着地






25



馬に似た物体は

潔いほど内部を晒している


馬に似た物体の内部は色とりどりの淡い灯りに照らされている


ザナザは一瞬にして後方に飛び退いていた


妻のナゥロのようなレイリョクはザナザにはないが数々の修羅場を潜り抜けてきた経験による研ぎ清まされた勘がザナザにはある


ザナザの勘は物体内部にいる者の気配を一瞬で察知した


危険な気配であった


かつてこれほどの危険な気配を持つ者はいなかった


それゆえ後方に飛び退いたのだが馬に似た物体の内部には誰もいなかった




26



T舵国とP摩国の国境近く

スィーナ湖の湖畔

馬のような物体の内部は確かに空っぽだった


それなのに突然内部に男が現れ身軽に跳ねてダラギャの正面に着地した


ほっそりした体躯で背が高い


ダラギャも長身なのだがその男はダラギャより背が高い


柔らかそうな白い服に身を包んでいる


ダラギャの漆黒の服と対比が鮮やかである


この大陸の者でないことはすぐに解る


白い服に使われている布の材料がわからない


この大陸の布よりずっと軽そうである


そして布は少し光沢がある


男の髪は白銀色である


これほどくっきりとした白銀色を見るのはダラギャにとって初めてのことである




27



男の白銀色の髪が風になびく


長い真っ直ぐな髪がきらきらと光る


美しく白銀色に光輝く長い髪


女と間違われそうだが…ほっそりした体躯なのに男としての凄みがある


白い服は柔らかく

男の筋肉を服の表面に浮かび上がらせている


凄みのある筋肉なのである


けして太い筋肉ではないが

秘めている強靭さが

纏っている筋肉をはるかに凌駕することはすぐに見てとれる


戦いの経験が多い飛刀団だからこそ男の戦闘力をすぐに察知できるということは言える


普通の人々……特に女であればこの男の凄みなど解るはずもなく…ただ男の美しさに見とれるだけであろうとダラギャは思う


そう

馬の如き物体から突如飛び出してきた男は…あまりにも美しかった










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