。こちらの入札金額は60万アウルムからとさせていただきます。では入札開始!」
「80万!」「110万!」「130万!」
「150万!」「180万!」
おお、さっきの体力回復の指輪以上の凄まじい人気だ。
確かに魔力切れは迷宮では勿論、様々な場面で大変な命取りになる。
最終落札金額は、何と!
開始金額の4倍近い220万アウルムにもなったのだ。
「や、やったね! トール」
ジュリアが嬉しさの余り、俺に飛びついた。
「おお! 凄いな、ジュリア! 滅茶苦茶、興奮したぞ! お前のお陰だ」
負けじとばかりに、イザベラも俺に飛びつく。
「私の
「おう! イザベラなしで、俺達は到底やってはいけないぜ」
ぽんぽん出る軽口の数々……
嫁達の機嫌を取る為とはいえ、何といういい加減な俺。
そして……
魔力吸収のアミュレットがオークションにかかると、俺達の興奮は最高潮に達した。
「今日の出品番号45番、魔力吸収のアミュレット! 受けた相手の魔法を吸収して自分の魔力に変換する優れもの、先程の魔力回復の指輪同様に迷宮での探索では魔法を使う方の必須アイテムです。こちらの入札金額は120万アウルムからとさせていただきます。では入札開始!」
「130万!」「200万!」「300万!」
「400万!」「600万!」
こちらは何と何と!
最終落札価格が800万アウルム!
約120万円で出したのが、最終的に約800万円にもなってしまったのである。
最終落札金額は何と開始金額の6倍以上だ、凄ぇ!
俺達は思わず抱き合って、ガッツポーズをしていた。
しかしそれを、会場の片隅で苦々しく見ている男がひとり居たとは。
俺は、その時点で知る由もなかったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
オークションも、まもなく終了……
遂に俺達が待ちに待った、最後の出品物が読み上げられる。
イザベラが姉の婚礼の為に何とか手に入れたいと希望しているオリハルコンの
「出品番号50番、今日の最後の出品物です。稀少な幻の金属と言われたオリハルコンの
貴重な商品とあって、
声にも一層力が入っているようだ。
当然の事ながら、イザベラは勿論の事、俺とジュリアも気合が入りまくりである。
「ようし! 頑張るよ、私!」
「ああ、イザベラ! いざとなればさっきの儲けを全部つぎ込んでも良いんだ。ガンガン行こう!」
「え?」
「あたし達は家族さ。助け合うのが当然でしょ」
ジュリアは微笑んでいた。
自分と同じく、俺の妻と認めたイザベラを助けると言い放ったのだ。
思わず涙ぐむイザベラの肩に、ジュリアはそっと優しく手を置いたのであった。
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