スプラッシュ・シスターズ
クーニー
ウォーミング・アップ
春やね。校門までの、随分長い坂道を歩いているのはソゥバッドだけど、桜並木がずーっと続いていて、HUZEIっつうの? そういうのが感じられるのはソゥグッド。桜舞い散る中で忘れ……これ以上はジャスラック対策をする必要があるから、ぼかしておく。お金払えばいいんでしょ! お金払えば! 言いたいことも言えないこんな世の中は毒だらけ! POIZON(あえてスペルを間違えるんだぜ)。
なんだかんだ高校生だぜ、おれも。なんか中学とはちょっと違う感じ。すれ違う女の子たちもちょっと大人な感じ。あっちに歩いてんのは先輩かな? 発達してんね、主におっぱいが。マジで半端ねー。それだけでやる気出ちゃう。いや、性犯罪者じゃないぜ? アイム・ノット・ア・セクシャル・クリミナル・パーソン。合ってるかな? まあ合ってるだろう。高校受験のおかげでギンギンに英文法が染みついてやがるぜ。
昨日、入学式が終わって、新しい教室に入って、おれの中学からこの
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
「YO! YO! ミュージック・スタート! (BPM130くらい)アンタは神になったつもり~? ところがどっこいホントに神です! バンバンババン! バババン! バン! とんでもねえや!
ハルヒちゃんにいきなりおれ流フリースタイルラップをキメたら、どうなるかなんて簡単に想像がつくさ。無視されて終わり。以上。クラスの面々を見て、ああーんハルヒちゃんいないのかあ、と思ったものだが、ところがどっこい、事実は小説よりも奇なり。一人目を引くガールがおれの隣におった。金髪でツーサイドアップのヘアースタイル。真っ白な肌に、ほっそりとした四肢。誰もが振り向く外国人美少女が一介の超絶平凡高校にいたわけだ! 正直、嵐の予感がしたぜ。彼女を争って数多もの男子メイツが血肉を貪りあう戦いの火蓋が、初日にして切って落とされようとしていたわけだ! 自己紹介のあの時、そいつはちょっと気怠そうに立ち上がって言った!
「……カインドラ・アリジン。出身はカリフォルニア。父の都合で日本に来た」
「うおーい! 思いっきり日本語かよ!」
おれは思わず席を立った。周りの生徒たちはビクッとして俺の方を振り向く。
「設定! ちゃんと設定は守ろうよ! なんで日本語のイントネーション完璧な訳!? おかしくない!? 皆も知りたいよな!」
おれはソウルメイツ(クラスメート)の面々を見回し、両手を広げて言った。ちなみにこの時、おれはまだ自己紹介をしてないから、誰、あいつ? みたいな冷たい視線を女子からは受けたけど、さっきLINEを交換した男子メイツからはそこそこの支持を受けて、おれの次にそーだ! そーだ! と立ち上がって応援してくれた。ノリがいいぜ。結構楽しいクラスになりそうだ。
「……」
そいつはかなり不機嫌そうに俺の方を見た。ううーむ、怒った顔も悪くない。てか、ホント美人だし、瞳の色とかブルーだし、人形みたいじゃん?
「ヘイヘイ。そこんとこどうなのさ、……なんだっけ? 有吉さんだっけ?」
一度だけ名前を言われても覚えられないし、ましてや外国の名前だったので、適当に名付けて呼ぶと、彼女は大きなため息をついて、そのまま黙って座った。
「ええー? 無視なの? もしかしておこなん? アーユーアングリー? アーハーン?」
「……死ね」
彼女は確かにこう言った。おれにだけ聞こえる声量で。エナジードリンクのグッチョグッチョでギッタギタの成分表示を見るような一瞥を受け、おれは凍り付いてしまい、その場で固まった。……やべえ、ホントに怖え。なんか声色が全然違った。ふざけての「死ね」じゃなくてマジトーンの「死ね」。心は酷く傷ついて、すごすごとおれも座ったのだった……。唐突な回想終わり。
まあさ、気を取り直して高校生二日目を楽しむべ、と思って意気揚々と歩いているけど、今日から早速部活動見学とかあるし、楽しいことは続きそう。アッちゃん(勝手にあだ名付けた)も時間をかけてアイスブレークしてって、おれのこと好きになってもらえればいいじゃん? 女にモテる部活ってなんだか知ってる? そう、バスケ。マジでモテっから。中学とは違って、高校はバスケ部指定のウインドブレーカーを着て街中を歩いただけで女の子に逆ナンされまくり、というのを地元のウシジマ先輩から聞いた。おれってばラヴ・アンド・ピースを信条としてるとこあるし、女の子とは全員漏れなく、おれのこと好きになってもらいたいし、おれも好きになりたいんだよね。やってやろうじゃん?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます