第52話「オークション、始まる!」
それから……
俺の前で、ジュリアとイザベラ、ふたりの女の話し合いが行われた。
議題は、俺に対する立ち位置である。
議論は白熱したが、基本的には出会ったという順番という事で決着がついた。 ジュリアが正妻、イザベラが第二夫人という事で……
でも……
正妻に、第二夫人って俺はもう妻帯者か!?
よくよく聞くとこの世界の正式な結婚は儀式的な事をやらなくてはならないのだそうだ。
なので、この呼び方はあくまで便宜上の物。
便宜上でも婚約に近いものなので、他の男は基本的に手は出して来ないらしい。
あくまで、基本的にという事だが……
「ちょっと妬けるけど……イザベラが礼を尽くしてくれたから……あたし、彼女を認めるよ」 とジュリア。
「私の一方的なひとめ惚れで、気持ちは真剣だと話したらジュリアに分かって貰えたんだ。姉の為にオリハルコンを持ち帰る事が出来たら、父上と母上、そして姉上に話して許しを得るつもりだ」とイザベラ。
イザベラは、俺と結ばれるにあたり重大な決意を固めたようだ。
いずれ王族の地位を捨てるらしい。
「えっと……その……イザベラって、やっぱり単なるチョロインじゃあなかったんだ」
「チョロインって、何よ、それ! やっぱり意味分からない! 私はね強いのに偉ぶらなくて優しいトールが好きなんだ」
余計な事を言った俺は、イザベラに怒られた。
でも同時に好きって言われたから嬉しい。
更に詳しく聞くと、悪魔族は強さが全ての基本。
強い者は弱者に対して、徹底的に傲慢に振舞い相手を下僕のように扱うらしい。
夫から妻に対してでも例外ではなく……
俺は圧倒的な強さでイザベラに勝った。
なのに、女に対して征服者のように威張らないのが良いという。
何?
征服者って?
イザベラに言わせれば、強い俺の物言いと態度がとても優しい。
一緒に居ても楽しい。
だから、好きになった理由だというのである。
当然、顔が恰好良い事も理由として大きいそうだ。
『お~い、君をカッコ良く改造した僕のお陰だよ』
『……』
『聞いてる? お~い』
何か変な声が聞こえた気もするが……無視。
俺はイザベラの気持ちを聞いて、こみあげる嬉しさを隠そうと無理に真面目な顔をして話を本題に戻す。
「じゃあ、改めてオークションに出品する商品を申請しよう」
ここでも俺の『勘』はふたりに理解して貰い、売主として結局出品したのは下記の商品である。
☆魔法王ルイ・ソロモン製悪魔召喚の指輪(真鍮製・多分、レプリカ)
最低落札希望額:120万アウルム
☆魔力強化の指輪(銀製)
最低落札希望額:60万アウルム
☆魔力吸収のアミュレット(銀製)
最低落札希望額:120万アウルム
これらを売って得た利益は俺とジュリアの出資金の割合、そして各自の鑑定と解呪の手間賃が考慮されて3人で分け合う話になっている。
事前に例の魔法水晶でチェックを受け、出品手数料を払い、最低落札金額を設定して申請は完了。
そしてオリハルコンのオークションにも俺達は参加するのだ。
イザベラの為にこちらは何としても成功したい案件である。
こっちの資金は920万アウルム……
これはイザベラが国から持ち込んだ私物の宝石を売った資金だ。
先程の話し合いで、俺の嫁となり意気投合したジュリアとイザベラ。
もはや俺達3人は家族。
絆が深まった。
私物の宝石売却の交渉もしてくれたジュリアに対して、イザベラは改めて感謝しきりである。
そうこうしているうちにあまり時間がなくなったので俺達は急いで絆亭に戻り、早い夕飯を摂った。
オークション会場で食べても良いが、総じて高い。
絆亭は食事代込みだし。
無駄遣いをするのは勿体無いというジュリアの意見に、全員同意したのである。
夕飯後……
絆亭の女主人ドーラさんに午後10時までには帰ると告げ、俺達は商業ギルドのオークション会場に戻ったのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
午後6時……
再び、ジェトレ村商業ギルドのオークション用屋内会場。
相変わらず広いと感じる。
だけどギルドの職員に聞いたら、これでも王都セントヘレナや冒険者の街バートランドからすればとても小規模なものだそうだ。
今夜の俺達は『売主』と『入札参加者』両方の立場。
入場参加料は鑑札を持っているから無料であり、全体が見やすくて目立たぬよう、一般席のやや後ろに陣取っていた。
手元には参加者の証である「パドル」を持っている。
遊びでは全くない真剣勝負である仕事の場なのにさっきから俺はワクワクのし通しだ。
何せ前世と転生後、通じてネットオークションも未経験の俺にとって初めてのオークションなのである。
まずは進行役の競売人が挨拶をした。
この商業ギルドのサブマスターで何と妙齢の女性だ。
「皆さん! ジェトレ村のオークションへようこそ! 私はこの商業ギルドのサブマスターで
金髪のロングヘアを後ろで束ね、流暢な口調で説明をするアメリア嬢は20代半ばくらい。
ジュリアやイザベラの美少女タイプとはまた違う大人の美人だ。
前世で言えば、アメリカンビューティといった所だろう。
当然、ボン! キュッ! ボン!
凄い身体である。
爆乳とも言える巨大なアメリアさんの胸が気になった俺は、ぼうっとして見とれていた。
当然、お約束としてジュリアとイザベラに思い切り膝をつねられる。
ははは、ヤバイ!
俺は誤魔化すようにふたりの肩に手を回し、
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