神斬髪切り屋(かみきりや)参の巻 金剛 2. 石道 一
神 斬
髪 切 り屋
参の巻 金剛 2石道 一
朱右「ありがとうございました」「すみません、ミカンいただいちゃいまして」
お客様のおば様「いつもきれいな髪型にしてもらつてるから遠慮なくとっといてね」
今週、最後のお客様から思わぬ差し入れをもらって仕事を終えるのだった
ミカンは、俺の住んでいる、街の特産品である
朱右が仕事を終えた気配を察したのであろうか
お客様が帰ると同時に白狐が現れた。
白狐「朱右よ、お仕事、ご苦労であった」
朱右「白狐さん、急に御神体から実体の身体になるのやめてもらえますか」
「もしお客様にみつかりでもしたら・・・・」
朱右が話してる途中だが、すかさず白狐が返す
白狐「朱右よ、こまかい事は、気にするでないぞ、そたなのお仕事に
迷惑はかかってないであろうが」
白狐「そなたのお客人たちにも、迷惑にならないように気遣いはしておるしのぉ」
白狐「さらに、そなた仕事中は、めがねをかけておるであろう
めがねをかけておれば、御神体の状態の我は、みえておらぬであろう」
俺は、右目にだけ、黒髪や神が見える特異体質である
しかし、不思議なことに、めがねをかけていると何故か見えないのである
朱右「たしかに めがねをかけていれば、白狐さんの御神体はみえていませんが
最近、気配でわかるというか・・・しかし実体の身体になっているときは
めがねをかけていてもみえるので。普通の人にもみえるとおもいますが・・・」
白狐「話はかわるが、そういう理由からなのか、最近そなたの仕事を
御神体で、二階からのぞいていると
時々、めがねをあげて、お客人の髪型を切っておるのぉ。」
白狐「そなた、お客人から見える、黒髪を髪型を切るついでに斬っておろう」
朱右「やっぱり、白狐さんには、ばれてましたか、なんかお客様の元気がない時や
落ち込んでいる感じの時なんかに、めがねをかけないで見ると
わずかですが黒髪が見えるんですよ、それを斬ったら、お客様の感じが
元気になってくれるというか」
白狐「それはそうじゃの、そもそも、我らが戦こうておる、黒髪の本質が
人間の持っている、欲や嫉妬、あきらめや疲れなど、人間が持つ
負の感情から生み出されたものじゃからのぉ、それを取り除くということは
それらを断ち斬るっているという事じゃからのぉ」
朱右「だとしたら、俺が、子供の頃に戦った
龍や、今年の正月に家康さんと一緒に戦った不死(ふじ)の骸(むくろ)
それらも、本質的には、人間から出てる黒髪と同じって事なんですか?」
白狐「そうじゃの、龍の場合はそなたが子供の時にひらった大蛇(おろち)のヒレ
不死(ふじ)の骸(むくろ)の場合は、骸骨の右目から出てきた
勾玉 死返玉(まかるがえしのたま)
これら媒体となる物に人の悪しき心が集まって形を成したもののけ
それが、そなたが戦った黒髪の正体じゃ 」
白狐「そもそも、1500年前に、我がこの地に降臨した理由が
凶作によりあまりに食べるものが無く、餓死していく現実に
何もできなかった人々が自分たちの不甲斐なさや自然に対する
怒りから生まれた龍の黒髪を鎮めるために人々の願いに
答えたかったからなのじからな」
白狐「我は倉稲魂神(うがのみたまのかみ)にして、国の種つ物をして
百の災いを祓い、天下の蒼生(そうせい)を護る神なり」
白狐「こまかい事の、説明は又の機会に詳しく話すとして
我は、お腹がすいたのじゃ、インスタントラーメンをつくって
たべるが、そなたも食べるか?、我が作ってやってもよいぞ
朱右よ、人間お腹が膨れれば、幸せな気分になって黒髪も少しは
少なくできるはずじゃ
もともと我の本質は食物を皆に与える神なのじゃからな」
朱右「えっ俺の分も作ってくれるんですか?よろしくおねがいします」
朱右(意外と優しいところあるんだよね。いつも上から目線だけど
こういうところが憎めないというか・・・)
白狐「朱右おぬし、また何か考えておったじゃろう」
朱右「!!何でわかるんですか?でも今考えていたことは白狐さんをほめているというか・・・」
白狐「まあよい、では、我は鍋に湯をわかしてくるぞ」
白狐がダイニングに身体で走って行った。
朱右もお客様からいただいた、ミカンを持って
ダイニングのテーブルに座った
白狐がお鍋にお湯を沸かしながら具材を調理しながら話しかけてきた。
白狐「朱右よ、先ほどお客人から何かおすそわけをいただいていたようじゃが」
朱右はミカンを袋から取り出して言った
朱右「これをいただきました、白狐さん食べますか?」
白狐「おおっ、非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)ではないか
現代の非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)は、甘くておいしいのぉ」
朱右「?? ときじくかぐのみって何ですか?」
白狐「朱右、ときじくかぐのみではない、非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)
そなたが持っておる、橙色の果物のことじゃ」
朱右「えっ、ミカンのことですか?」
白狐「逆に、現代ではミカンと言うのじゃな」
朱右「で、ときじくのかぐ・・・のこのみって何でそう呼ぶんですか?」
白狐「そうじゃの、ときじくかぐのこのみについて聞きたいのじゃな。」
白狐「ここで、白狐様の豆知識じゃ、ありがたく聞くがよいぞ」
白狐「ときじくかぐのこのみは、太古の昔 第十一代 垂仁帝(すいにんてい)の時代
垂仁帝が田道間守(たじまもり)という人物に不老不死の力を持つと伝わる実を
探させたという逸話に、出てくくる実なのじゃ」
白狐「この命を受け、田道間守(たじまもり)は常世の国にあるという
ときじくかぐのこのみを探して、長い年月をかけて常世の国に
おもむき、ついに、その実を探しあて、帰国した、しかし
その時、垂仁帝はすでに亡くなっておったのじゃな」
白狐「事記には、非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)を
是今橘也(これいまのたちばななり)とする由来が載っておるのじゃ」
朱右「へー、だからミカンの古い呼び方は、橘と言うんですね、勉強になりました。」
白狐「この話の功績により、田道間守(たじまもり)は菓祖神(かそしん)
要するに、お菓子の神様として、崇められるようになったのじゃな」
白狐「ちなみに、山城の国の平安の都
昔、帝が住まわれていた御所に「右近橘 左近桜」として橘が植えられてる
たしか、平安宮にも、「右近橘 左近桜」が植えられていたはずじゃ
要するに、この国を代表する、植物ってことじゃの 橘と桜は」
白狐「あと、予断だが、家康が木の国から、献上された木を
隠居していた駿府城(駿府城公園)に
植え育てていたらしい、家康公お手植えのみかんの木が、今も残っておる」
朱右「なるほど、勉強になりました、家康さんもミカン好きなのかもですね
今度、電話したときに聞いときます」
そんな話をしているうちに、ラーメンが出来上がった
いつもどおり白狐さんは、食べて当てよう大盛りキャンペーンで
当たった、レア大盛りひよこちゃんラーメンどんぶりに2人前分のラーメンを
そして、俺の普通のどんぶりに1人前のラーメンを盛りつけるのである。
白狐「へいおまち。今日は、白狐特性野菜たっぷり塩ラーメンじゃ、こころしてたべるがよい」
白狐「では、本日も、食べれる事と素材を作ってくれた人に感謝していただきます」
朱右「いただきます」
白狐さんは、いただきますが終わるやいなや、すごい勢いでラーメンを食べている
この人、いや神は、絶対、猫舌ではない、たぶん狐舌なのか、熱いのもへっちゃらだ。
白狐「いやー、やっぱりラーメンは最高にうまいのぉ、ご馳走様でした」
その後、お客様からもらった、ミカンを
袋から取り出しデザート代わりに食べながら
白狐「うむ、非時香菓(ときじくのかぐのこのみ)美味じゃ」
さらに間髪いれずに、白狐が話す
白狐「朱右、そういえば、ネットで最近見付けたのじゃが
近所のラーメン屋さんが、食べブログで、全国一位に
なっておったぞ、今度食べに、連れて行ってほしいのじゃ」
朱右「そんなラーメン屋さんが、いつの間にできたんですかね?
わかりました、今度連れて行きますよ」
白狐「それはありがたい、しかし、次の戦いで、そなたが死ぬ前には
連れて行ってもらえるのかのぉ?」
朱右「白狐さん、また縁起でもないフラグ立てるのやめてもらえますか
あっ、ラーメンご馳走様でした、おいしかったです」
白狐「さて、おなかも膨れたし、片付けと明日の準備をしたら
我は寝るのじゃ、朱右そなたも、今夜は早く寝ておけ」
そう言った後
白狐「食べ終わった、どんぶりをかすのじゃ、洗っておくからのぉ」
俺からどんぶりを受け取り洗剤で二人が食べたラーメンどんぶりを
洗いだした、そしてその後、明日のお昼ご飯の段取りだろうか
お米をといで、炊飯器にセット、タイマーの時間を合わしている
朱右(しかし、次の戦いで、俺、本当に死ぬんだろうか?
白狐さんの言う事は、すごく、的を得ていて
ほとんど、そのとおりにいままでなってきたから
不安にならないというと嘘になる)
白狐「朱右、浮かない顔をしておるのぉ、まっ、我はもう寝るのじゃ」
そう言い残して、白狐さんは二階に上がって行った
一応、白狐さんの言いつけどおり、風呂に入り、早く布団には入ってみたものの
白狐さんの予言が気になり、なかなか寝付けなかったのだが。
白狐「朱右よ、早くおきるのじゃ」
朱右「ううーん、白狐さん、俺、なかなか、寝付けなくて、さっき
やっと眠ったところなんですが、今、何時ですか?」
白狐「丑三つ時じゃが、朱右、出かける準備をはようせい」
俺は時計を見た、深夜2時をまわった頃だった
朱右「やっと、連休なんですよ、もっとゆっくり寝かしてくださいよ」
白狐「わかった、朱右よ、そのまま寝るようなら、次の戦いを待たずして
我がそなたを昇天させてやってもよいのだぞ」
白狐さんの目が、黒髪と戦っている時とおなじ、鋭い目つきになる
朱右「わかりました、おきればいいんですよね」
このまま寝ると、俺、マジでこの神様に殺されかねない。
白狐「うむ、それでよいのじゃ」
白狐さんの眼がいつもの、優しい目にもどる
そして、俺が起きるのを確認すると白狐さんは一階のダイニングに
おりていった
素早く出かける準備をした俺もダイニングに降りる
そして白狐さんに声をかけた
朱右「白狐さん、準備できましたよ」
白狐「朱右、丁度よい、我も、そなたの弁当の準備がおわったところじゃ」
炊飯器のタイマーは弁当を作るためだったらしい。
白狐「では朱右、車をだしてきてもらえるかのぉ」
俺は言われたとおり、車を車庫から出してきた。
白狐「朱右、荷物の積み込みを手伝ってもらえるかのぉ」
二人で荷物を積み込み、白狐さんが助手席にすわり、シートベルトをした
朱右「白狐さん、で、どこにいくのですか?」
白狐「では、この日のために2ヶ月前の発売日に並んで手に入れた
スマートフォン、パイナップル社のマイフォン5
そして、この日のためにインストールしたアプリ
その名も、ナビ子ちゃんに行き先を入力」
なんか、張り切って
一人ごとを、神様がぶつぶつ言っているが
内容を聞く限り、この神様は、現代社会に暮らしだして
10ヶ月そこそこなのに
完全に、現代のシステムをつかいこなしているようだった
白狐「これで行き先入力は完了じゃ、朱右よ後はナビ子ちゃんの
指示どおりのルートで運転を頼むぞ」
朱右「白狐さん、ちょっとスマホの画面を見せてもらえますか
ふむふむ、行き先は光野山(こうややま)の麓
慈尊寺(じそんじ)ですね、了解しました。」
白狐「あと、朱右よ途中の道すがらで、ペットボトルの水と我のおやつを
買うのでコンビ二によってくれるかのぉ」
朱右「はい、了解しました。」
白狐「では、慈尊寺(じそんじ)に向けて出発じゃ」
この時の俺はまだ知らない、この連休に俺に降りかかる災難を
神 斬
髪 切 り屋
参の巻 金剛 2石道 二に続く
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