巡る光のエアロギア
ねめしす
プロローグ
突然の出会いってヤツは、いつだって驚きに満ちている。
ハーマンは取り落としたタバコを拾い上げながら、目の前に起立する少女の無表情を呆然と見つめた。
「本日付で特別対策課に配属されましたウェイン・ワーグナーです。
よろしくお願いいたします」
深々とお辞儀。
肩まで伸ばした赤銅色の髪が音もなく滑り落ちる。
特対の制服。
襟元のピンバッヂ。
紛れもなく
いや、そんなモンはどうでもいい。
「なあ、お前、」合わせた目に、しかし動じた気配はない。
一瞬かける言葉に迷い、「……俺のこと、知ってるか?」
すると表情が、ゆるり、変転。
怪訝から自粛、再び無表情へと。
「……いえ、申し訳ありませんが」
僅かに無念を滲ませて、
「以前どこかでお会いしましたでしょうか?」
それを聞いて、
――表にこそ出さなかったが、正直なところ落胆よりも安堵が勝っていた。
「いや、大したことじゃない。忘れてくれ。
ハーマン・ディートリッヒだ。特対三班の班長をやってる。よろしく頼む」
向けられた眼差しは物問いたげだったが、口でははいと答える。
その生真面目さがそっくりだと言ったら、果たしてアイツは笑っただろうか。
誰かさんによく似た面立ち。
同じ石から削り出したような
忘れようがない
偶然ってヤツからはこれまでにも色々な親戚を紹介されてきたが、
死んだダチの娘が直属の部下になるってのは初めての経験だった。
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