第1話 幼少時代(母の離婚~再婚)




私は、というか皆そうかも知れないけれど、小さい頃の記憶がほとんどない。

思い出そうとしても、これといって、何も出てこない。


3歳の時に母が離婚して、一時、静岡にある母の実家に居た。らしい。

母から聞いた話でイメージが出来上がってしまっただけなのかも知れないが、

唯一、以前の父のことで記憶していること。

自宅で何か仕事をしていた父に構ってもらいたくて邪魔をして、

叱られ押入れに閉じ込められた。

すごく怖くて、私は泣きじゃくっていた。

気がする。これまた、不明瞭。


その後、母が今の父と再婚した。

今の父と会った時のことは、正直、全く覚えていない。

いくら3歳と言えども、もう少し記憶していてもいいだろうに。

当時、しばらくの間、再婚した父のことは「○○(父の苗字)さん」、

そのご両親(私にとって祖父と祖母になる)のことを、

「○○さんパパ」「○○さんママ」と呼んでいたことは、おぼろげに覚えている。

新しい父も祖父母も優しくて、特に嫌なこともなかった。


両親や祖父母には、小さい頃の私は相当に活発な子だったと言われた。

確かに常に動き回っていないと気が済まなかったし、

木やアスレチックなど、登れそうな場所にはとりあえずチャレンジ。

エネルギーが有り余っていた。

それがこんな貧弱軟弱メンヘラ女になるなんて、自分でもビックリだ。

幼少期にエネルギー使い果たしたのかな。


5歳のとき、妹が生まれた。正確には、4歳の終わりか。

どちらも早生まれだから。

妹が生まれた瞬間とか(見てないかも)、初めて妹を見た瞬間は思い出せない。

あ、でも妹が色んな赤ちゃんと一緒にいたのは何となく覚えてるかも。


うちは変わった家庭で、両親とも普通の職についていなかった。

父はもともと物書きで、小説を書いていた。

再婚して最初に住んでいたアパートでは、

確かにワープロで何か書いていた。ような気がする。

とりあえず両親共、一日中家に居るのが当たり前だった。

部屋の本棚に、週刊誌?がたくさんストックされていた。

一見難しそうな文章がたくさん載ってる雑誌なのだけど、

後ろの方のページに裸の女の人が外にいる写真がたくさん載ってて、

まだ幼稚園~小学生だった私は驚いたことを覚えている。

そんな本、子供の手の届く範囲に置いておくなよ…と今になって思う。


近所にある幼稚園の送り迎えは、いつも父だった。

幼稚園に植えてあった、枝のたくさん生えた木の一番上に登って、

先生達や父が驚くのを見るのが好きだった。

幼い頃の私は、とにもかくにも、やんちゃだった。

いや、やんちゃを通り越して、暴れん坊だったかも知れない。

祖母と買い物に行って、重い荷物を持って褒められたり、

周りの大人が、幼い女の子には出来ない、やらないだろうと思うことをやって、

驚いたり褒めてくれるのが、嬉しかったし面白かったのだと思う。


ある日の夜。少し大きくなって一緒に遊べるようになった妹と、寝室で遊んでいた。

テーブルがあり、その上にオーディオセットが置かれていた。

ふとした拍子に、私はそのテーブルにぶつかり、

テーブルからスピーカーが落ちてきた。

見事、重く四角いスピーカーの角が私の頭に当たり、少量だが血が出てきた。

痛みと血でパニックになった私は、居間にいた母のもとに駆け寄り、

慰めてもらおうと思った。が、そこで母は、


騒がしい。血なんてすぐ止まる。静かにしろ。


と、私を叱りつけた。ショックを受けた私は、

私なんて必要ないんだ、大事に思われてないんだ、と思い込んだ。

家を飛び出し、当時所有していた車の後ろ、荷物を入れるところに隠れて泣いた。

しばらくして、父が迎えに来た。






その日から、母に甘えるのが苦手になった。




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