第24話 秘剣<十字剣>
リカルド・バウアーはようやく騎乗した<ベアトリスナイト>を駆って、別働隊の副団長のマリア・アドレラと合流した。
マリアは中国とヨーロッパ人のハーフの女騎士であった。
彫が深いボーイッシュな顔立ちに、短い赤毛、碧い瞳という奇妙な融合が神秘的な雰囲気を醸し出していた。
リアルド・バウアー同様、身体にぴったりした白銀色の騎士のスーツに身を包んでいた。
「リカルドさま、申し訳ございません。私の不手際で奇襲に失敗してしまいました。かくなる上は私の部隊が突撃致します」
モニター越しのマリアの表情は、今にも消え入りそうに見えた。
「よい、私、自ら出る。おまえは援護に回れ。敵には<邪眼使い>がいる。おまえでは荷が重い」
「いえ、私も騎士の端くれ、ここは雪辱の機会をお与えください」
マリアの瞳に懇願の光が見えた。
「そうか、では、おまえに機会を与えよう。油断するな」
リカルドはマリアの希望に
「イエス、マイ、マスター!」
マリアは嬉々として<ベアトリスナイト>を駆って戦場に向かった。
†
(<ベアトリスナイト>とかいうやつ、意外と簡単に引き下がりましたね)
安東要は晴明に語りかけた。
(いや、すぐに立て直して来るじゃろう)
確かに、正面の敵の隊に伏兵が合流してるようだ。
(しかし、メガネを取った波奈ちゃんがあんなにかわいいとは思いませんでした)
(月読四姉妹はみんな美人じゃからなあ)
(というか、月読四姉妹を実際に見たのは波奈ちゃんがはじめてだし、会った人とかいるんですか? 実は
(あ、わしが会ったのは先代かもしれんな)
(僕も波奈ちゃんがあんなにかわいいとは思いませんでした。かなめちん、神沢隊長に見えるか見えないか半分スケスケモードでいいのでサイバーグラスの支給をお願いして欲しいのですが)
いつのまにかメガネ君が話に割り込んできた。
しかし、サイバーグラスにやけにこだわるなあ。
(それはこの戦いを乗り切ったら、申請しておくよ)
(兵士の士気を考えれば、今、すぐにでも欲しいのですが)
(ちょっと訊いてみるよ。神沢隊長?)
(この戦闘後に支給するわ。生き残れたらの話だけれど)
(ありがとうございます! 全兵士に伝えます!)
(おおーーーーーー!)
兵士たちのどよめきが大地を揺らした。
彼らの士気は1000パーセント上昇した!
いくらなんでも、上昇し過ぎだろ!
オタク軍団が万全の体制になったところに、白い機体の<ベアトリスナイト>が一騎、近づいてきた。
と思ったら、背中のコクピットが開いて、赤毛の女騎士が現れた。
白銀の騎士スーツ姿に、兜を小脇に抱えている。
「私は<薔薇十字騎士団>副団長のマリア・アドレラ! 一騎打ちを申し込みたい!」
(また、面倒な感じの女が来ましたね)
メガネ君が少し呆れている。
(確かに)
安東要もうなづいた。
卑怯なのか、正々堂々なのかはっきりしてほしい気もする。
基本、卑怯と認識しておくが。
「この天海がお相手しよう。マリア殿」
天海が源氏の妖刀のひとつ<膝切>を抜く。
<膝切>は騎乗した式鬼<
式鬼<
「では、一手、お手合わせを」
マリアも銀色の<十字剣>を抜く。
真紅の<ベアトリスナイト>の両足ローラーが金切り音を上げて土煙が上がった。
と見る間に、瞬間移動のように一瞬で天海の目前に現れて切りつけてきた。
天海もとっさにで受けると見えて、マリアの剣は躱されて、いつのまにか<膝切>の切先がマリアの眼前を掠める。
「なかなかやるな、天海殿」
マリアも不敵に微笑む。
「そなたも、なかなか」
天海も好敵手に出会えてうれしそうだ。
真紅の<ベアトリスナイト>と式鬼<
二機の機体がしばし静かにたたずむ。
戦場の静寂を破ったのは、やはり、真紅の<ベアトリスナイト>の方だった。
ただ、その姿はほとんどの人の目には捉えられず、気づいた時には背後から式鬼<
一刀両断、天海の式鬼<
秘剣<十字剣>の正体は、空間そのものを両断する<次元剣>である。
だが、天海も同時に秘剣<
秘剣<
影の中から、せり上がるように式鬼<
「マリア殿、なかなかやるな」
天海は<膝切>を構えなおした。
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