第30話共同戦線
第2テストの内容は
【チームに分かれて敵チームのランプを奪え。奪われた者は脱落】
となっている。
精霊王のコテージに戻ったオレ達は、第2テストのチームメンバーとしばらく共同生活することになった。
驚いたことに第2テストはコテージエリア内で行われるのだという。
期間は1週間。
共同生活の場となるのは用意された大型のコテージである。
オレ、精霊セラ、リー店長、魔導師アティファ……オレ達のメンバーだけでも4人いるわけで他の境界ランプの持ち主達のメンバーと合流するとなるとかなりの大人数となるだろう。
荷物を旅行用のカバンにまとめて指定のコテージに向かう。
「オレとチームを組むランプの持ち主達って誰なんだろう?」
「それがね、千夜君。実は他の人たちは千夜君が洞窟で修行している間にそれぞれ連絡の取れる親しい人同士でチーム組んでいるらしくて……僕たち不在だったでしょ? シャルロットちゃん達から誘われていたらしいんだけど連絡が取れなかったとかで今回は敵チームなんだよね……だからね……」
リー店長何が言いたいんだ?
今回はシャルロットが敵チーム……。
いやそれだけじゃないだろう。
リー店長が言いたいことは。
「その、すごく言いにくいんだけど千夜君と組む人たちって誰ともチームを組みたがらなかった人たちなんだって! だからやりづらいかもしれないけどさ……まあ、若い時はいろいろあるんだよ! うん!」
「誰とも組みたがらなかった人たち……一体誰なのかしら?」
セラが疑問を呟く。
確かに……会ってみれば分かるんだろうけど。
コテージエリアの再奥にある海が見える立ち入り禁止区域。
高級別荘地にふさわしい景観で波の音が聞こえる静かな場所だ。
にも関わらず、魔導師達の間で争いが起きた際に封印魔法を施した影響で一般人は入れなくなってしまったという。
今回のテストの舞台だ。
「何かとても強い結界で守られているようです。呪符がいたるところに貼ってあるし……強い魔力を感じます」
魔導師のアティファが立ち入り禁止区域内に貼られた呪符を見て呟く。
「キュー! 身体がピリピリしたでキュ」
ミニドラゴンのルルが結界を通過した瞬間、身体がピリピリという表現をした。
コテージ内に籠城してランプを取られないようにする消極策でも一応テストは合格らしい。
万が一参加者全員が籠城ルートを選ぶと全員次のテストに進むことができる。
オレはコテージの鍵を取り出し扉を開け室内の入った……が。
「私たちだけで充分だと精霊王には言ったのに……私たち双子の実力は認められていないのかしら?」
「お姉ちゃん、そういうテストなんだから仕方ないよ」
いきなり女の子の不満げな声が聞こえた。
リゾートテイストの広いリビングルームには、踊り子の衣装を身に纏った双子の美少女姉妹が何やら話あっている。
2人ともロングヘアでお揃いの衣装を着ているせいで見分けが全くつかない。
あの双子は確か……。
『10番目のランプの持ち主の朱那(しゅな)、11番目のランプの持ち主の白亜(はくあ)です。私達は双子の魔導師で宮殿の隣町ラピス市場で踊り子をしています。夢は2人で最高のステージをたくさんの人に見てもらう事です!よろしくお願いします!』
最初の挨拶では、大人しい姉妹に感じていたがあれは上辺だったのか……ずいぶん気が強そうだ。
「あっ! あの双子美少女踊り子姉妹! ラピス市場では結構な有名人なんだよ〜千夜君。ボクサインもらおっかな? お店に飾って客寄せに使うの!」
リー店長がそんなことを言っている声が聞こえたのか、クルリと振り返りスタスタとこちらに向かってきた。
「あなた……これから私たちと共同チームを組む響木千夜(ひびきせんや)ね。私たちは籠城よりも敵チームのランプを奪う方が効率がいいと思うんだけど……あなたはどういう作戦?」
いきなり奪う方を選択するのか?
「いや……オレはまだ魔法の初心者だし、籠城が無難かなぁって……」
ふん、素人ね……と双子の気の強そうな方が言った。
「籠城っていうのは敵に私たちの居場所が把握されているってことよ。初心者なら、なおさら動くのがベターだと思うわ」
確かにそういう考えもあるけど。
オレが返答に困っていると気の強そうな方は「準備してくる」と言ってスタスタ二階へと上がって行ってしまった。
リー店長は「今はツンツンしてるけどそのうちデレてくれると萌えるんだけどねえ千夜君!」とオレにテストと全く関係ない話を振ってくる。
「ご……ごめんなさい……うちのお姉ちゃんいつもこんな感じで、本当は悪い人じゃないの……」
「いや、オレも素人判断しかできないからしょうがないよ……えっと朱那(しゅな)と白亜(はくあ)だったよね、どっちがどっちなのかな?」
ああ! と双子のおっとりした方がポンっと手を叩いた。
「気の強いさっきのお姉ちゃんが朱那(しゅな)で私が白亜(はくあ)です。見分けがつかなくて不便だよね。何か目印をつけるといいのかな?」
「目印……どうなんだろう。双子を活かして敵を撹乱(かくらん)するなら見分けがつかない方が便利な気もするし」
双子を活かした撹乱作戦……いいかも、と白亜が呟く……でもお姉ちゃんが……と考え始めた。どうやらこの双子、お姉ちゃんの朱那の方が権力が上らしい。
「いいわね。やってやろうじゃないの」
階段から朱那の気の強そうな声がした。
「私たち双子の実力を精霊王に認めさせてやるんだから!」
どうやらオレはこの双子のサポート役を今回はやる羽目になりそうだ。
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