サイコな俺と、パンピな彼女
ヤナカノカナヤ
第1話 中野さんもサイコかな?
俺の名はカナヤ。金に谷と書いてカナヤ。
最近、精神病院に行ってみた結果、こう診断された。
「”精神病質”の可能性があります」
”精神病質”―――最近ではもっと有名な呼称がつけられた。
”サイコパス”
「もし、あなたが一人で、野垂れ死にしそうなとき、
一人の女性がこっちへ歩いて来たとします。
あなたなら、どうしますか?」
みんなは、こんな回答をしていた。
「助けを求める!」
「金を奪う!」、「えー、さいてー」
「殺して食べる!(笑)」、「おいおい、残酷だな!(笑)」
俺の回答
「後をつける」
その瞬間、周囲の奴らは、俺から一歩距離をとった。
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「あたたかな春のおとずれと共に――――」
俺、金谷(カナヤ)は高校入試で学年トップの成績をとり、
今は、壇上で新入生代表の挨拶をさせられていた。
――新入生代表の挨拶することになった。
この話を聞いた、周囲の大人達は口をそろえてこう言った。
「すごいわね~。でも、緊張するでしょう?」
緊張ってなんだ?
俺には全く理解できない。
「そうですね。でも、頑張りますよ」
俺は、いつもの作り笑顔を浮かべて、その場をやり過ごす。
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ガヤガヤ、ガヤガヤ
「お前の挨拶、中々よかったぞ!」
「全然、緊張してなさそうだったな。すげえよ」
入学式初日、廊下ですれ違うと、
俺にこう言った言葉を投げかける輩は大勢いた。
「ありがとう」
その度に俺は、最も汎用性の高い、お礼文句を使わせてもらった。
もちろん、張りぼての笑顔を添えて。
そんな、有名人のような扱いは、1週間も経つ頃には落ち着きをみせ、
俺の代わりに、クラスを引っ張る人気者たちが名乗りを上げていた。
「今度の体育祭、出場したい種目がある人は、
この用紙にチェックしておいてください」
体育祭実行委員が、前に出て呼びかけをしている。
まぁ、俺には関係のないことか。
「金谷君」
となりの席の女子生徒が話しかけてきた。
名前は中野さん。
確か、入学式初日から、”彼女にしたいランキングトップ5”というものに
名前を連ねていた。
だれが作ったのかは知らないが・・・
_______________
「中野さん、マジかわいいよな!」
「彼氏とかいるのかな?」
「お前、聞いてみろよ」
「わかった」
「「え!?」」
俺は、中野さんのいる女子グループに近づく。
さっきまで談笑してしていた女子は、俺が近づくのに気づき話すのをやめた。
他の女子も、自然と俺の存在に気付き始める。
「あの、中野さんは、彼氏とかいるんですか?」
「え、急にどうしたの?
別に、いないけど?」
「そうですか。ありがとうございました」
俺は、軽くお礼を言って、さっきまでいた男子グループのもとに帰る。
「どうやら、いないらしい」
「ぷはは、お前、なにしてんだよ!」
「まったくだぜ」クスクス
何が面白かったのか俺にはわからなかった。
その笑顔も、俺がいつも使う笑顔と同じなら納得がいく。
ただ、こいつらの”笑顔”と、俺の”笑顔”とでは、根本的に何か違う気がした・・・
______________
「ねえ、聞いてるの?金谷君」
「ごめん、考え事をしていた」
「金谷君は、出たい種目とかないの?」
「うん、ないよ」
「えー!身長高いんだし、もったいないよ!」
「ははは、そんなことないよ」
俺は、乾いた笑顔を浮かべる。
「話は変わるけど、入学式の日、なんで私に彼氏がいるか聞いたの」
上目遣いの中野さんは、目が大きくて公園でよく見かけるアリを思い出す。
あいつらも、目がやたら大きい。
「気になったから・・・(一緒に話していた男子たちが)」
「ふーん、そっか」ふむふむ
中野さんは、何かに納得したようだ。
「じゃあ、私と付き合う?」
いきなりこんなことを言う中野さんは、俺よりサイコかもしれない。
そんな彼女となら、俺もうまくやっていけるかもな。
「・・・別にいいけど」
「じゃあ、決定ね。よろしく金谷君」
「よろしく」
この時、彼女ができても特に感動なんてしなかった。
俺には、そんな感情がなかったから・・・
ただ、彼女は、俺に色々な感情を教えてくれた。
今となっては知らなければよかった、と思う。
今は彼女のせいで、こんなにも胸が苦しいのだから・・・。
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