第21話諸刃の……?


 ルファの一撃が地面を破壊する。

 同時に後方へ跳躍したソーニャとジーナは着地に伴い、ルファへ迫る。

 攻撃後の一瞬の硬直、その隙に先んじて、ジーナの剣が届く。

 当たった、と思ったが、瞬きの間にルファの姿は掻き消えた。

 違う。

 あまりの初速で見えなかったが、ルファは後方へ一歩下がったのだ。


「あ?」


 ジーナは戦闘中だと言うのに、間の抜けた声を出してしまっていた。

 あまりに想定していなかった現実を受け入れられていない。

 ルファは流れるように刺突を繰り出す。

 軌道はジーナの剣へ向かっている。

 攻撃の予備動作がゆっくりに見える。

 危険だ、と俺が思った瞬間、ルファはその場で跳躍した。


「ちっ!」


 舌打ちをしたのはソーニャだった。

 彼女はルファがジーナへ攻撃しようとしていた横から、隙をつこうとした。

 だが、それに感づいたルファが回避したのだ。

 しかもソーニャの姿を見ずに。

 それはレヴィアの能力によるものなのか。

 ルファは一人じゃない。

 レヴィアと共に戦っているのだ。

 これは相当な強敵だ。

 一連の流れは幾度も繰り返されている。

 剣戟は最早十数分。

 その間、ルファは一度も傷ついていない。

 対してソーニャとジーナは切り傷だらけだ。

 双方、どちらが優勢か、見れば簡単にわかる。


「はあはあ、くっ、つ、強い!」

「さ、流石は、四天魔、ってところかしら」


 息切れしながらソーニャとジーナが賞賛を送った。

 ルファは薄く笑い、構える。


「貴様らも尋常な強さではない。我と渡り合うとは、魔族の中にも稀有だ。

 不謹慎だとは思うが、高揚を抑えきれんぞ」


 ニッと笑うルファにソーニャとジーナも笑った。

 なるほど、互いに戦闘狂な部分もある、ということか。

 考えてみれば、ソーニャはサドっ子だ。

 酒場での出来事もあるし、つまり喧嘩っ早いし、荒事は嫌いじゃないんだろう。

 戦うこと自体は結構好きなのかもしれない。

 互いに、距離を保つ。

 達人同士の間合いの取り方に似ていた。

 素人目なので、かなり適当な表現だが。

 俺とムラマサちゃんは息をのみ、状況を見守っていた。

 そして場はしばしの硬直。

 くっ、これからどうなるのか、期待と不安と色んな感情が入り混ざって自分の気持ちがわからない。

 結末は、そう遠くはなさそうだ。


 ………………。

 …………。

 ……。


 いや、おい、ちょっと、冷静になれ、俺。

 何が結末は、そう遠くなさそうだ(キリッ だよ。

 そういう小説じゃないから、これ。

 そういう真面目な展開がやりたかったらこんなの書いてないから、ね?

 わかる?

 そういうシリアスな展開いらないわけ。

 人が死ぬこととかないわけ、これ。

 何があっても下半身は露出しないバトル漫画とか、剣で斬っても誰も死なない系のアニメとかそういうことなの。

 つまり、さ。

 お約束。

 茶番よ茶番。

 この戦いで誰か死ぬことはないので安心してね!

 ……え?

 あれ、なんか自分で言ってて違和感が。

 なんだろう、なんだろうね?

 そう思った時、事態は急変する。

 三者が同時に地を蹴ったのだ。

 その数瞬後。

 俺は目を疑った。


「くっ、は……!」

「は、ぐっ……んんっ」


 呻き声を漏らして倒れている。

 その二人はソーニャとジーナだった。

 深い傷はないところをみると、剣の腹か柄辺りで二人を倒したのだろうか。

 ルファは二人を見下ろしていた。

 だが、彼女の顔には浅い切り傷、そして脇腹には何かが擦った跡が見えた。


「ふっ、最後の一撃で己を進化させるとは、やはり人間はあなどれんな。

 もし、次にまみえる機会があれば、結果はわからぬだろう」


 ジーナの剣が遅れて折れた。

 剣を交えた際に破壊していたらしい。

 違和感が広がる。

 いや、これは虫の知らせだ。

 おいおいおい、茶番とか思っていたけどさ。

 これがコメディでギャグで適当な物語だったとしてもさ。

 確実なことがあるじゃん?

 ルファの目的ってさ。

 剣を破壊することなのさ。

 つまり?

 人は死ななくても?

 俺は殺されるんじゃね?


 ………………。


 …………。


 ……いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

 死にたくないいいいいいいいいいいいいいいいい!

 まだ一ヶ月程度しか生きてないのにぃいいいぃぃぃ!

 もっと生きたい、エロいことしたい!

 こ、ここ、殺される!

 殺されてしまううううう!

 パキッて折られちゃううぅ!

 折らないで、摩ってよおおおお!

 それだったら大歓迎なのにいぃ!

 あ、でもそれだと傷つけちゃうか……それはちょっと。

 女の子を傷つけるとかさすがに、ね?


『……だ、大丈夫、オレさんはあたしが、守る、から』


 ムラマサちゃんが健気な励ましをしてくれた。

 ふえええ、嬉しいよおお、でも怖いよぉ!

 最低最悪な人生を終えたと思ったら、今度は剣生が数週間で終わっちゃうとか。

 マジで不幸とかそういう運命的な要素を信じずにはいられないじゃないの。

 これで殺されちゃったら、神様を恨む。

 いや、復讐してやるわ。

 そしてチートを貰って、神様倒して、神殺しの称号を貰って俺が神になるわ。

 お願い、ムラマサちゃん、君が最後の砦だから。

 ほんと、すみません、情けないけど、助けて……。


「オレさんは、こ、ここにいて」

『わ、わかった』


 ムラマサは俺をその場に優しく置いた。

 下には手拭いを敷いてくれたのだ。

 なんて優しい娘なのか。

 ソーニャもそうだけど、仲間が傷つくのは見たくない。

 ぶっちゃけ逃げて欲しいとは思うが……俺も死にたくはない。

 すまない、な、なんとか頑張って、くれ、ムラマサちゃん。

 ムラマサは妖刀を抜き、構えた。

 彼女はまだ幼いが、かなり堂に入っている。

 流水の如く、自然な構えだった。


「貴様……鬼族か。しかも、相当な鍛練と経験を得ていると見える」

「……い、行きます!」

「いつでも来い」


 ルファは余裕のある態度でムラマサを迎え撃とうと構えた。

 ムラマサが地面を走る。

 無駄のない俊敏な動きで、彼女が地面を踏んだ跡が俺には見えなかった。

 だが一瞬遅れ、草木が浮かび上がる。

 瞬歩の名残が植物を伴っている。

 速すぎて、物理法則が追い付いていない。

 俺がそれを認識した時、ムラマサとルファの姿が重なった。

 ギイィン!

 金属音にしては重苦しい打音が響いた。

 それだけの膂力がぶつかったということでもあった。

 受けた。

 ルファは、風の如きムラマサの一撃を見事に受け切っていた。

 だがまだ初撃。

 ムラマサは相手の防御を気にもせず、連撃に入る。

 振り下ろしを真っ向から受け止めたルファに対し、ムラマサは力の流れを縦横無尽に敷く。

 単純な腕力は相手の方が上のようだった。

 つまり、ムラマサはルファと対峙するに当たり、瞬時に力技から技力で戦う方針に切り替えたのだろう。

 たった数度の切り結びで判断したのだ。

 なぜ、俺がわかるかって?

 いや、誰でもわかるよ。

 だってさ。


「ひひひぃ、ひ、ち、力はあたしが劣ってるみたいだねぇ、だったら技で勝負しようじゃないのぉ。

 ひ、ひひひ、血を、血を一杯、滴らせて、地面を赤色にするんだぁ、ひっひひひ」


 いつものモードになってるからね、うん。

 は、はは、ムラマサちゃんってさ、刀を握ったら人格が変わるとかじゃないんだわ。

 彼女は誰かと近づき過ぎると人格が代わっちゃうんだ。

 つまり、敵と戦ってもそうなるんだね。

 難儀な性格だな、いや、むしろ戦いにはその方がいいんだろうか。


「な、何なのだ貴様は!」


 あ、ルファたん動揺してるね。

 そりゃ、誰でもビビるわな。

 あれで動揺しない人間がいたら、もうね、多分ちょっと頭おかしいよ、違った意味で。

 俺は冷静に状況を飲み込んだ。

 ルファの動揺は動きを鈍らせたようで、ムラマサの猛攻に何とか対応するのが限界という感じだった。

 押している。

 これは、勝てるのでは?


「ひゃああひゃあひゃあ! ひっひっひ!

 こっち、こっちから、こっちぃいいぃ!

 こっちから来てええ、やっぱりこっちいぃぃぃ!

 当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ当たれ!

 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!

 死ねえええええええええええぇ! ひひいひひいひひひひぃ!」 


 血走った目を敵に向け、狂気のままに剣を振るう少女。

 相手は真摯に剣を受け、必死に戦っている。

 あれ、なんか、どっちが正義なのかわからないぞ?

 いや、正義は立場で変わるものとかいうけど、それはそれとしてさ。

 お、おかしいな、俺は今、どっちを応援しているんだろうか。

 いや、ムラマサちゃんだろ!


「ひいひひひ! こ、こここ、殺してやりゅううぅぅ!」

「く! わ、我は負けん! 負けるわけにはいかんのだ!」


 お、応援すべきは、ム、ムラマサちゃん、だよね……?

 台詞からして、どっちが味方かって考えてみるとさ……。

 悩んじゃう俺がいるんだ。

 落ち着け、言動に惑わされるな。

 そうだ、ムラマサちゃんは俺のために戦ってくれているだぞ!

 ここで手のひらを返すなんて最低だ!


「くっ! レヴィア、シンクロするぞ!」

『あー、え? マジで? いいの?』

「いいも何も、出し惜しみしている場合ではない! こやつ、尋常ではないほどに強いぞ!」


 おお、やっぱりムラマサちゃんが押しているらしい。

 このまま行けば負けると思ったんだろう。

 ルファはレヴィアと何やらシンクロとやらするらしい。

 ……名前からして同化的な?

 つまり?

 百合ですか。

 ……ふむ。

 うんうんうん、俺はそういうのも好きだよ。

 BLはちょっと、そのごめんなさい……あ、でも男の娘はギリギリ、いけなくもないよ?

 え? 性癖紹介すんなって?

 へえへえすんませんね、えへへ。

 はあ、マジで女の子同士の目くるめく性的描写ってエロいよね。

 白い肌が重なって肌色しか見えない画面とか、はあ、いいわぁ。

 男から見た、女の子同士の絡みって綺麗だよね、うん。

 ほら、やっぱりさ、別の男が視界に入ると微妙な感覚がある時があるのね。

 エッチな動画とかさ、はっきり言って、男優はちょっといらない時あるよね。

 あと、ちょっとうるさいっていうか。

 黙って欲しいって言うか。

 ああ、いいよ、気持ちいいよ、とかいらないから。

 そんな感想いらないから。

 そういうジャンルを作って隔離しておいて、ほんと。

 男優がうるさいシリーズとか作って置いて、需要があるんならさ。

 黙って腰ふろう?

 ん? おっと話が脱線したな。

 そういう語りはいらない?


 あ、あ!

 ねえ! 今、ルファの、あの、衣服がズレた!

 なんか、ほら南国の服装みたいな、水着的な格好なんだよ、ルファは。

 で、動きまくってるじゃん?

 ムラマサちゃんの攻撃が激しいから、動きも激しくなるじゃん?

 となると、さ。

 ズレるじゃん?

 あ、今、胸の部分、衣服がズレたよおおおおお!

 見える。

 見えそう。

 はっきり言おう。

 乳首見えそう。

 見えろ!

 見えて!

 あ、下もズレた!?

 おや?

 でも茂みが見えないぞ。

 ということは……ま、まさか!

 ありがとう! ありがとう!

 そっちも素敵!

 ないのもいいよ、あってもいいよ!

 どっちでも俺は好きだよ!

 はあ、つるっつる……つるっつるか、たまらんな。


「くっ!」


 くっころか!?

 そんな勘違いしそうなほどにエロい。

 しかも、ほのかに汗ばんでいる。

 これはエロい。

 くんずほぐれず、うへへ。


「は、早くしろ!」


 ナニを早くすればいいのですかね?

 あ、シンクロとかいうのか。

 別にどうでもいいわ。

 よくないわ!

 百合! 百合!

 女子同士の絡み!

 清らかなエロさを見せて!


『……ほんとにいいの? 後悔すると思うけど。特に今は』

「何を言っている! 今を置いて、シンクロしない手はない! 早くしてくれ!」

『……わかったわよ』


 早く早く!

 一緒になって、合体して!

 エーロ、エーロ!

 ユーリ、ユーリ!

 次の瞬間、ルファとレヴィアが光を放った。

 獣の如き動きで、ムラマサは異常事態を警戒し、ルファから距離をとった。

 そのまま強烈な光が放たれ、やがて収束した。

 あ。

 なんか合体してる。

 まんまだけど。

 あーあ……想像と違ったな

 なんか、鎧部分がよりゴテゴテして、剣っぽくなってるんだわ。

 格好いい感じではあるけど、エロさは半減してる。

 レヴィアは装飾が多少ある剣だったのだが、シンクロ後は大剣に変化している。

 なるほど合体すると強化されるのか。

 あれ、これムラマサちゃんやばくね?

 マジ、やばくね?


「行くぞ」


 ルファがムラマサちゃんを正視し、腰を落とした。

 ほんの一瞬。

 瞬きを許さない間隔を経て、情景は変わった。

 十数メートル離れていたムラマサが吹き飛んだのだ。


「きゃああ!」


 可愛らしい悲鳴を上げたムラマサは地面に落ち、そのまま動かなくなった。

 何が起こったのか、理解出来なかった。

 だが、ルファがムラマサの後方に移動していたことでわかった。

 彼女は一瞬のうちに移動し、ムラマサを攻撃したのだ。

 俺はあまりの出来事に怖気を抱いた。

 圧倒的な力量の差がある。

 ソーニャはかなりの手練れだったはずだ。

 ムラマサちゃんは、ルファとの戦いでそれ以上に強かったことがわかる。

 それなのに、その二人をこうも簡単に倒したのだ。

 あ、姉御も忘れていないけどね、うん。


「中々の強さだったな」

『……ウチのおかげじゃん』

「あ、ああ、助かった」

『ってか、さっさとアレ、折って帰ろ。早く』

「わかっている。あまり急かすな。油断は命取りだ。

 そこの娘はまだ戦えるかもしれん」

『だから、そっちはいいから! さっさとアレ壊してって言ってんの!』

「な、何をそんなに焦っているのだ」

『いいから!』


 ルファとレヴィが話している中、俺は自分の未来を思った。

 俺は殺される。

 折られてしまう。

 そう、俺は怖かったのだ。

 しかし、地面に伏しているソーニャとムラマサを見て、俺は動揺が引いていくのを感じる。

 別に恐れることはない。

 悔やむ必要もないじゃないか。

 だって、人間だった時とは違って、今は仲間がいるのだ。

 片方はわがままで暴力的で自己中心的だけど、涙もろくて寂しがり屋で案外正義感が強い女の子。

 片方は人が苦手でコミュ障で二重人格で時々殺人狂になるけど、恥ずかしがり屋で人と仲良くなりたくて心優しい女の子。

 そんな二人と少しでも旅ができたのだ。

 そして、俺は確かにその一員だった。


「……では、気は進まないが行くか」

『……早くして』


 ルファの足音が俺に近づく。

 彼女は俺を憐れんでいるように思えた。

 怖い。

 でも、剣生は悪くはなかった。

 楽しかったと思う。

 だったら、もういいじゃないか。

 俺は結構、満足している。

 もっと一緒に居たかったけど。

 ……もっとエロいことしたかったな。


「ん?」


 はああああ、もっとエロいことしたかったなああああああ!

 ソーニャとかさ、寝る時、寝返り打つんだけどさ。

 もう、ほんと露出が激しい服装だから色んなところが見えるんだわ。

 ああ、胸が最高だったね。でかいから、適度にでかいから。

 両手でわしゃわしゃして、揉みたかった。

 顔を挟んでくれたら最高だった。

 あああ、もおおお、思いだしちゃったよおおお。


「え? え?」


 ムラマサちゃんはさ、太腿が最高なんだよ。

 小柄で発展途上な身体なのに、胸は歳の割に結構あってさ。

 裾から覗く白い太腿がマジで最高。

 絶妙な肉付きなのさ。

 もう頬すりすりしたい。

 太腿に顔を挟まれてうにうにして欲しい。

 一晩中挟んでくれたら百万払う、マジで。


「え? え? え、え? ええ? え? あ? へ? ふあ?」


 あれ、目の前にいるお姉さん。

 ルファちゃんじゃないの。

 いいね、君可愛いねぇ!

 君もね、いいんだよ、とってもいいんだよ!

 褐色系の女の子とかミステリアスか活発的な魅力があるよね!

 いいよぉ、すっごくいいよぉ……。

 ああ、その肌をいろんなもので穢したい。

 うへへ。


「ふえ!?」

『ルファ! さ、さっさとそいつ壊しなって!』


 ああ、いいなああ、ルファたんもいいなああ。

 ソーニャと同様に露出が激しい服装。

 俺は下から舐めるように見上げる。

 きゅっと締まった足首、骨ばりすぎていない膝に、肉付きのいい太腿。

 なんなの?

 エロの塊なの?

 エロの権化なの?

 実はそれで誘惑してるんでしょ? そうに違いない!

 まったく真面目な顔して、ドスケベだな、おい!


「え? や、やめ、やめ」


 腰回りも引き締まって、ちょっと筋肉質なのが健康的でとてもよろしい。

 ソーニャはすべてが均等でバランスが取れているタイプ。

 ムラマサちゃんは小柄でやや幼い未成熟タイプ。

 ルファちゃんは全身肉付きがいいけど、引き締まっているスポーツ少女タイプ。

 最高だわ。

 最高だわ!!

 ルファたん、愛好会を俺が作ろうと思う、きっと世界は平和になるだろう。

 そう、つまりルファたん可愛い。

 胸も大きいしさ、ソーニャには負けるけど、ぶっちゃけ動く度に揺れてるわけだ。

 実際目の前で揺れる乳房を見ることってあんまりないじゃん?

 え? ある? 死ね!

 その幸運を有難がらず、え? それくらい普通じゃね? とか思ってる奴いたら手を上げて!

 ……おい、そこの、いいか?

 噛・み・し・め・ろ!

 その幸せをな!

 あ、そういうのない人はさ、俺と一緒に妄想したらいいよ、うん。

 想像ってタノシイヨ。

 自分の思い通りになるからね!

 だから、みんなこっちにおいでよ!

 あはは、うふふ。

 じゃなくて、とにかく目の前で見たら迫力に驚くよ、マジで。

 揺れるんだもん。

 揺れるわけないじゃんとか言ってる人はにわか、ほんと、にわか。

 揺れるから。本当に揺れるから。

 たゆんってなるから!

 ぶるんってなるから!

 無意識に見ちゃうから!

 無視とか絶対無理な程の迫力だから!


「や、ど、どこを見て」


 顔も可愛い。

 凛々しいけど可愛い。

 凛々可愛い。

 略して。リリカワ!

 ああ、なんてことだ。

 新しい言葉を生み出してしまった。

 やはりエロは偉大なのだな……。

 キリッとしているけど、顔を赤くしている今なんて最高だ。

 はあ、マジで困らせたい。

 目の前で卑猥な言葉を並べて立てて、やめて、とか顔真っ赤にして言われたい。

 それで恥ずかしさのあまり暴力を働こうとするけど、力が入らずに転んで、なんかよくわからなくなって涙目にしてやりたい。

 困った顔している女の子マジ可愛い。

 虐めたい。

 虐めて、やめてとか言わせて、無理やりエッチな言葉とか言わせたい。

 ぐへへ、言わないと、こうだぞぉ。


「み、見るな! みみみ、み、み、見るんじゃ、な、ない!」


 ルファは俺の視線から逃れるように背を向けた。

 だが、それが間違いだったのだ。

 なぜなら彼女の最も魅力的な部分が見えてしまったからだ。

 お尻だ。

 臀部だ。

 下品に言えば、ケツだ。

 すごいボリュームだ。

 もう、完全に元気なお子さん生んでくれそうなお尻。

 安産型である!

 むんずと掴んでにぎにぎしたい。

 何なの、何なのこのエロさ。

 男を魅了したいの?

 口説かれたいの?

 女性フェロモン醸し出してどうしたいの?

 襲われたいの?

 本当はエッチなことされたいんでしょ!?

 俺がこんな風に考えることわかってるんでしょ!?

 そうだよね、そうだよね。

 女の子ってそうだよね!

 言葉では嫌がっても本心では望んでたりするんだよね!

  ※主人公の完全な主観です。


 いいんだよ、素直になりなよ!

 誰だってね、そういう一面あるから。

 だから解放しよ?

 俺は全部受け止めるよ?

 で? どうなの?

 エロいの? エロくないの?

 エロいよね?

 本当は頭の中、エッチなことでいっぱいなんだよね?

 ねえ?

 ねえ、そうだよね!?

 そうなんだよね!?

 ねええええ!?

 ねええええええええええええええええええええええぇぇ!?


「ひ、ひゃあ、や、やめれ、やめて」

『ちょ、ちょっと! ルファ、落ち着きなって』

『はああ、ルファたんマジ可愛い。エロい。その尻がエロい。

 揉みしだきたい。一日中揉み揉みしたい。それくらい魅力的。

 最高、ルファ尻最高!』


 あ、声に出ちゃった。まあいい、このまま行け!


「や、やめ! わ、我の身体に変な名称をつけるな!

 ら、らら、りゃ! やらぁ! え、え、ええええ、えちいぃぃ!!

 えええ、え、えちぃの、やらあああああああああああああああああ!」


 ルファは顔どころか全身を赤くして一目散に逃げて行った。

 そんな仕草もグッジョブ。

 ふむ、ああいうのもあるのか。

 ふぅ、なんて卑怯な娘なんだ。

 思わず賢者モードになってしまった。

 ん?

 ……逃げて行った?

 あれ? エロい尻がいなくなっちゃった……。

 うそだろ、あんなに最高な尻が、尻が!

 ルファは一瞬の内に視界から消えたのだ。

 俺は寂寞感と安堵感を同時に抱き思った。

 ……あ、なるほど。

 俺の妄想を、レヴィアの能力で聞いちゃってたのね。

 シンクロって単純に合体するだけじゃなくて、心を読む能力も持ってしまうということなのか。

 つまり、これは、命拾いした、ということか?


『ふ、策略の勝利、だな』


 とりあえず、意図的にしたということで自分の中で整理しておいた。

 三人は地面に倒れているままだった。

 俺は思った。

 気を失っている女の子もまたエロいのだな、と

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る